今、製造業はバブルともいえる状況になっています。
例えばLMガイド。LMガイドとは主に半導体製造装置や工作機械の位置決めに使用する直動ガイドのことですが、普通は納期1ヶ月の標準日のLMガイドが、現在では納期が7ヶ月もかかります。
またボールネジも同様に品不足。さらにPLC、インバーター、タッチパネル、減速機といった伝導系・制御系の機器が品不足であり、特に確保が難しいのがロボット用の精密減速機です。
こうした伝導系・制御系の機器を扱う某商社では、昨年10月から受注が売上を超え、その後はずっとこうした状況です。 この商社では通常3~4ケ月先の注文をメーカーに入れていますが、現在では納期確保のために6~7ヶ月先までの注文をメーカーに入れています。
こうしたことの背景にあるのがスマホや自動車の電子化に伴う、IT需要です。例えば、電子部品を基板に並べて回路を製造する実装機と言われる装置をつくる某メーカーでは、新工場を稼働させて月産200台だった実装機を400台の生産に引き上げました。
2000年に崩壊したITバブルの時にも、同様の現象が見られました。ただしこの時は国内における半導体製造装置の特需が主な原因でした。現在のバブルは国内よりも中国・台湾など新興国におけるITがらみの設備投資特需が主な原因です。
ですから2000年の時のITバブルよりも、より規模が大きなバブル(?)になっている可能性が高いといえます。 この様に「今の製造業はバブルだ」という話をすると、「いや、うちはそれほど恩恵を受けていない」と言われる方がおられます。
しかし現在の今の状況で、恩恵を受けていない業界関係者は恐らくいないでしょう。
結局のところ、製造業は市況ビジネスです。 一般消費者向けビジネス以上に、「景気が良い時に何をして」「景気が悪くなったら何をするのか」ということを、きっちりと考えておく必要のあるビジネスです。
そうした中で、ある社長から興味深いお話を聞かせていただきました。この社長はメガバンク出身で広く人脈をお持ちの方なのですが、今、頭の良いゼネコンは、あえて新規開拓に力を入れているそうです。
ゼネコンといえば建設業界ですから、製造業以上に人手不足とオリンピック特需に沸いているはずの業界です。 ですから今、新規開拓で新たな仕事を受注しても、その仕事を請けることはできないそうです。それでもあえて新規開拓に力を入れて、今だからこそできる販路拡大に取組んでいるそうです。当然といえば当然の話ですが、周りがが忙しい忙しい、と言っている時に、同じ様に忙しい忙しいと、目の前の仕事しかやっていない、ということでは、不況になると同じ様に大きく業績を落とすことになってしまいます。
そうした中で興味深い取組みが2つあります。 1つは受託型の制御盤メーカーである三笠製作所(従業員25名)が主催する、制御盤世界カンファレンス2017という企画です。 このカンファレンスは10月19日に横浜で、10月24日に名古屋で開催されます。 ↓↓↓制御盤世界カンファレンス2017 http://www.seigyobann.com/conference/ 今や日本で製造された設備は世界中に出荷されます。その時に電気系統はその国の電気規格に合わせて出荷することが、ますます必要になっています。
本カンファレンスでは世界中から制御盤メーカーのキーマンを日本にあつめ、そうした最新情報を日本の設備設計者にお伝えするという企画ですが、主催は前述の通り従業員25名の中小企業です。 あえて自社も多忙であろうこの時期に、こうした企画に取組むことが同社の意識の高さを感じます。
2つ目は九州・大分県にある製缶板金加工業であるクニナリ様の取組みです。同社はこの3年間で従業員45名から70名と大きく躍進を遂げておられます。 しかも、製缶板金加工業というのは、普通は近場から仕事を取ろうとします。
その理由は製缶板金ワークが重量とスペースを要するため、遠隔地になると運賃が出ないためです。
ですから、普通の製缶板金加工業は半径100km~200kmくらいがメイン商圏であるといえます。 ところがクニナリ様の場合は、九州の小倉から特急で3時間、さらに車で20分以上という立地にありながら、なんと700kmも離れた本州・近畿エリアから仕事を獲得してきています。 同社では売上の3割を九州以外の遠隔地から獲得しているのです。
部品加工業というのは、今までは典型的な地域密着型ビジネスでした。しかし、現在高収益かつ伸びている部品加工業の共通点は「遠くから仕事を取れている会社」です。 いわば、「近くのお客」よりも「遠くのお客」。 「近くのお客」だと、どうしても振り回されます。じゃあ、この仕事もあの仕事も、と、結局のところ付加価値の低い価格競争の仕事ばかりが舞い込んでくることになります。
その点「遠くのお客」であれば、おのずと選ばれた仕事しかきません。その選ばれた仕事が自社の強みであれば、その仕事が増えれば増えるほど、その会社は高収益化していきます。 この様に書くと、「いや、その会社は特殊技術があるから遠くから仕事が取れるんだ」と思われるかもしれません。 それは誤解です。遠隔地から仕事を取るのに“凄い技術(=スペック訴求)”は必要ありません。
それよりもクニナリ様の様に“価値訴求”で自社に合った仕事を全国から集めてくるべきでしょう。
ファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会のこの9月度定例会(東京・名古屋・大阪で開催)では、今回、クニナリ 石田社長様にお越しいただき、特別講演をいただくことになりました。 本研究会では1社1回までにつき、無料お試し参加を受け付けておりますので、ご関心がある方は下記URLをご覧ください。
↓↓↓本講座の詳細と、無料お試しご参加のお申込みはこちら
http://funaisoken.ne.jp/mt/factory-business2/100567.html#_ga=2.96119452.1029224390.1504275242-125209114.1503927706
遠隔地から仕事が取れる、ということは自社の「強み」がきちんとわかっていて、その「強み」が磨きこまれている、ということです。
今、伸びている中小企業というのは、地域密着で果たすべき「短距離戦略」と、遠隔地でも通用する「中・長距離戦略」が両立できている会社です。 どちらかで地歩を固めた上で、この両方への取組みが必要だと私は考えています。
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