大手マシンメーカーも驚く、機械の性能を極限まで引き出す町工場
町工場は多くの場合、大手マシンメーカーが市販している設備を導入してモノづくりを行っています。従って大半の町工場は根本的に差別化ができません。なぜならお金さえ出せば競合他社も購入することができる設備でモノづくりを行っているからです。その結果、多くの町工場が価格競争に陥り苦しい環境に置かれています。
ところがわずか14名の町工場でありながら、大手マシンメーカーの想定を上回る設備の性能を引き出し、驚異的なモノづくりを行っている会社があります。それが埼玉県入間市に本社工場のある株式会社入曽精密です。同社は100ミクロン角の世界最小の金属製サイコロをつくり、世界を驚かせました。100ミクロンといえば、ほぼ髪の毛の厚さと同じくらいです。
さらに3Dデータをもとに、アルミの塊からバラの花を原寸かつ同じ形状で削り出すという神業の様な技術を確立し、この技術を「MC造形システム」と命名しました。
アリよりも小さなロボットを実現する微細加工技術の確立へ
この「MC造形システム」は、2005年の日経ものづくり大賞を受賞しました。当該賞は国内外あわせて10件の事業所やシステムが受賞しましたが、そこにはトヨタ自動車、TDK、日産自動車、キャノンなどの超一流企業が名を連ねています。「MC造形システム」はMEMSと言われるアリよりも小さなロボットをつくる技術など、医療分野や半導体分野での活用が期待されているのですが、いかに入曽精密が社会から期待されているかがよくわかります。
また同社の斉藤社長は「従業員を14人より多くしたいと思わない」と考えられています。現在の従業員数が教育を行うには最適な人数だという思いからです。斉藤社長は教育方針として、誰でも絶対に良いところがある、どんな人間でも5年間向き合えば、必ずその長所が伸び、いずれは短所も長所になる、と考えられています。まさに「長所伸展」の考え方です。その結果離職率は低く、ここ10年で会社を退職された従業員はほとんどいません。
微細加工という分野で驚異的なモノづくりを行い、また「長所伸展」の考え方で少人数の組織ならではの人づくりを行う同社は、まさに日本が世界に誇りたい製造業の1社であるといえるでしょう。
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