視察4社目:ルーサラン・ホーム(LUTHERAN HOME)
(1)同社の概要
- 同社サービスディレクターのリンダ・スミス女史より講演いただきました。
- 同ホームは123年の歴史があり、84エーカー(約33600㎡)の広大な敷地を持っている。介護レベルによってエリアを分けてビレッジを構成している。700名のスタッフがいる。
(2)同社の理念と方針
- 同ホームが大切にしていることは、その人に合った適切なケアを行うこと。託児所もホーム内にあり、生まれたばかりの子供から108歳のお年寄りまでが施設内にいる。
- 同ホームの平均年齢は87歳。我が家にいる様な環境を提供することを大事にしている。スタッフは誇りを持ってケアに取組んでいる。またアルツハイマー病への啓蒙に取組んでいる。
- “羊飼いの群れ託児”と名づけられた、老人と幼児の交流プログラムを持っている。水曜日に就学前の子供たちを施設で預かっている。子供も入居者も双方が相互的な恩恵を受けている。
(3)同社の施設の概要について
- 短期滞在用の施設と、長期滞在用の施設を持つ。介護の必要度に応じて7つのレベルのサービスを提供している。痴呆症の老人向けの施設もある。
- 短期滞在の場合は1日560ドルの費用。長期滞在の場合は1日420ドルの費用。生涯入居する為には、6000万円以上の資産が求められる。
- 施設内にはパイプオルガンを常備した礼拝堂、託児所、レストランやゲスト用のカフェテラスがある。リゾート施設の様な清潔で綺麗な環境を提供している。
- 短期滞在用の個室は78室、長期滞在用の部屋は396室を480室に増床中。
視察5社目:アライアンスリハブ(Alliance Rehab)
- アライアンスリハブはルーサラン・ホームにリハビリ・サービスの提供を行っている、アウトソーシング会社である。アメリカでも珍しいビジネスモデルとして注目されている。
- 同社は1999年に創業。医療コンサルティング会社であるシンブリアのグループ企業である。
- 2000名のセラピスト(専門家)を抱えており、200の施設に対して専門サービス(リハビリ・フィットネス・ウェルネス)を提供している。
- 顧客はルーサラン・ホームの様なハイエンドな施設。また理念を大切にするNPOが対象となる。
- アメリカでも介護における人手不足と人材の確保が課題になっている。その点、同社の場合は離職率が四半期ごとに2%以下と低い。
- 同社はリハビリテーションとウェウネスを併せ持ったプログラムにより、同業他社に対して差別化を図っている。またサービスに必要な、あらゆる専門家を揃えている点も差別化ポイントである。
- 同社のトレーニングを受けると、老人の転倒率が38%も減少するというデータがある。
視察6社目:ナムコ レベル257(Namco LEVEL257)
(1)レベル257をつくるに至った背景
- バンダイ・ナムコは全米1013ヶ所でアミューズメント施設を運営している。うち687ヶ所はウォルマートの中にある。
- 現状の課題は粗利率が10%と低いこと。メーカー並みの水準である粗利率20~30%を実現するために3つの戦略プロジェクトを推進している。それは 1)クルーズライン向け 2)米国海軍向け 3)レベル257 である。前述1)2)は非課税であり、また独自のカードシステムを構築することで差別化を図る。
- 前述3)のレベル257は飲食とアミューズメントを融合させた新たなコンセプトである。
(2)レベル257のコンセプトと戦略
- アメリカのマーケットにおいて、映画の利用回数はかつての5回/年から4回以下/年と減少している。しかし外食については200回/年を超えており、1980年代半ばから増加している。
- また昨今のトレンドとして“利便性とコスト”を追求したものか、“高品質と経験”を追及したものか、マーケットのニーズがどちらかに偏る傾向がある。中途半端なものはダメ。
- ゲームにおいて“利便性とコスト”がスマホで、従来のゲームセンターは“中途半端”になってしまっている。レベル257は“高品質と経験”を追及したい。
- そこで高品質な料理とアミューズメントを融合させた施設がレベル257である。レベル257のネーミングは、大ヒットゲームであるパックマンの最終画面が256であることからくる。パックマンの、さらに高次元なアミューズメントというコンセプトである。
