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片山和也の生産財マーケティングの視点【ミニバブル?動きだした生産財市況】

2013年がスタートして実質一週間ほどですが、生産財市況には若
干良い兆しが見え始めた様です。
例えば鉄鋼メーカーの下請で大物旋盤加工を専門に行う某社は、この
1月前半にリピートで、長尺タイプ大型旋盤の購入を決め発注しまし
た。仕事が本格的に増える前に準備をしておくという算段です。
また鋼材加工機を生産する某社も、この数週間で急激に引き合い・受
注が決まってきたとのこと。材料を扱う鋼材商も動きが出てきたとい
います。自民党政権による一連の経済対策が、マインド的な意味で効
き始めたのかもしれません。

日本工作機械工業会も中国での受注が回復基調にあるとして、今年の
工作機械受注高の目標を1兆3000億円としました。バブル期のピ
ークが1兆4000億円、過去最高の受注が2007年の1兆600
0億円ですから、この目標が達成できれば生産財市況は好調と言うこ
とができるでしょう。
余談ですが、コマツの建機には全てGPSがついており(盗難防止の
ため)、全世界の建機の稼動状況を全てモニタリングできるそうです。
昨年8~10月は、中国における建機の稼動は著しく低下していたそ
うですが、11月半ばくらいから稼動が戻ってきたといいます。

また生産財市況を牽引する2大マーケットは自動車とITです。自動
車はメーカーによって市況が全く異なる様です。ダイハツ・日野自動
車・ホンダ・トヨタ系1次部品メーカーは好調ですが、中国比率の高
い日産は在庫調整の影響で不調、いまだ設備過剰のトヨタ本体も設備
投資は最低限となっています。ITについては新聞紙上ではスマート
ホン関連の電子部品が好調といいますが、生産財市況を盛り上げるほ
どのペースにはまだ至っていません。

私が主にコンサルティングを行っている機械工具商社・部品加工業・
生産財メーカーについて言えば、従来の自社領域の1つ横の領域、あ
るいは1段上の領域まで手がけられている会社は業績が比較的好調で
す。

例えば「機械工具商社」の横の業界は「機械商社(工作機械専門商
社)」です。従来は不況になると機械商社が不調で、ベースを持つ工
具商社は堅調といわれましたが今は逆です。地域密着でベース依存の
工具商社はベースが激減した現在、そのまま業績を落としています。
それに対して商圏が広く営業力の高い機械商社は、以外と業績を落と
していません。先日も九州の私の関係先のユーザーに、大阪から機械
商社が売り込みにきました。
また機械工具商社の上の業界は「部品加工業(=ジョブ・ショッ
プ)」です。機械工具商社は従来の右から左のナショナルブランド商
品だけでなく、ジョブ・ショップ的な加工も手がけるべきです。

さらに「部品加工業」の上の業態は「設計」です。すなわちVA・V
E提案はもちろん、設計・図面作成込みの仕事を受けるサービスが求
められます。今、生産手段は世界中に溢れています。ところがきちん
とした設計ができる技術者は、常に売り手市場です。事実、設計込み
で仕事が受けられる加工業者は多忙を極めています。
「生産財メーカー」であれば“製品”を売るのではなく“概念”や
“思想”を売ることが求められます。例えば、ある熱処理エンジニア
リング会社の場合、「均熱」「時短」という概念を提唱して設備を売
っています。ワークの全体の温度を均一にかつ短い時間で所定の条件
に至らせるということです。加工機で言えば、ナガセ・インテグレッ
クスの「火花レス研削」なども“思想”を売っていることになります。

いずれにせよ、政府の経済対策のおかげで“ミニバブル”的に景気が
良くなることが見込まれそうです。しかし景気が良い・悪いといった
外部環境に依存する経営は危険です。先ほど述べた通り、自社の事業
の1つ横・あるいは1つ上の事業・業態を手がけると同時に、商圏を
拡大していく取り組みが今後も必要だと考えます。

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