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2024年5月の時流とその対策(3): トヨタ自動車だけが空前の利益を上げている本当の理由

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なぜトヨタ自動車だけが空前の利益を上げられているのか?

大手上場企業が円安を背景に好調な決算を進める一方、中小企業の業績はまさに“まだら”模様であるといえます。例えばトヨタ自動車が営業利益5兆円という空前の利益をだす一方、同じくトヨタグループの開発関連の仕事をしているティア2、ティア3クラスの中小企業の中には、前年対比で3割以上も仕事が激減しているケースもあります。

製造業の中心ともいえる自動車産業というのは、主に次の3種類の仕事があります。

1) 車載部品など既に流れている量産品をつくる仕事
2)金型や試作など、開発に伴う仕事
3)上記1)を生産するために必要な設備をつくる仕事

つまり上記でいくと、1)は車種や仕向け地によってバラつきはあるもののおおむね堅調、2)については今年苦戦している会社が多い(?)、3)についてはやはり車種や仕向け地によってバラバラ、と、いったところでしょうか。

前述の通り、トヨタ自動車は2023年3月期決算で営業利益5兆円という空前の利益をあげています。
その要因は大きく、
(1)円安
(2)独自製品であるハイブリッド車のヒット
(3)トヨタ生産方式
にあるといえます。

トヨタ生産方式については専門書も多く、また同生産方式の専門家を語る人も多く、狭義のものと広義のものとありますが、その本質は「コスト競争力」にあります。
オイルショックの前後、米国の自動車は4000ccを超える様な大型車が中心でした。
大型車は単価も高く、儲けやすい車です。このクラスの車だと600~800万円はするでしょう。
これに対して、日本ではこんな高排気量の車は売れません。例えばカローラクラスだと1500cc前後で価格も150万円くらいです。

ここで、単価800万円のアメリカ車と、単価150万円の日本車と、同じ作り方をしていて利益がでる、ということはありえません。

トヨタ生産方式の特徴である、
・1個流し・・・できるだけ仕掛かり在庫をもたない
・シングル段取り・・・同じラインで違う製品を流す
・カンバン方式(PULL型生産)・・・あらゆる在庫をもたない
・カイゼン活動・・・お金をかけずにラインをつくる(例:コンベアを傾斜させて動力レスにする)
といった「手段」は、前述の「目的」である「コスト競争力」を実現するものなのです。

トヨタ生産方式の本質は、その目的である「コスト優位」を実現するところにあります。
ところが、特にコンサルタントの人たちの中には前述の「手段」と「目的」を取り違えて、

・とにかく在庫を削減して運転資金を減らしましょう
・シングル段取りを導入して設備の稼働率を上げましょう
・設備を移設してムダな動きがなくなるレイアウトにしましょう

といったアドバイスをされる方もいまだに多い様ですが、何が自社の競争力の源泉なのか、といったことを考えて「自社の強み(=自社の競争優位)づくり」を考えていく必要があります。

例えば部品加工業のモデル企業として有名な会社として、三重県四日市市に伊藤製作所というプレス会社があります。同社では現場作業者が18名しかいない時に、プレス加工機を97台まで増やしたといいます。
そのうち65台のプレス機は金型がつけっぱなしです。
その結果、同社は特急対応・短納期対応ができる、さらにトラブルも少ないことが評価され、当時わずか18名の作業者しかいないにも関わらず、月商で2億8000万円もの高い生産性を誇る優良企業です。

MRPといわれる、数万点にもおよぶ部品の組付けが必要な完成車メーカーと異なり、一般の部品加工業の成功のセオリーは、

・社員1人あたりの付加価値をいかに増やすか

にあり、言い換えれば「多台持ち」あるいは「人時生産性」という概念が必要になってきます。

話を戻すとトヨタ自動車が立派な点は、「小型車を安くつくる」ということを目的に独自の生産方式を長年にわたり深め続け、もはや同業他社がどうやっても真似のできない領域までいきついた、という点にあります。

言い換えれば「ビジョン」です。
よく「トヨタばかり儲けて」と、言う人もいますが、トヨタは大企業だから儲かっているのではなく、自社のビジョンが明確だから儲かっているわけです。
ここでいう自社のビジョンとは、
・何を自社の競争優位にするのか?
・どういう価値・あるいは世界観を顧客に提供するのか?
ということで、トヨタの場合は「トヨタ生産方式」であり「ハイブリッド車」なわけです。

先述の伊藤製作所のケースもそうですが、中小企業であっても経営者のビジョンが明確な会社は儲かっていますし、二桁の営業利益をだしている中小企業も少なくありません。

 

なぜ売上高の変動が大きくなったのか?「製造面」だけでなく「営業面」にも求められる改革

これは「製造面」だけでなく、「営業面」にもいえることです。

例えば前述の通り、今の時代は

・サプライチェーンの問題(例:米中貿易戦争や地政学的問題、天災、コロナ禍による生産網の断絶 他)
・コンプライアンスの問題(例:長年の不正検査の露見による出荷停止 他)
・技術革新の問題(例:EVシフト、携帯からスマホ化、クラウド化 他)
・世界的リセッションへの懸念(例:中国の不動産バブル崩壊・過剰生産による現地不況 他)
・その他