- アミューズメント施設の中心はボーリング。ボーリングも現在はブティックボーリングといって、ただスコアを競うのではなく、食事をしながらコミュニケーションを図るというコンセプトのボーリングが注目されている。他には卓球や従来のゲームセンターも設置している。
- また料理は吉田社長自ら選定したレストランの指導を受け、品質の高い料理とサービスを提供することを目標にしている。
(3)レベル257の収益性と投資採算
- 客単価は25$と想定より低めになっている。平均滞在時間は2~3時間。
- シアーズの元倉庫を転用しており、2年間家賃は無料という破格の契約で入居している。
- 同施設はシアーズを各店舗としたショッピングセンターの中にあり、シアーズとしても同施設による集客を見込んでいる。
- 従業員は社員・パート・バイトで120名を雇用している。
- 同じ施設の投資回収は3.5年を見込む。
視察7社目:アブト エレクトロニクス(Abt Electronics&Appliances)
(1)同社の概要
- 創業1936年、年商500億円、従業員1200人のシカゴNo1の家電販売店であり、37エーカー(148000㎡)の広大な敷地にある、1店舗のみで営業展開している。
- 地域の消費者から圧倒的な支持を受けており、近くに進出してきた大手全米家電チェーンも撤退に追いやられた。
- 従業員の満足度も高く、シカゴで一番働きたい企業ランキングで2位にランクインしている。
(2)同社のビジネスモデル
- 同社の売りは「顧客満足度の高いサービス」であり、1)高い商品知識を持ったスタッフ 2)アフターサービス 3)修理・メンテナンス 4)100マイル以内送料無料 5)最低価格保証サービス 6)年中無休のカスタマーサービスを謳っている。
- 店内で売られている商品は、大型のグリルやテレビ・シアターなど工事・メンテナンスを伴う手離れが悪いものが多く見受けられた。近隣の方に聞くと、手離れの良い家電は低価格を売りにしているシアーズを使うケースが多いという。
- 同社の店舗内あるいはバックヤードは常に改装を行っており、お客を飽きさせない工夫を常に行っている。また商品の取扱いも随時増やしており、最近ではベッドを扱い始めた。
(3)同社の優位性:高い内製化率
- 店舗のバックヤードに倉庫・物流センターがある。同社の倉庫には約1ヶ月分の在庫がある。
- バックヤード内には加工工場があり、店内で使用する什器を内製している。それにより頻繁な改装もローコストにこなせる体質である。最近ではクローゼットなど商品も一部製作を始めた。
- 自家発電設備を備えており、昼間はそれを利用している。夜間は電力が安いので電力会社から購入、自家発電で余った電気は売却している。
- 商品の不具合や様々な理由により、返品率が7%ほどある。返品された商品は同社内で修理などの対応が行われる。
- リサイクルセンターもバックヤードに持っている。4~5名のスタッフがおり、家電に使用されていた梱包材のリサイクルを行っている。
(4)インターネット販売について
- 同店の2階はコールセンターになっており、インターネット販売も手がけている。現在、全売上に占めるインターネット販売の比率は22%。日本の同業であるヨドバシカメラが10%であるので、小売業としては低くない数字である。
- 月間3万コールの注文が入る。200km圏内は自前の配送体制となっている。
(5)同社の理念・働き甲斐のある職場づくり
- 同社の理念は「The answer is always “YES” to any reasonable request」であり、お客様からの要望には全て応えていくことを旨としている。
- この理念は社員用の食堂など、事務所内のいたるところに掲示されている。
- 同社の店舗がいつも拡張を繰り返していること、随時新しい商品ラインナップが増えていることや内製率を高めている背景には、こうした理念があると思われる。
- オフィスには歴代の社員や優秀社員が掲示され、社員を大事にする社風を伺うことができる。
- また同店の従業員は26カ国からの出身者であり、彼らの出身国の国旗がバックヤードには掲示されている。いわゆるダイバーシティーを意識したマネジメントを行っていると思われる。