視察1社目:ハーレーダビッドソン(HARLEY-DAVIDSON)
(1)ハーレーダビッドソン社の概要
- ミルウォーキーに本社を置き、売上高58億9000ドル(約6000億円)、従業員数約5800名。
- ダビッドソン兄弟とハーレー氏が1903年に創業。第一次世界大戦の軍事用バイクの需要にのり、会社が大きく成長した。その後は自動車が中心の社会となったこともありオートバイクメーカーが激減、1953年にはアメリカでハーレー1社だけになってしまった。
- さらに1960年代から70年代にかけて日本製のバイクがアメリカの大型市場も席巻。1980年代になると排気量751cc以上の大型車市場でも、シェア75%から25%まで激減することになる。
(2)同社の復活劇
- 1960年代後半にハーレーは業績不振から、大手機械メーカーのAMF社に買収される。その後、1981年に創業者子孫を含む13名の経営幹部が同社を買い戻し、そこから同社の復活が始まる。
- ライバルであるホンダの工場を見学、また経営幹部自らがユーザーを訪ねることでニーズを掴む活動を進めた。
- その中で従来の「バイクを売る」というドメインを改め、「バイクに乗る楽しみを提供する」というライフスタイルを売るビジネスに舵を切る。
- クラブHOG(ハーレー・オーナーズ・グループ)の設立など、コミュニティマーケティングを推進することで、熱狂的なファン層を増やしている。
(3)同社の企業ミュージアム
- 同社が設立してからの歴史、同社が生産してきた歴代のオートバイを展示するミュージアムを本社近くに保有している。ミュージアムの他、レストラン、ギフトショップなどが併設されている。
- 同社が最初に生産したオートバイはもちろん、映画イージーライダーやキャプテンアメリカなど、映画の中で使用された同社のオートバイも展示されている。
- 同社のミュージアムをみると、戦前は郵便配達から新聞配達など、業務用のオートバイも多数手がけていたことがわかる。現在は趣味の分野が主要なマーケットであり、歴史とともに同社のマーケットが変化していった様子がよくわかる。
(4)同社創業者ひ孫 ダビッドソン氏による講演
- 同社創業者のひ孫、ダビッドソン氏は1984年に入社。現在はマーケティング部門のバイスプレジデントを務める。6歳からバイクを運転しており、子供のころから同社に入ることが夢だった。
- 妹は服飾のデザイン部門の責任者を務めている。創業家の関係者はこの2名のみが同社で働く。
- 父親は1963年に入社、2012年に退職。デザイン部門の責任者であった。
- 何よりフィロソフィーを大事にしている。ただし時代の変遷と同時にフィロソフィーの一部は変えてきた。バイクは単なる移動手段から、走る楽しみを知るための趣味の用途に位置づけが変わった。
- アメリカで唯一バイクをつくっていることに誇りを持っている。ブランドも大事であるし、ブランドの周りにあるものも大事。例えばハーレーと一目でわかる外観・音・乗車時のフィーリングなど。
- 長い歴史の中で、やってはいけないことも学んだ。1人の顧客と長い付き合いをし、人生の中で長く利益につながるロイヤリティを大事にしたい。
視察2社目:ノースウェスタン大学(Northwestern University)
(1)同大学の概要
- ノースウェスタン大学は、1851年にジョン・エヴァン氏 他8人のシカゴの弁護士やビジネスマンによって創設された名門私立大学である。
- 従業員数は約7100人、学生数は約15000人うち学部生は約8000人所属している。
- 世界大学ランキングでは世界19位。特にビジネススクール、ケロッグ経営大学院は世界でもトップクラスの評価を得ているMBAコースである。
- 同ビジネススクールにはマーケティングで世界的に著名なコトラー教授が在籍している。
(2)同大学アジア言語文化学部 日本語学科について
- アジア言語文化学部 助教授パトリック・ヌーナン氏より最初のご挨拶。同学部はアジア研究の一環として設立、言語から文化への展開を図っている。
- その中で日本の文化・企業について知ってもらうために日本語学科を設立した。同学科では今年も教授を2名雇用、日本からの援助・寄付により運営されている。
(3)同大学における就職・就職活動支援について
- キャリアセンター責任者マーク・プレズネル氏より講演いただいた。
- スタンフォード大学の学生は即戦力を志向している。87%の学生は実務経験があり、67%の学生は夏にインターンシップを経験、56%の学生が研究の経験があり、91%の学生はリーダーシップを見につける活動に参加している。
- 卒業生の18%がビジネス・サービス、金融サービス、投資銀行に就職する。また16%がマーケティング・メディア関係、15%がコンサルティング業界に就職する。
- 同大学が考える「良い会社」とは、単なるブランド企業ではなく“挑戦的”な会社かどうかということである。
- アメリカの雇用のマーケットの50%が、何らかのつながりを重視している。誰とつながっているか、が大事。ただ応募しても受かるものではない。
- 就職にあたり育ち・家庭の影響は大きい。大学としてはそこに広がり・機会を与えることはできる。
- 近年においては、大手企業だけでなくベンチャー企業(スタートアップ企業)に関心を持つ学生も多い。大学としてもベンチャー企業との結びつきの場をつくっている。
- 学生のうち大手企業志向が35%、ベンチャー企業を志向する学生が35%、残る3割がその中間ではないか?また現在の学生が求めることは、すぐに活躍できること。
- ただし最近は学生の安定化志向が強まった様にも思える。
(3)同大学日本語学科の紹介
- 同大学アジア言語文化学科日本語学科教授 平憲子氏より講演。
- 外国語で人気があるのはスペイン語で、700名の学生がいる。日本語学科は50~70名であるが、最近は中国語に押されている。中国語は300名の学生。
- 日本語を学びたい理由として、日本文化(アニメ、漫画、伝統芸能など)に興味があること、また日本や日系企業への就職を希望することが挙げられる。
視察3社目:レタス・エンターテイン・ユー(Shaw’s Crab House)
(1)同社の概要
- 創業1971年、年商360億円、従業員5000人のシカゴNo1のレストランチェーン。90店舗を展開している。
- ミッションはビゲスト(最大)ではなく、ベスト(最高)を。
- 多ブランド展開を行っており、日本のダイヤモンドダイニングなどの先がけ。星野リゾートの星野氏も同社経営者に相談をするなどで知られる。
- 今回は同社が経営するShaw’s Crab Houseを視察した。同店は年商24億円と極めて生産性が高い。東京の同じクラスのレストランで年商7~12億円。
(2)同社の人材の定着率
- アメリカの外食業は離職率が極めて高く、全米平均で95%。その中で同社の離職率は43%と低く、かつ同店に限れば離職率は18%と極めて低い。
- 同社の離職率が高い理由は、上司が部下を気にかける文化が根付いているから。
- また、独立したいシェフに対しては独立支援制度もあり、そうした施策が逆に定着率を上げている。
- こうした施策の結果、同社社員の90%が満足している。
(3)同社の人材教育
- 同社は様々なブランドを多店舗展開しており、レストラングループというよりもマネジメントグループである。
- 同社には49%/51%のフィロソフィーがある。49%は人が教えられることであるが、59%は人柄や性格で、教えても育てられないところである。
- パーフェクトを目指すのではなく、まずエクセレントを目指す。