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2024年5月の時流とその対策:進むEVシフト。リストラに追われる会社、逆に売上3倍の会社の実情

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ドイツ自動車部品メーカーの大リストラと、EVシフトの関係

GDPで日本を抜いたとされるドイツですが、実際には相当景気が悪いといいます。

実際、特にドイツの大手自動車部品メーカーは軒並みリストラを発表しています。

例えば・・・

・ドイツ大手自動車部品メーカーZF社 2020年代末までに約1万2000人の従業員を削減。
・同様に、ボッシュ社、コンチネンタル社、ヴェバスト社も1000~数千人の従業員を削減。

こうしたドイツの大手自動車部品メーカーのリストラの要因として、単なる景気後退だけが理由ではなく、自動車産業そのもののEVシフトも大きな理由とされています。

ドイツではEVシフトはドイツ政府の大方針とされており、2030年までに自動車部品業界の就業者は27万人から20万人に減少すると試算されています。

その一方で、EVシフトにはビジネスチャンスもあるとの見方もあります。

ボッシュ社長のクラウス・メーダー氏によると、「今後10年間はEVは右肩上がり」だといいます。同氏によるとEVは2030年には全車両のうち半分、2035年には約60%を占めるという見方があるのだといいます。具体的には、

・EV向けパワートレーン(駆動装置)
・モーター
・電子系機器
・一体化電動駆動装置(eアクスル)
・充電器関連

が主要なマーケットだということです。

ちなみにボッシュ社は売上高916億ユーロ(約15兆円)の自動車部品メーカーとしては世界最大の会社であると同時に、非上場のオーナー経営の会社でもあります。

また自動車部品事業以外に、

・建設マーケット向け作業工具事業
・FAマーケット向けSUSフレーム事業
・医療・食品マーケット向け包装機事業

など、特定業界に依存しない多角化経営を推進していることでも知られる世界的な優良企業でもあります。

何と売上3倍!EVシフトの恩恵を受ける関係セットメーカー

実際、ハイブリッド車で優位が伝えられる日本メーカーも、EVシフトに対しては多大な投資を行っています。

特に北米域内で生産した蓄電池を優遇するインフレ抑制法の影響もあり、ホンダは1兆7000億円をカナダのEV完成車工場と電池工場に投資するといいます。

またトヨタも米ケンタッキー州の工場に加え、インディアナ州の工場でもEV生産投資を行うとしています。このケンタッキー州の工場は2021年の設立以来、約2兆1500億円が投資されており、さらに2200億円を投資して2026年からEVの量産をスタートするとしています。

こうした完成車メーカーのEV関連の投資を受けて、一部の関連するセットメーカーも業績が好調です。

例えばリチウムイオン電池のフィルムへの塗工装置を手掛けるヒラノテクシードという会社は、2015年に145億円だった売上が、直近の2024年3月期には469億円と、EVシフトが明確になってからは3倍以上も年商が増加しています。

また同様にリチウムイオン電池のフィルムの巻き取り機を手掛ける大阪の不二鉄工所も、今年12月の稼働に向けて新工場を建設、生産能力を5割増加させるといいます。

ちなみに同社の直近の売上は、前年対比で73%増の159億円であったといいます。

かたや逆に、従来は内燃機関の自動車の仕事のみを行っていた部品メーカーは、事業戦略の転換を求められています。

例えば排気系部品。自動車のマフラーなど排気系部品は、EVシフトが行われると確実に消滅する分野の1つです。こうした自動車の排気系部品を手掛ける大手自動車部品メーカーの三五では、建設業界向け次世代配管システムの事業化を急いでいます。

この次世代配管システムはFP35と呼ばれるフェイライト系ステンレス鋼を採用しており、菅と接手を一体化。配管接続の簡素化を実現するなど、現在の「職人レス」「工数短縮」といった建設ニーズに合致した新技術であるといえます。かつ、従来のマフラーなど自動車の排気系部品を製造していた生産技術を活かせる新分野であるといえます。

実際、前述のボッシュ社も自動車部品だけでなく、建設マーケットや産業機器マーケットなど特定業界に依存しない事業戦略を実現しており、EVシフトに伴い、特にこうした動きの加速が求められると私は思います。

