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受託開発型の製造業・メーカーが営業利益率10%超を実現する方法を解説

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「3T経営」と「3K経営」

最近、日本電産の永守重信会長が興味深いことを言われていました。それは「3T経営」と「3K経営」です。3Tとは低成長・低収益・低株価の意味で、営業利益率がせいぜい5%の会社。日本の平均的な会社のことです。それに対して同氏が目指す3K経営とは高成長・高収益・高株価のことであり、営業利益率が10%、あるいは15%の会社です。さらに永守会長は「営業利益率10%は5%の倍じゃない」と言います。率の差は2乗で効くので経営の力は4倍の差だ、と言うのです。

この様に、営業利益率10%を超えるのは大変なことです。自社ブランド商品を持っている大手メーカーであっても簡単なことではないのです。

 

下請型の町工場でも営業利益率10%超の事例が!

ところが最近、船井総研ファクトリービジネスグループが主宰する、ファクトリービジネス研究会「部品加工業経営部会」においては、受託型製造業(いわゆる下請型製造業)であるにも関わらず、営業利益率が10%を超える事例が多数でてきました。中には15%近い会員企業もあります。では、こうした中小企業版「3K企業」の共通点とは、どの様なことなのでしょうか?

 

中小企業版「3K企業」5つのポイント

その共通点・ポイントは下記の5つです。

(1)自社の長所を掴み、それを伸ばすことができている

(2)客数が多く、特定業界に依存していない

(3)商売の主導権が取れている

(4)平均年齢が若い(35歳未満)

(5)トップが勉強好きであり、情報収集に熱心である

ということです。製造業でありながら「3K企業」であるポイントは、必ずしも技術・技能の優位性ではありません。ただしマーケティング面あるいは生産プロセスにおいて何らかの「イノベーション」を生み出していることは事実です。ただしそれは従来の設備投資みたいな、大きな投資を伴うものではありません。成功要因は昔の「資本」から現在は「知恵」へと変わってきているのです。では、こうした各企業はどの様なことに取組んでいるのでしょうか?

 

利益を生み出す絶対条件!「利益原則」とは?

まず、営業利益率は以下の式で計算します。

営業利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

売上高を下げることはできないため、営業利益率を高めるには利益を生み出す経営法をとる必要があります。
船井流経営法の中に「利益原則」と言われるものがあります。船井総研ファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会の中の、営業利益率10%超の「高収益」受託型製造業の皆様は、みなこの「利益原則」に基づいた経営をされています。
「利益原則」とは利益を生み出す絶対条件のことで、次の式で示されます。

利益 = 一番の数 × 扱い品の数 × 主導権 × 一体性

利益原則のポイントは、主導権がないと一番や扱い品がいくらあっても利益になりません。
また一体性がないと一番がいくつあっても、また、扱い品が多くとも、さらに主導権があっても、利益はでてきません。

 

まずはどうすれば一体化できるのか?

従って、高収益企業を目指す為にまず必要なことは「一体性」ということになります。すなわち組織の一体化です。では、どうすれば組織は一体化するのでしょうか?

私の経験でいえば、社員100名未満の会社の場合、1名でもいいので経営トップの同調者がいれば組織は変わります。つまり経営トップと幹部社員との徹底したコミュニケーション、話し合いが必要です。また前回のレポートでお伝えした5つのポイントの中の1つ、“社員の平均年齢が若い(35歳未満)”というのも重要なポイントです。組織の平均年齢が若いと、おのずと組織環境は成長志向型・チャレンジ型になるからです。

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組織の盛衰とイノベーション

また同様に5つのポイントの中の“トップが勉強好きであり、情報収集に熱心である”ことも重要です。文明の盛衰を研究したイギリスの歴史家、アーノルド・トインビーは著書「歴史の研究」の中で、文明の衰退は少数の支配者の創造的能力の喪失と、それによる大衆の離反・社会的統一喪失が要因であると述べています。

企業にも同じことが言えます。経営トップは常にイノベーションを生み出す存在である必要があります。

実際、こうした高収益企業の経営トップの経営者は皆勉強好きで、地方企業であっても熱心に東京・大阪のセミナーに参加し、そこで得た知識を利用されたりしています。

組織を一体化させるためには、経営トップが主導するイノベーションも必要なのです。

 

「高収益」なビジネスモデルは「主導権」の確保から!

営業利益率10%を超える様な「高収益」なビジネスモデルを実現するには、商売において「主導権」が取れていなければなりません。「主導権」を取るために必要なことは、とにかく“客数”を増やすことです。

“客数”が増えることで、不当に利益率の低い案件について値上げを要請する、あるいは案件そのものを辞退する、といった営業施策が可能になります。いわゆる“忙しいけど儲からない”理由の大半は、「値付け」そのものにあるといって過言ではありません。

実際、船井総研ファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会の中の、営業利益率10%超の「高収益」受託型製造業の皆様は、例外なく“客数”が多いことが共通点です。

 

“客数”を増やすための3つの要件

受託型(下請型)製造業が“客数”を増やす上での要件としては次の3つを挙げることができます。

要件1:こちらから売り込まないPULL型ビジネスモデルであること

要件2:開発部門・設計部門など川上部門と付き合うこと

要件3:生産現場が混乱しない自社が得意な仕事を受けること

 

要件1と2を満たす為には、エンドユーザーの開発部門・設計部門をターゲットとしたソリューションサイト(=問題解決型の技術情報サイト)を立ち上げることが効果的です。さらに受託型ビジネスの様にリピート性が高く、信用・信頼が求められるビジネス形態の場合は、バーチャルなインターネット上でのコミュニケーションだけでなく、リアルな展示会でのコミュニケーションも必要です。

 

BtoBにおける展示会の目的が変わった!

