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AIゴールドラッシュ

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前回のコラムでもお伝えしましたが、我々は今、目の前には大きな氷山の様な「大不況リスク」に直面していますが、その先には50年に1度の大きなチャンスが我々を待っています。

それが「AIゴールドラッシュ」です。

かつてのソ連から西側に亡命した経済学者ゴンドラチェフの仮説、“ゴンドラチェフの波”によると、歴史的に世界は50~60年ごとに大きなイノベーションにより、パラダイムシフトを強いられます。

実際、歴史を振り返ると、

 

第一の波:1800年代 蒸気機関・紡績(英国)

第二の波:1850年代 鉄鋼・鉄道・電信(米国)

第三の波:1900年代 電気・自動車・化学・石油(米国)

第四の波:1950年代 エレクトロニクス・原子力航空工学・コンピュータ(米国・日本)

 

と、50年ごとに大きなパラダイムシフトが起きています。

そしてそのパラダイムシフトに乗った人たちは巨万の富を築いています。

では、第五の波はいつ来るのでしょうか?上記の年表でいくと2000年代、ということになりますが、実は今は世界中が20年にわたる“長期停滞(Secular Stagnation)”の中にいます。

この“長期停滞”は19世紀末にスウェーデンの経済学者ヴィクセルが提唱した概念だそうですが、2013年11月のIMFの会議の席上、ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授が問題提起したことで再び注目を集めるキーワードとなったそうです。

実際、2016 年4月のIMFの世界経済見通しの副題は、“Too slow for too long”(余りにも長期にわたる余りにも緩慢な成長)と題されています。

「失われた20年」という言葉がありますが、この長期停滞の20年を加味すると、第五の波は2020年代ということになります。

 

第一の波:1800年代 蒸気機関・紡績(英国)

第二の波:1850年代 鉄鋼・鉄道・電信(米国)

第三の波:1900年代 電気・自動車・化学・石油(米国)

第四の波:1950年代 エレクトロニクス・原子力航空工学・コンピュータ(米国・日本)

~20年にわたる長期停滞(Secular Stagnation)~

第五の波:2020年代 AI・IoT・ナノテクノロジー・ロボティクス・生命工学(米国・日本)

 

第五の波の中でも特に中心的存在となるのがAIです。

つまりこれから、18世紀の産業革命の蒸気機関と同様に、AIが社会を変える中心的な位置づけになる、ということです。

私はこれを「AIゴールドラッシュ」と呼んでいます。

なぜゴールドラッシュなのか?

前回のコラムでも述べましたが、18世紀にアメリカ西海岸で起こったゴールドラッシュで最も儲けたのは金の採掘者ではありません。

金の採掘者に物資を供給した人たち。具体的にはジーンズを売ったリーバイスや、スープの缶詰を売ったキャンベルといった人たちです。

今回の「AIゴールドラッシュ」も同じです。

AIそのものはソフトウェアに過ぎません。従って一握りの天才的人物によって開発・拡販が可能であり、限界費用ゼロでいくらでもコピーすることができます。

そうするとかつてのマイクロソフト、あるいは現在のグーグルの様にAIそのものは1強の寡占状態、あるいは全世界共有のコモディティになるかもしれません。

ところが、AIを実現するためには実際にはハードウェアが必要です。

例えば2030年にAIの市場規模は100兆円を超える、と言われています。この中で最も大きなマーケットとされるのが運輸・物流で約30兆円に上ります。

この運輸・物流のAI化の中身とは、トラックの自動運転あるいは高度に自動化された物流センター、ということになります。

さらに卸・小売りが約15兆円。例えば最近、スーパーにいくとセルフレジが非常に目立つ様になりました。レンタルビデオショップでも最近はセルフレジになっています。これも一種のAI化です。

またFA(ファクトリー・オートメーション)が約12兆円。製造現場のAI化とは言い換えればロボット化・自動化ということになります。

実際、こうしたAIゴールドラッシュを予兆するかの様な事象が身の回りで起きています。例えば、

 

・物流機器最大手のダイフクは2017年3月期 過去最高の営業利益を計上。米国アマゾン社への輸出が絶好調。

・ダイフク以外でも、AGVを手掛けるセットメーカーはどこも好調。理由は物流倉庫の自動化・効率化ニーズにある。

・有機EL製造装置最大手のキャノントッキは年商の2倍もの受注を抱えており、キャノングループをあげて増産に取り組む。

・ロボット用精密減速機メーカーであるハーモニックドライブは、生産能力の2倍を超える受注を抱えている。

・その結果、産業用ロボットの納期が昨年の2倍以上に伸びている。

・また日本電産グループもロボット用精密減速機のマーケットに本格参入してきており、関連の仕事が増えている。

・今まではほぼ売れなかった協業ロボットが、今年に入ってから実際に売れる様になった。ただし日本メーカーではなく、デンマークのユニバーサルロボットが売れている。

・米国の太陽光発電市場は2016年に過去最高の伸びを記録し、2015年の2倍近くの発電設備が接続された。

・その結果、これまでで初めて他のどのエネルギー源よりも多くの発電容量が接続された。今後も5年間で現在の3倍近くまで成長を続ける見通し。

・2017年3月の半導体の世界売上高は308億8000万米ドルだった。対前月比では1.6%増、対前年同月比では18.1%増と大きく伸びた。

 

この様に、AIの周辺産業ともいえる、AIの手足となるハードウェアを担う会社は皆忙しくなっています。

 

例えば5月18日(木曜日)に東京会場で、また6月2日(金曜日)の名古屋会場で開催予定の「金属加工業 脱自動車セミナー」でも、こうした話をお伝えしたいと思っています。

↓↓↓脱自動車セミナーの詳細はこちらから!

https://www.funaisoken.co.jp/seminar/018367.html

 

 

正確には脱自動車というよりも、脱内燃機関自動車ということです。

AIによる自動運転あるいは部分的自動運転や、EVあるいはPHVが前提の次世代自動車は、明らかに現在と異なる技術が必要とされます。

例えばアイシンAWも、この2017年3月期決算は売上1兆4311億円、営業利益は昨年対比21.7%アップの1229億円と、過去最高益を記録しました。

同社はオートマチックトランスミッションという、エンジンよりも単価の高い精密なユニットをつくっています。

先期の業績が絶好調の理由は、トヨタグループ以外からの受注が全体の6割を占めたことにあります。

ドイツのフォルクスワーゲンをはじめ、世界中の自動車メーカーから同社の生産能力を超える受注が舞い込んでいるそうです。

これは見方を変えると怖いことです。

オートマチックトランスミッションといえば、内燃機関特有の部品です。EVになると必要なくなる部品の代表格です。

つまり、フォルクスワーゲンなど、目ざとい世界の自動車メーカーは、将来無くなる可能性の高い、オートマチックトランスミッションの開発をやめ、外からの購入に切り替えた、との見方もできるわけです。

もちろん、内燃機関がゼロになることは当面ないでしょう。

しかし内燃機関マーケットだけに依存する、というのは明らかに経営的にリスクであり、誰がどう考えても避けるべきだと考えるのは、私だけではないでしょう。

それよりもこれから、AIゴールドラッシュにより、国内の自動車産業と同等、あるいはそれを上回る可能性のある新たな産業が生まれようとしています。そちらに目を向けることが、これから70年に1度のチャンスをものにすることにつながるのではないでしょうか。

「金属加工業 脱自動車セミナー」でお伝えしたいことは、そういうことです。

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