といったリスクが顕在化しやすい時代で、その結果、特定顧客に依存していると売上が大きく上下してしまう可能性が各段に高くなっています。

例えば前日も経営相談にこられた兵庫県の会社の場合、最寄りの大手電機メーカーの事業所(工場)が従来は好調で、長年にわたり好業績を維持してきたといいます。

また、この最寄りの大手電機メーカーの事業所は、この大手電機メーカーの中でも「ドル箱」の工場であり、この工場の出身幹部が高い確率で社長の座に着いてきたといいます。

ところがこの「ドル箱」だったはずの事業所が、EVシフトの中で設備投資を見誤り、莫大な投資をして新ラインを立ち上げたものの、仕事が全く受注できないという事態に陥ったといいます。さらにタイミングが悪いことに品質不正問題が発覚して経営陣も交代することとなり、この事業所も子会社化されて仕事が激減し、先の見通しが全く立たなくなった、といいます。

一般に、新規開拓を行うのは、既存顧客を維持するのに対して5倍以上の労力がかかるといいます。
ですから一般的な書籍やコンサルタントの人は「新規開拓よりも、既存顧客を重視した方が良い」といいます。しかし実際問題として、有り余る見込客を抱える大手企業ならまだしも、そもそも取引先数の少ない、かつ成長産業ではない取引先が大半なのであれば、その中で既存顧客に絞り込んでも、経営はより不安定になります。

前述の「新規開拓は、既存顧客維持の5倍以上の労力がかかる」というのは、DXやAIの力を借りず、全て人力で行った場合の話です。
いわゆる営業DXの代表的な手法である「オンライン営業」や、自社の製品データや技術情報を学習させたChatGPTと連携した「AIチャットボット」を活用すれば、新規開拓への工数は激減させることができ、現在の社員を増やすことなく、負担をかけることなく進めることができるのです。

実際、4年ほど前から営業DXを導入して取り組む私の某関係先の場合、メイン取引先のティア1企業からの仕事量が今期は3~4割ほども激減しました。従来であれば間違いなく赤字決算に沈んでいたところでしたが、前述の営業DXによって、

・大手電機メーカー(東証プライム:連結社員数5万名)からのインフラ案件
・大手プラントメーカー(東証プライム:社員数1000名)からの脱炭素案件
・大手セットメーカー(大手子会社:社員数800名)からの蓄電池案件

といった優良顧客を開拓することができており、各社毎月数百万~1千万円というベースの数字ができていたため、何とか赤字決算に沈むことなく、黒字を維持することができそうです。

同社の社長からは、

「この取り組みをしていなければ、間違いなく先期は赤字だった」

「毎月、優良新規顧客から引合いがきて、先の見通しが立つことが心理的に嬉しい」

といった、ありがたい声をいただいています。

中小企業(中小部品加工業・中小販売店)の場合、新規開拓をするにしても「小口の取引額の少ない新規顧客」を増やしても業績は上がりません。

そうではなく、月次数百万円から1千万円くらいの売上が見込める、“太客”といえる様な柱になる可能性のある新規顧客でなければ成功しないのです。

そこで今回、来る2024年6月5日(水曜日)東京会場(船井総合研究所 東京本社)にて、「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」を開催、前述の成果につながる営業DXやAI活用についてお伝えしたいと思います。

なお本セミナーには、実際に営業DXで大きな成果をあげた、株式会社カネコ 代表取締役 金子 雅一 氏にゲスト講師として登壇いただきます。株式会社カネコ様(従業員30名)では、営業DXに取り組んだ結果、大手優良企業(上場会社クラス)を中心に毎月20件前後の新規引合いの獲得に成功されています。

そしてその結果、自社の顧客数を3倍に増やすことに成功され、利益率と収益性の向上に成功されています。

「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」(2024年6月5日 水曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/113708

実際に営業DXに取組み、小口顧客ではなく、中堅・大手優良顧客の開拓に成功されたご本人(経営者)のお話を間近できいていただく、またとない機会です。

ぜひ経営者の方だけでなく、営業を担当されている幹部の方も含めて、本セミナーにご参加いただき、自社にどう活用するのかをお考えいただければと思います。

「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」(2024年6月5日 水曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/113708

また、機械工具商社(販売店)の経営者の皆様には、来る2024年6月20日(木曜日) 東京会場(船井総合研究所 東京本社)にて、「機械工具商社2024年地域一番化戦略セミナー」を企画しております。

現在の激動の時代、逆に様々なピンチをチャンスに変えて、今こそ地域一番店を目指したい、という機械工具商社経営者の方にご参加いただきたいと思います。

「機械工具商社2024年地域一番化戦略セミナー」(2024年6月20日 木曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/114259

セミナー会場は船井総合研究所の東京新本社となります。
ぜひこの機会に、当社の新本社にお越しいただければと思います。

セミナー会場で皆様とお会いできることを、心から楽しみにしております。

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