また、こうした特定業界依存からの脱却は、いわゆる「メーカー」だけの話ではなく、自社ブランドはもたない受託型製造業(部品加工業)であっても同じことだといえます。

「今や町工場が発注元を選べる時代」に? 二極化の進む中小部品加工業の実情

例えば東京都墨田区に本社工場のある板金加工業、浜野製作所(社員数52名)の浜野社長は、「今や町工場が発注元を選べる時代」だといいます。

浜野社長が言われる通り、町工場が発注元を選べる様になるポイントとして、

・他社に無い技術や製品を持つことは難しい。

・そこで、「駆け込み寺」と言われる様な対応力、丁寧なサービスなど総合力で勝負するべき。

と、日本経済新聞からの取材に対して答えられています。

私もその通りだと思います。

私たち、船井総合研究所 製造業商社支援部では、20年近くにわたり中小の部品加工業(受託型製造業)の業績向上コンサルティングを手掛けてきています。

業績向上というのは具体的に、

・売上高の向上

もそうですが、製造業という特性上、売上を上げるためには設備投資をして工場を大きくしなければならないということを前提にすると、

・利益率の向上(=生産性の向上)

について、重点的に手掛けてきた歴史があります。

中小製造業の生産性向上の第一歩は、「自社の強み」の明確な把握から!

特に中小部品加工業(受託型製造業)が生産性を向上させる為には、

・自社の強みをしっかりと把握して、

・自社の強みに合致した仕事を集める

ことが求められます。かつ特定業界に依存しない様に、幅広い「成長産業」から仕事を集めてくることが前提になります。

ここで最も大事なことは「自社の強みの明確な把握」にありますが、私たちが考えるに部品加工業の強みというのは、次の3つあります。

1)機能訴求の強み
2)スペック訴求の強み
3)価値訴求の強み

ここで、1)機能訴求の強み というのは、

・ISO9001を持っている
・工場で5Sに取り組んでいる
・短時間で見積り対応ができる
・単品・少量から対応ができる
・その他

といった、文字通り「機能面」の強みのことです。

こうした 機能訴求 の強みが刺さるのは一般に「購買部門」「資材部門」といった大企業の川下部門や、同業者といった範疇になります。つまり“価格競争”から脱却しきれない範疇ともいえます。

これに対して 2)スペック訴求の強み というのが、前述の浜野社長の言われる「他社に無い技術や製品」のことで、例えば

・米粒よりも小さな歯車をつくることができる
・ミクロンレベルでの細穴加工をすることができる
・ミクロンレベルでの微細加工をすることができる
・その他

といった様な、文字通り「他社ができない技術」です。

製造業のお客様と経営相談を行う際、「御社の強みは何ですか?」と聞くと多くの場合「ウチには特に強みが無いんですよね・・・」といわれますが、それは多くの方がこの スペック訴求の強み のみが強みだと思っているからです。

そもそも、前述の浜野社長が言われる通り、「他社に無い技術や製品を持つことは難しい」といえます。

もっというと、「他社ができない技術」というのは、なぜ他社ができないのかというと、そもそもその技術そのものが“超ニッチな技術”であって、そもそも市場規模が小さい、あるいは需要そのものがとても少ない、ということなのです。

それよりも、実際に新規開拓に結び付きやすい強みとは、 3)価値訴求の強み になります。

具体的に 3)価値訴求の強み とは、

・設計者あるいは開発者に対して、材料選定や加工法選定のアドバイスができる
・自社の加工技術をもとにVAあるいはVE提案ができる
・従来の加工方法からの、置き換え提案(=工法転換)提案ができる
例)切削加工から塑性加工への置き換え 等
・従来の材料からの、置き換え提案ができる
例)鉄からアルミ、あるいは アルミから樹脂 等
・その他

と、いった様な内容にあります。

自社の本当の強みを知る方法とは?

自社の強みを知る、という観点で参考になるフレームワークとして、心理学の世界で良く使われる「ジョハリの4つの窓」という理論があります。
ジョハリの4つの窓とは、「自分(自社)には4つの自分がいる」というもので、具体的には

a)自分も知っているし、他人も知っている自分
b)自分は知っているけども、他人は知らない自分
c)自分は知らないけども、他人は知っている自分
d)自分も他人も知らない自分

この4つのことです。

これを自社の強みに置き換えると、上記b)については、自社の営業担当あるいはホームページ上などで、積極的にPRしていくべき内容の強みといえるでしょう。

そして上記c)については、例えば後述する様な業界のセミナーに参加してみる、業界に詳しいコンサルタントの経営相談を受けてみる、といった方法で明確になるかもしれません。

さらに上記d)については、新しいマーケティング等の取組みの中で、徐々に気が付いてくることかもしれません。

そして実際に、来る6月5日 水曜日には「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」を開催します。

これらセミナーの詳細は、下記URLをご覧いただければと思いますが、いずれも中小部品加工業が前述の様な「自社の強みを明確にして」「成長産業に新たな販路を広げ」「業績向上に結び付けた」という成功事例です。

ぜひご参加を検討いただき、自社のビジネスへの新たなヒントにしていただきたいと思います。

「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」
(2024年6月5日 水曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/113708

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