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2024年1月の時流とその対策(3):2024年今年行うべきテーマ

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2024年1月の全国の市況と、今後の景気見通しは?

2024年がスタートし、皆様におかれましても年初の挨拶回り等で、皆様のお客様の市況や今年の見通しについて様々な情報を得られているかと思います。

足元は半導体不況や、EVシフトに伴う“様子見”的な状況から設備投資の見送りなど、一見厳しい情報が多い様にもみえます。しかし某大手直動メーカーも、足元の受注は振るわないけども、今年の春から夏にかけてかなりの大型商談が入っている、といいます。内容は半導体関連の設備投資だといいます。
旧来は「シリコンサイクル」といって、サーバーやパソコンの買い替え周期に合わせて半導体の需要が増減する、というサイクルがありました。しかし現在はクラウドの時代です。パソコンはともかく、新たにサーバーを入れる会社というのはかなり減っています。
クラウドになるとデータセンターが主体になり、その特性上、データの量は右肩あがりで増えていきます。

また「シリコンサイクル」の時代と異なり、今やスマートフォンという形でほぼ全ての人がパソコンと同等の性能を持つ端末を手にして、以前では考えられないほど高度で複雑な情報処理を行っています。
つまりDXさらにはAIの時代、根本的に半導体の需要というのは右肩上がりなわけです。

歴史的経緯にみるEVシフトの今後

またEVシフトも現在の時流であるといえます。

今、北米や中国でEVが思ったほど売れず、現地での過剰在庫や設備投資の中止等が報じられていますが、これはインフレや不動産バブル崩壊等で一般消費の勢いが落ちており、現在はまだまだ高額なEVが市況的に売れていない、ということだと私は推察しています。

自動車産業というのは市場規模が大きく裾野が広いため、歴史的にみると消費者のニーズというよりも、政治的あるいは国策的に施策が決まってきた経緯があります。

例えば現在のガソリン車主導の自動車産業も、消費者のニーズにより決まったわけではありません。
現在の自動車産業も、フォードがT型フォードの量産をスタートした段階では、動力源として
・蒸気機関
・電池
・内燃機関/エタノール
・内燃機関/ガソリン
と、4つほどの選択肢があったといいます。EVなのか、PHVなのか、HVなのか、あるいは水素エンジンなのか、といった現在の状況に似ています。

合理的に考えれば、最も優先度が高かったのは内燃機関/エタノールだったといいます。
では、なぜ、ガソリンが自動車の主要な燃料になったのか、は諸説あります。当時はロックフェラーが米国で油田を掘り当て、石油の精製施設をどんどん買収して寡占状態だったといいます。

自動車が誕生するまで、原油の主な使用用途は“照明”あるいは“暖房”でした。使用するのは灯油です。ところが、原油から灯油を精製するプロセスで、どうしてもガソリンが生まれます。
ガソリンは気化性が高く、爆発の恐れがあるので、当時は危険物として川に流して捨てていたそうです。

ところが一転、それまで廃棄していたガソリンが自動車の燃料になる、ということでロックフェラーの様な大手石油資本が自動車メーカーと組んで、ガソリンを燃料とすることを推奨します。
実際、自動車王とよばれたフォードと、石油王とよばれたロックフェラーは親友だったといいます。

さらに自動車を走らせるためには道路が必要で、高速道路の建設が進みました。この時、高速道路建設を一手に引き受けたのが、現在でも世界最大のゼネコンといわれる、米国のベクテル社です。

そして、ベクテル社がつくる道路のロードサイドには、石油資本がフランチャイズで始めたガソリンスタンドがどんどん立ち並ぶ様になります。世界最古のフランチャイズの1つは、ガソリンスタンドです。
この様に、石油資本・自動車産業・ゼネコンが国家を巻き込み、三つ巴で推進されたのが現在の自動車産業のベースになっています。

