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世界に誇りたい日本の製造業【第5回:市場消滅の危機から見事復活した、日本一あきらめない町工場】

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仕事の大半が海外移転、売上1/60に激減の大ピンチに直面!

1989年にベルリンの壁が崩壊して、日本の製造業は一変しました。東西冷戦が終結した結果、中国やベトナムなど、旧共産圏の安い労働力を持つ国への生産移転が一気に進んだのです。

1981年創業で八王子市に本社工場を置く、株式会社アトム精密様もその甚大な影響をうけた1社です。同社の創業事業はカーオーディオの受託生産であり、CDの普及とともに売上も右肩上がりで伸びていきました。

ところが90年代に入ると仕事がどんどん海外移転され売上も激減。ピークで200億円あった売上が何と3億円近くにまで減少しました。まさに市場消滅の大ピンチでした。当時流行していた携帯電話の受託生産にも手を出しましたが低採算であり、同社は存亡の危機に立たされました。

そうしたどん底の時期に二代目社長となったのが、現在の一瀬社長です。一瀬社長はカーオーディオ同様に将来の先細りが予想される携帯電話事業からの撤退を決断。その代わり今までの量産技術で培われた省力化設備事業への本格参入を決断しました。

わかりやすく言えば、今まで「家電」をつくっていた会社が、「家電をつくるための設備」をつくる会社に業態転換したわけです。

 

製造業サポート企業に業態転換!営業利益率10%超の高収益企業に!

おりしも近年の円安環境の中、多くの大手企業が国内で売れるものは国内生産にシフトしています。例えば最近では大手家電メーカーから、掃除機を組み立てる装置を受注しました。アトム精密が提案したこの装置のおかげで、この大手家電メーカーは中国での人海戦術での生産から、日本国内での省力化設備による生産に切り替えることができました。まさに“製造業サポート企業”に業態転換したと言えます。現在は家電分野はもちろん、液晶や電子部品などの最先端分野、食品分野も手がけています。

アトム精密のモットーは「NOと言わないものづくり」です。例えば顧客からの要望があれば、同社は従業員40名であるにもかかわらず、さらに60人ものエンジニアを臨時にかき集めて短期間に大量の仕事をこなすこともいといません。こうした同社の姿勢は高く評価され、顧客からも圧倒的な指示を受けています。現在の売上は約10億円でピークの1/20ですが、営業利益率は10%超と高く、利益水準では量産を手がけていた時と遜色の無い水準に近づいています。

まさに同社は60年に一度の大きな産業構造の変化の波を果敢に乗り越え、見事に時代に合った業態転換を遂げた、世界に誇りたい日本の製造業と言えるでしょう。

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