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働き方改革の本質とは(2)

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零細企業から大企業まで、あらゆる日本の会社にとって「働き方改革」が無視できない世の中になってきました。

以前にもこのコラムで述べましたが、働き方改革の本質は、労働時間を減らして利益を減らす、ということではありません。

「労働時間を減らして利益を増やす」という、生産性アップへのイノベーションを起こすことが現在の経営者の仕事です。

例えば、先日ご訪問させていただいた三重県四日市市の株式会社伊藤製作所の伊藤社長は、次の様な興味深い話をされていました。

50年前の大卒初任給が3万円。今の大卒の初任給が21万円。50年間で人件費は7倍も増えていることがわかります。

ところが、やはり50年前の60トンプレスの価格はだいたい300万円、現在は700万円くらい。設備の価格はせいぜい2倍くらいにしかなっていない、というのです。

伊藤製作所はプレス加工業の会社です。プレス加工業の経営の一般論は「いかに設備稼働率を上げるか」に尽きます。

しかし伊藤社長はそうは考えませんでした。

何しろ、「設備」よりも「人」の方が圧倒的にコストはかかるのです。もっというと、これからもさらに「人」のコストは上がり続けていくのです。

そこで伊藤社長は常識と逆のうち手をうちました。

作業者は18名しかいないのに、プレス加工機を97台まで増やしました。そしてうち65台のプレス加工機は金型をつけっぱなしです。

その結果、同社は特急対応・単納期対応ができる、トラブルも少ない、ということで多くの顧客の支持を得て、わずか18名の作業者で月商2億8000万円もの高い生産性を誇る部品加工業となりました。

これは同社の前身が金型製造業であった、ということも理由かもしれません。金型製造業にとっては、設備は止まっているのが半ば当たり前です。言い換えると、業界と真逆の発想を持ち込めたことが同社の成功の要因と考えることもできます。

 

また兵庫県姫路市の株式会社宝角合金製作所も、独自の哲学で生産性を高めているモデル部品加工業です。

同社の場合は、この15年間で売上高が2倍、経常利益率は数%そこそこだったのが、ここ近年ではずっと10%を超える優良企業です。

また1人あたり販売管理費は、15年前の半分近い水準まで下がっています。

同社が徹底的に取り組んだのは新規開拓です。

部品加工業の従来の経営の鉄則は、決まった特定顧客の仕事に専念する、ということでした。

当然のことながら、不特定多数の仕事をいろいろとこなすよりも、決まった特定顧客の慣れた仕事をずっとしていた方が、一般論でいうと生産性は上がります。

しかしこの一般論も、その特定の親会社から余りある十分な仕事が獲得できていれば、という前提条件がつきます。

2000年のITバブル崩壊で、多くの大企業ピラミッドも崩れました。つまり特定の親会社からの仕事だけでは安定経営ができなくなった、ということです。

そしてこの流れは、リーマン・ショック、さらには3.11による大手企業の生産海外移転がそれを決定的なものにしました。

宝角合金製作所も、特定の親会社だけの仕事していた時は、特殊物・一品物など、言われた仕事は何でも受けるしかない状況でした。

その結果、ベテランの職人や汎用機が中心の仕事ばかりで、生産性が上がらず売り上げも一定水準以上上がらない状態でした。

そこで同社はマーケティングを取り入れ、新規開拓に積極的に取り組み、繰り返し品や数が見込める品物を選別して受注する様にしました。

また作業も標準化を進め、設備も汎用機からNCへと切り替えを進め、近年では複合機を導入するなど、文字通り「働き方改革」を進めました。

その成果が近年の高収益につながっています。

 

そして来月、4月14日に予定されている“先端「町工場」視察セミナー2017年春in関西”では、この株式会社宝角合金製作所様も訪問予定となっております。

ぜひ普段は絶対に見ることのできないモデル企業の現場を見ていただき、そしてモデル企業の経営者のお話はもちろん、全国から集まった志の高い同業者と交流していただき、ぜひ自社のイノベーションにつなげていただきたいと思います。

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