ところが、ガソリンだけでなく、小麦やトウモロコシを原料とするエタノール燃料も、根強く自動車の燃料として残ったのだといいます。エタノールはウイスキー等の醸造装置があれば誰でもつくれます。かつガソリンと違って燃焼時にススがでませんから、エンジンのメンテナンスの上でも有利です。

そして、一説によれば、米国が禁酒法を施行した理由は、大手石油資本がロビイストを使って政治圧力をかけ、自動車燃料としてのエタノール(=アルコール)を根絶やしにしたかったから、という説もあります。
禁酒法はアルコールの製造と販売を禁止する法律です。飲むことそのものを禁止した法律ではありません。
実際、禁酒法が施行された2年間で、このエタノール燃料というのはほぼ根絶やしになったといいます。

さらに1927年の米国大不況の際には、米国の化学メーカーであるデュポン社が資金を提供して、ゼネラルモーターズが数多くの自動車メーカーを買収、現在のGMができあがります。
この当時、米国には200社近い自動車メーカーがあったそうですが、この大不況をきっかけとしてビッグ3(GM・フォード・クライスラー)の体制が確立します。

なぜデュポン社がGMに資金提供をしたのかというと、当時も今も、自動車は樹脂製品などケミカル材料を多用するからです。自動車が売れれば売れるほど、デュポン社は潤います。そして、こうした樹脂などケミカル材料の原料は、やはり石油です。

この様に、自動車の量産技術が確立されてから、現在のガソリン自動車の体制になるまで20年近い年月を要しています。

この文脈を現在に当てはめるとすると、

・テスラ社が高級車を起点とするEV技術を確立し、
(ちなみに昨年度最も売れた車はテスラのモデルYで、次がトヨタのカローラです)
・EUは欧州バッテリー同盟、米国はインフレ法によりEV生産を自国に囲い込み
・欧米が主導の、炭素権取引(=CO2取引)の確立
・理論上事故が起きない小型原子炉による原子力発電技術の確立

の様に、EVシフトへのストーリーが整っている様にもみえます。

未来予測が難しい理由とは?ムーアの法則と指数関数的変化

しかしながら日本国内の論調は「EVは高くて経済的でない」「EVよりもPHVが本命だ」など、様々な意見があります。

ここで押さえておかなければならないテクノロジー予測の原理原則が、ムーアの法則とよばれる経験則です。
ムーアの法則というのは「半導体は2年間で価格が1/2になり、実装密度が2倍になる」という、テクノロジー・ロードマップをつくる上でベースとなっている経験則のことです。

2年間で価格が1/2ということは、4年間で価格が1/4になり、8年間で1/8になる、ということです。
さらに2年で実装密度が2倍ということは、4年で性能が4倍、8年で性能が8倍ということになります。
これは、直線的変化である「比例関係」ではなく、非直線的変化が起きる「指数関数的変化」といわれる変化曲線を持ちます。指数関数的変化を持つ事象というのは、クリティカルポイントとよばれるある一線を超えると、飛躍的に性能が高まります。

これが、テクノロジーの未来予測を困難なものにしています。

つまり、予想以上にテクノロジーが発展し、同時にコストが劇的に下がる、という現象が起きるということです。このムーアの法則が適用される業界として、前述の
・半導体
だけでなく、
・太陽電池
・電池
等が挙げられます。

実際、太陽電池も一時期は三洋電機やシャープがトップシェアを取っていましたが、ドイツのQセルズという会社にすぐ抜かれました。ところがQセルズも、中国や台湾の新興メーカーの追い上げを受けて倒産します。
つまり太陽電池もムーアの法則が適用されるため、当初の予想を上回る勢いで性能が向上し、同時にコストが下がったということです。

