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2024年4月の時流とその対策(2):中小製造業が営業利益率10%超の高収益経営を実現する方法

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激戦市場で売上高3倍、営業利益率25%を実現した中堅メーカーの戦略とは?

中小企業が、高収益・高生産性経営を実現するために必ず意識しなければ、ならないことがあります。
それは自社が手掛ける製品の「製品ライフサイクル」です。

例えば部品加工業の場合、試作・開発からテスト量産段階の“立上げ”期の製品(仕事)は高い利益率を確保しやすくなります。ところが“立上げ”から軌道にのり数年くらいが経過すると、お客様の側の生産技術も確立・安定する一方、コストダウン要求がでてきます。
親会社によっては、毎年3~5%くらいのコストダウンを要求してくるところもあります。

そして、コストダウン要求に応えられないと別の会社に「転注」されてしまうケースも多々あります。

この様に、自社が手掛けるあらゆる製品やサービスには「ライフサイクル」があります。
これを“ライフサイクル理論”といい、一般に次の様にいわれます。

・導入期・・・最初の開発・立上げなどのフェーズ
・成長期・・・開発・立上げがうまくいき、生産がどんどん伸びていくフェーズ
・成熟期・・・生産そのものが安定的になり、コストダウンが重視されるフェーズ
・衰退期・・・生産そのものが頭打ちになり、生産数量そのものが減少傾向となるフェーズ

この“製品ライフサイクル”を経営に取り入れ、成功しているといわれる会社の一つが、コネクタメーカーとして有名なヒロセ電機です。ヒロセ電機の2004年の売上は通期で756.7億円に対して、直近の通期決算の売上は1832億円。かなり成熟したコネクタ市場でありながら、この20年間で売上は3倍近く。

しかも営業利益率は25%超という高収益経営を実現しています。

そもそもコネクタは単価が安く価格競争に陥りがちな典型的な製品です。
同社は製品ライフサイクルの中でも「導入期」「成長期」の領域を重視する経営を実現。具体的には「ヒロセ技術展」といわれる“コネクタの仮説”を顧客に提示して、コンセプト品から顧客ニーズを獲得する場をプライベートショーというかたちで東阪にて実施しています。

先期のヒロセ技術展はパシフィコ横浜とグランキューブ大阪で開催され、何と7686名もの来場者を集めたのだといいます。こうした顧客ニーズの収集に加えて「ゼロイチ祭り」といわれる社内イベントで“コンセプト品”につながる様なアイデアを募集して新製品開発を“組織文化”として活性化しているわけです。

「製品ライフサイクル」経営で営業利益率15%のプレス加工会社(従業員35名)

こうした「製品ライフサイクル」経営の実践は、大手メーカーだけの戦略ではありません。

例えば、船井総合研究所が主宰する、ものづくり経営研究会 部品加工業経営部会の会員企業様である、某プレス加工会社(従業員35名)は、こうした「製品ライフサイクル」経営を取り入れ、ここ10年間で売上は約2倍、営業利益率も15%前後を確保し続けています。

同社の場合は金型を内製して、開発・試作から量産までを一貫して対応できる体制が強みです。
特に、従来の切削加工あるいは焼結部品から塑性加工への転換、あるいは新製品開発段階での工法提案を強みとして、「導入期」から「成長期」の製品で高利益率を実現しています。

そして「成熟期」あるいは「衰退期」のフェーズに入った製品は基本的に手掛けず、前述のヒロセ電機と同様に「製品ライフサイクル」経営を、実現しているのです。

中小企業の受託型製造業にも適用できる、製品ライフサイクル理論

適用できる、製品ライフサイクル理論

前述の「製品ライフサイクル」理論、

・導入期・・・最初の開発・立上げなどのフェーズ
・成長期・・・開発・立上げがうまくいき、生産がどんどん伸びていくフェーズ
・成熟期・・・生産そのものが安定的になり、コストダウンが重視されるフェーズ
・衰退期・・・生産そのものが頭打ちになり、生産数量そのものが減少傾向となるフェーズ

ですが、この理論は有名ではありますが、中小製造業でこの理論を意識して経営をされている社長は、意外と少ない様な気がします。

例えば先日、ある部品加工業(機械加工:従業員30名)の社長様から経営相談を受けました。
聞くところによると従来からの主要取引先からの値引き要請が厳しく、値上げどころの話ではない、といいます。新聞やニュースだと「値上げ」が普通になってきているのに、我々中小企業だとそんな値上げは通らない、という話でした。

そこで「その主な部品は、何年前くらいから流れている部品ですか?」と聞くと、10年ほど前からだといいます。

つまり、この部品はおそらく「成熟期」あるいは「衰退期」に差し掛かっているわけです。
10年前から流れている部品だと、この主要取引先でもいろいろな意味で慣れてきていて、設計変更が新たに入る余地もないのでしょう。つまり、この部品は明らかにコストダウン対象になっているのです。

先ほど述べた「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のうち、意識してこちらから提案を行い「導入期」の製品ができる様な仕掛けを行っていくことが、利益率の向上はもちろん利益率維持のためにも必須だといえるのです。

中小製造業における価格競争回避の鉄則とは?

