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ロボットバブル

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先日の新聞に、ファナックが630億円投資して茨城県筑西市に産業用ロボットの新工場を建設、来年夏に稼働予定と掲載されていました。

これでファナックのロボット生産能力は現在の1.5倍、月産9,000台となるそうです。さらに新工場の生産能力を引き上げ、最終的には月産11,000台まで生産を拡大させる計画だといいます。

実際、ファナックのロボットは通常納期2~3ヶ月の製品が、今は半年以上と非常に長い納期となっています。

ファナックだけでなく産業用ロボット全体が好調で、日本ロボット工業会によれば2017年第一四半期のロボット出荷台数は昨年対比126.7%と、過去最高となっています。

こうした中、ロボット以上に品不足となっているのがロボットのコアパーツの一つ、精密減速機です。

ロボット用の精密減速機は秒単位(=1/3600度)の位置決めとノン・バックラッシュが求められる、極めて高い技術を求められる製品です。日本国内でもハーモニックドライブとナブテスコの2強がシェアの大半を握り、最近は日本電産グループがこの分野に参入してきています。

例えば某精密減速機メーカーの場合、従来は月産20,000個の生産能力だったラインを、設備投資して2倍の月産40,000個まで生産できる様にしました。

ところが今は月70,000個以上の受注が入ってきており、現場が対応しきれず取引先に人員派遣を要請するくらいに超多忙となっています。

この精密減速機は普通の減速機とは全く異なる特殊な機構をしており、従来は特許で守られていました。しかし現在は特許が切れており、日本電産グループが、全く同じ機構の精密減速機を開発して市場に参入してきています。

日本電産グループの三大精神の一つは「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」だそうです。物事、成功するかしないかの分かれ目は精神力の強さです。

日本電産グループはさらに今後も伸びるでしょう。

このロボットバブルの背景には、中国の人件費高騰が挙げられます。

例えば電子楽器のトップメーカーで売上の8割を海外で稼ぐローランドは、中国工場で生産していた電子ドラムやシンセサイザーを、昨年秋から順次マレーシアの新工場に移管しています。

理由は中国の人件費高騰にあります。

現在の中国では「人件費は毎年上がるがロボットは1度買えば保証は10年だ」ということで、ロボットの爆買いともいえる状況が起きています。

さらに、これから明らかに伸びる分野として「協働ロボット」が挙げられます。

前述のファナック、また安川電機・川崎重工業・不二越・デンソーといったロボットメーカーは「産業用ロボット」のメーカーです。

これに対して「協働ロボット」の世界No1メーカーはデンマークのユニバーサルロボットという会社です。

「産業用ロボット」と「協働ロボット」の最大の違いは、そのコンセプトにあります。

産業用ロボットは“人ができない・やりたくない仕事”をこなすのに対して、協働ロボットは“人がやっている仕事”を置き換えることが目的です。

従ってユニバーサルロボットの協働ロボットは3kg可搬と5kg可搬がメイン製品となっています。最大でも10kg可搬です。

これに対して産業用ロボットの売れ筋は30kg可搬から100kg可搬。

なぜユニバーサルロボットは3kg可搬や5kg可搬なのかというと、人が行っている仕事を置き換えることが目的だからです。

人が行っている仕事でハンドリング対象となるワークの重さはせいぜい1~2kgといったところ。ロボットハンドの重量を考えても3~5kg可搬で十分、ということになります。

この様に、そもそもの開発コンセプトが全く異なる為、従来の産業用ロボットメーカーが協働ロボットを開発しても、スペックオーバーで結果的に高いロボットとなってしまいます。

また産業用ロボットの場合、どんなに早くても投資回収期間は2~3年ですが、ユニバーサルロボットの協働ロボットは投資回収期間わずか半年を目標としています。

言い換えれば産業用ロボットメーカーにとって、協働ロボットは単価が安く“儲からない分野”となってしまうわけです。

ラジコンヘリがドローンに駆逐された様に、あるいはパソコンがスマートフォンに置き換わった様に、またマシニングセンタがロボドリル(タッピングセンタ)に置き換わりつつある様に、あらゆる業界で「イノベーションのジレンマ」とも言える現象が起きつつあります。

今の時代、経営者は誰よりもアンテナを高くしておく必要があるということなのです。

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