つまり電池の将来予測も、私たちの想像を上回る勢いで性能が上がり、かつコストが下がる可能性が高い、ということを経営者は頭に入れておく必要があります。

変化の激しい2024年、今、経営者が考えておくべき4つのこと

この様に変化が激しい時代、中小企業経営者が考えておくべきことは次の4つです。

1)自社成長へのストーリーづくり

例えば、今、経営者にとって大きなテーマなのは「高賃金化」です。
「高賃金化」が図れなければ、構造的人手不足の中、新たに人を増やすことも困難ですし、優秀な人材のつなぎとめも困難です。
そして「高賃金化」を実現するための方法は1つしかなく、それは
・生産性の向上
です。つまり従業員1人あたり粗利の最大化です。

製造業の場合は、人時生産性(にんじせいさんせい)という考え方があります。
人時生産性とは、自社の粗利を自社の従業員の総労働時間で割り算したものです。
例えば床屋さんのケース。床屋さんは1時間ほどでカットしてもらった結果、だいたい4500円ほどの理髪料金を取ります。つまり床屋さんの人時生産性は約4500円となります。

ちなみに、正社員主体の会社の場合、人時生産性が4000円をきると、ほぼ赤字になります。
パート・アルバイト、あるいは外国人労働者主体のビジネスでも、人時生産性が2500円をきると赤字になります。
そして同じ部品加工業だったとしても、人時生産性4000円かつかつの会社もあれば、ほぼ同じ様な業種であるにも関わらず、人時生産性が10,000円をかるく超えているケースもあります。

この「生産性」を上げるためには、大きく次の3つの方法があります。

方法1:自社商品の単価を上げる(=新規事業)
方法2:優良顧客と付き合うことにより、取引単価を上げる(=新規開拓)
方法3:自社の作業の自動化を進め、最小限の人数で最大限のアウトプットを図る(=自動化)

現実問題としては、この方法1と方法2を、同時に進めることだと思います。

あるいは自社の「100億円企業化」というのも、売上アップという意味での成長へのストーリーです。

例えば、国の中小企業施策も現在、大きく変化しています。
従来は、全ての中小企業をあまねなくサポートする、というものでしたが、現在では地域の中でもある程度地域の核となりそうな企業(=コネクターハブ企業)に焦点を絞り、重点的に支援する、というものです。

また昨今、大手企業が取引先のサプライヤーを見極める際、原則として従業員が30名以上いる会社でないと、取引口座をつくらない、というケースも増えてきています。
実際、新規開拓活動を行った時に、最も成果がでやすいのは従業員100名を超えている会社であるケースです。大手企業の場合、仕入れを行う仕入れ取引先に対しても、取引与信があります。
やはり100名を超えている会社というのはサステナビリティー的に安心だ、ということです。

そうした文脈の中で、「100億円企業化」を目指す、というのも、前述の「生産性を上げる」ことと同じ自社成長のためのストーリーです。

どちらに重点的に取り組むのかは、あるいは同時に取り組むのかは、各企業ごとの判断かと思います。

2)新規事業への取組み

「生産性を上げる」にしても、「100億円企業化」を目指すにしても、「新規事業」は業績向上のための最も手っ取り早い手段です。
ここで留意することは、「新規事業」を行うにしても、“自社のお隣”の領域を手掛ける、ということです。

例えば従来、機械工具を取り扱っていた商社(販売店)が、工場工事に力を入れる、というのは“お隣の領域”を対象とした新規事業です。機械工具の平均単価は20万円前後ですが、工事となると平均単価は100万円を超えてきます。

あるいは私の関係先の例でいえば、従来は冷間鍛造部品の二次加工を行っていた会社が、従来の販売先だった冷間鍛造業者を“仕入先”と捉えなおし、特殊ネジ・リベットの事業を行うことで、大きく業績を伸ばしています。
この様に、従来の販売先を仕入先と捉えなおす、というのも“自社のお隣”の領域の新規事業だといえます。