では、どうすれば「導入期」の製品の仕事を獲得できるのでしょうか?
それはお客様からの“技術課題”を獲得することです。

“技術課題”というのは、例えば、

・従来は焼結で製造していた部品を、塑性加工で製造したい
・従来よりも大型かつ、平面度の高い部品を製造したい
・従来はアルミでつくっていた部品を樹脂化したい
・従来よりも大きな成型を行いたい
・その他

と、いったものです。

この様に“技術課題”とは、お客様のお困りごとです。価格競争回避の鉄則は、こうした「お困りごと」を獲得して、問題解決(=ソリューション)を行うことです。

こうした“技術課題”すなわち「お困りごと」を獲得するためには2つの方法があります。

1つは既存客に対してMA(マーケティング・オートメーション)でメルマガを配信をした上で、その後のスコアリングを行い、ニーズ把握をする方法です。

2つ目はソリューションサイトによって、前述の“技術課題”を抱えた潜在客からの新規引合いを獲得することです。

営業利益率10%超を実現した、技術課題を有する新規顧客獲得法

例えば千葉県に本社工場をおく、特注ネジ・リベットを製造している株式会社カネコでは、エンジニアを対象として、毎月、締結部品に関わる技術情報をメールで配信しています。

例えば先月は“穴あきボルト”の技術情報です。

この“穴あきボルト”は、文字通りボルトの頭部あるいは軸部に横穴あるいはクロス穴があいており、それを回り止めに使用したり、あるいは油や液体を循環させるために、こうしたボルトを使うわけです。

こうしたネジの世界は、膨大な特注品のニーズがあります。

こうしたメールの情報をみたエンジニアの方は、「こういうボルトがつくれるのなら、ああいうボルトもつくれるかな?」ということで、問合せに至ります。

あるいはさらに情報を求めているエンジニアは、そのメールマガジン内の「詳しくはこちら」ボタンをクリックして、同社が運営する「特殊ネジ・リベット製造.COM」を閲覧します。
前述のMA(マーケティング・オートメーション)は、
・誰がメールマガジンを開封したか
・そのうち、誰がWebサイトまで閲覧したか
・かつ、そのWebサイトの、どのページを、いつ、どれだけ閲覧したのか
が把握できます。その結果、そのお客様が抱えている課題・ニーズを推察することができます。

さらに同社のWebサイトには、ChatGPTと連携したチャットボットが装備されています。

過去のWeb分析から、具体的な問合せをしてくれる潜在客というのは、必ず「製品事例」を閲覧していることがわかっています。

つまりWebにアクセスしてきた潜在客に対して、そのお客が求めている「製品事例」を適切に誘導することができれば、具体的な引合いにつながる可能性が高くなることになります。

ところが同社のWebサイトは、特注ネジ・リベットの事例が100種類以上もアップされているため、お目当ての事例を見つけきれず、その結果問合せに至らず離脱してしまっているケースも散見されました。

そこで同社ではChatGPTに同社内のサイト情報を学習させた上で、Zoho(ゾーホー)のチャットボットと連携させることにしました。その結果、例えば、Webサイトにアクセスしてきた潜在客が

「真空装置で使用できるステンレスネジの事例はありますか?」

と自由記述でチャットボットに入力をすると、

「こういう事例がありますのでご覧ください」と、チャットボットが適切な事例を案内するのです。

その結果、同社ではチャットボット経由での引合いが4倍になり、サイトそのものからの問合せも3割以上増えました。毎月20件以上の引合いを獲得できており、顧客数も3倍。

営業利益率も10%を上回る様になりました。

<同社の取組みは、こちらの動画からご覧いただけます>
https://www.youtube.com/watch?v=AxisChhdPnU&t=34s

年間3億円の新規開拓を実現した、技術課題を有する新規獲得法

また東京に本社工場を置く成型加工業、株式会社関東製作所の場合、集客用のソリューションサイトを2つ立上げ、技術課題を有する新規問合せの獲得に注力しています。

最初に立ち上げたのが「射出成形ラボ(https://injection-lab.com/)」というサイトです。

このサイトの成功もあり、また、同社の場合は顧客との機密保持の関係で事例を出すことが中々できないという事情もあって、事例をできるだけださなくてもよいVA・VE情報のアーンドメディアサイト「MFG Hack(https://mfg-hack.com/)」を立ち上げました。

同社では、この2サイト合わせて毎月40件を超える新規顧客からの引合いを獲得しています。

その結果、従来主力だった自動車業界以外の、「ヘルスケア業界」「半導体業界」「インフラ業界」「水処理業界」「エネルギー業界」といった多岐にわたる業界から、技術課題を獲得することに成功しています。

 

その結果、同社の新規開拓売上は、年間3億円を超えています。
<同社の取組みは、こちらの動画からご覧いただけます>
https://www.youtube.com/watch?v=QCN8pmVBLfg

これら2社の取組みは、いわゆる「価格競争」によって新規開拓を推進しているのではなく、
「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のうち、意識してこちらから提案を行い「導入期」の製品ができる様な仕掛けを行っている結果、価格競争に陥ることなく、成長産業の優良顧客との取引に成功しているのです。

この両社の取組みを、
5月15日に開催する「部品加工業「脱」自動車(内燃機関)マーケット戦略セミナー」は
株式会社 関東製作所 代表取締役 渡邉 章 氏を、特別ゲスト講師として、

6月5日に開催する「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」は
株式会社 カネコ 代表取締役 金子 雅一 氏を、特別ゲスト講師として、

下記の要領で経営セミナーを開催します。

もちろん、私、片山和也も講師として両セミナーに登壇します。

ぜひ、下記セミナーへのご参加を検討いただければと思います。

 

「部品加工業「脱」自動車(内燃機関)マーケット戦略セミナー」
(2024年5月15日 水曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/108764


「中小製造業DX・AI経営で利益率・収益性UPセミナー」
(2024年6月5日 水曜日:東京会場)
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/113708

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