また展示会は今と昔で位置づけが大きく変わりました。今や展示会の目的は「名刺を集める」ことではありません。いかに「商談を行うか」が展示会の目的です。その為にはバイヤーに対しての事前の情報収集が極めて重要となります。今の時代は、購買プロセスの6割近くが面談を行う前に決まっている、と言われています。

従ってバイヤーに対して自社の情報発信をあらかじめ行っておき、展示会には具体的な商談を持ってきてもらうという流れを事前につくっておく必要があります。

そういう意味で、BtoBの新規開拓においてはインターネットとリアルな展示会を合わせた利用が必須と言えるでしょう。

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仕事は選んで受けることが大切!

さらに受託型(下請型)製造業が、営業利益率10%を超える様な「高収益」を実現する為には“仕事を選んで取る”ことも不可欠です。

多くの受託型(下請型)製造業が、親会社から言われたままに仕事を受け、本来は自社が苦手な仕事であるにもかかわらず受託してしまうことで、生産現場を混乱させ収益性を落としているのです。

 

もちろん、割に合わない仕事も受けるから、儲かる仕事を受けることができる、という側面もあります。しかし実際には、どの仕事がどれくらい儲かっていて、どの仕事が実は割に合わない仕事なのか、ということを把握していないまま、惰性で仕事を受けてしまっているケースが実際には多々見られるのです。

言い換えれば何が自社の「強み」なのかを、しっかりと押さえることが「高収益」なビジネスモデルに必須のことなのです。

 

自社の「強み」を見つける「図面分析」とは?

そこで船井総研のファクトリービジネスグループでは、その会社の「強み」を見つけるため、コンサルティングを行う際には必ず「図面分析」を行います。「図面分析」とは、100枚~300枚の図面を「売価」「原価」「利益率」「形状」「精度」「材質」「使用用途」「その他」に分類の上、どの様な仕事が自社にとって競争力があり採算性が高いのかを明確にします。

例えばこの「図面分析」の結果、自社の強みは5軸マシニングだと思っていたのに、実際には丸物の旋盤加工+研削加工であった、といったことも起りえます。

 

「売り手軸」ではなく、「顧客軸」で語ろう!

また多くの受託型(下請型)製造業が、自社の強みを「顧客軸」ではなく、「売り手軸」で語ります。例えば自社の強みは“微細加工”である、“複合加工”である、“5軸加工”である、といった機能面を全面に出した表現は「売り手軸」での表現です。

そうではなく、例えば“特注ノズル”である、“特注カッター”である、“スピンドル部品”である、といった製品面を全面に出した表現を利用するのがポイントです。

この様にして、自社の「一番商品」が何なのか、「品揃え商品」が何なのかをきちんと規定することが大切なのです。

 

町工場で営業利益率20%も夢では無い

過去4回に渡って、下請型製造業が営業利益率10%超を実現するポイントについてお伝えしてきました。本コラムのタイトルでは“営業利益率10%超”としていますが、実際には営業利益率15%、あるいは20%といった事例もあります。「町工場は儲からない」というのは過去のイメージで、実際には収益性の高い町工場がファクトリービジネス研究会にも数多くいらっしゃいます。

しかもそれら高収益企業の大多数が、2009年のリーマン・ショックで売上が半減したことをきっかけに、自社の体質改善に取組んだ成果です。

 

リーマン・ショックでもピンチはチャンス!

例えば関東エリアの某プレス企業(従業員20名)の場合、大手家電メーカーのルーチンな仕事に依存しながら、細々と利益を出していました。ところがリーマン・ショックでその仕事の大半が無くなり、やむをえず手間のかかる「開発案件」を手がける様になりました。「開発案件」とは、顧客からの「こういう形状をプレス加工で行えますか?」というニーズへの対応のことです。手間がかかる割に仕事になるかどうかは未知数な案件と言って良いでしょう。

ところがその結果、同社の技術レベルは格段に上がり独自技術と言えるレベルにまで高まりました。客数も格段に増え、不採算な仕事は値上げをする・あるいは断るといった主導権を持つことができる様になりました。

現在、この某プレス企業の営業利益率は約20%です。まさにピンチがチャンスになった、と言える事例です。

 

現在は小が大に勝つ時代!

さらに興味深いことは、製造業の世界においても今や企業規模が優位に働く時代では無くなった、ということです。今年2015年の中小企業白書によれば、小規模企業(従業員20人以下)の中で経常利益率が上位25%の企業と、大企業の中で経常利益率が上位25%の企業を比較すると、2010年以降は小規模企業の製造業の平均経常利益率が15.1%なのに対し、大企業の製造業の平均経常利益率は13.2%です。何と小規模企業の収益性が、大企業のそれを抜いたのです。

現在は企業間格差が取りざたされる時代ではありますが、同時にハードよりもソフトの時代になりました。やり様によっては小が大に勝つ時代になったのです。

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