ちなみに、船井総研が昨年に出版した書籍「地域コングロマリット経営」の中でも述べていますが、中小企業が新規事業に成功するポイントは、
・自社でアイデアを出さない
という点が、現実問題としてあります。
「自社でアイデアを出さない」とはどういうことかというと、ゼロから手探りで新規事業を行うべきではなく、既にうまくいくことが明確な自社に合った事業を選ぶ、といった視点の方が現実問題として成功する確率が高い、ということです。
これはBtoCビジネスでいえば、フランチャイズに加盟することに加えて、大変僭越ですが当社の様な専門コンサル会社が推奨する「今、当たるビジネス」「当たっているビジネス」を手掛ける、ということです。

また製造業の様なBtoBビジネスの場合も、例えば部品加工業であれば過去20年にわたり、また400社以上のコンサルティング実績を、船井総研では持っています。

例えば前述の「EVシフト」への適応が自社のテーマである場合、あるいは「EVシフト」時代に自社の本当の強みを見つけ、伸ばし、成長産業から新規優良顧客を獲得するビジネスモデルを、2024年2月19日(月曜日)に東京会場で開催される「部品加工業「脱」自動車マーケット戦略セミナー」でお伝えします。

↓↓↓「部品加工業「脱」自動車マーケット戦略セミナー」の詳細・お申込みはこちら!!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/108654

部品加工業「脱」自動車マーケット戦略セミナー

ご関心のある方は、上記URLから本セミナーの詳細をご覧いただきたいと思います。

3)採用への取組み

現在は少子化という背景からも、構造的な「人手不足」です。
多くの中小企業経営者が、採用に困っています。

しかし、では、全ての会社が採用に困っているかというとそうではありません。

同じ様な業種の中小企業であったとしても、採用に全く困っていないレベルで採用にうまくいっている会社もあれば、何をやっても採用がうまくできない会社とに二極化しています。

こうした違いがなぜ生まれるかというと、
前者の会社の場合は現在の最新の採用の潮流を取り入れ、自社採用サイトを整備し、自社が欲しい人材に合致した採用媒体を選択し、時流に合ったやり方で採用活動を行っています。

ところが後者の会社の場合は、ずっと以前からの採用ノウハウに基づき、お金をかけて大手マス媒体の採用媒体を活用しているものの、大手企業と同じ様な土俵で勝負する結果となってしまっているため、成果があがらないケースです。採用もマーケティングと全く同じで、やはり“時流”や“最新の潮流”“ノウハウ”というものがあります。重ねて大変僭越ですが、セミナー等で最新の潮流をつかむことが必要だと思います。

4)DX/データ・AI経営への取組み

冒頭にも述べた「生産性を上げる」という文脈の中、DXは全ての会社にとって必ず取り組まなければならないテーマです。今、日本の中小企業が取り組むべきDXの内容については前回のコラムでも詳しく書きました。

また、現在は過渡期ともいえるAIについても、自社のDXにいちはやく取り組んで軌道に乗せ、自社データをAIが活用できる形で社内に蓄積してくことが、将来のAI活用への準備といえます。

なお、DXについては大きく次の3つのDXがあります。
営業DX・・・新規顧客を効率的に獲得し、営業生産性を上げるDX
管理DX・・・間接業務の生産性を上げるDX
現場DX・・・生産現場の生産性を上げるDX

私は上記のうち、最も業績にインパクトを与えるのは営業DXだと思っています。
また、DXが進むと、当該分野での人材育成も同時に進みます。
なぜなら、DXが進むと自社内のナレッジが言語化され、仕事のブラックボックスも少なくなるからです。

さて、前述の、今経営者が取り組むべき4つのテーマに加えて、「IPO・M&A」「財務・資金調達」というテーマを加えた大型セミナー企画として、来る2024年2月22日(木曜日)東京会場 にて、
「年商100億を実現するための経営戦略サミット」セミナーを開催いたします。

本セミナーでは、
・人材採用・育成戦略
・IPO・M&A戦略
・財務・資金調達戦略
・経営システム戦略(DX)
・新規事業開発戦略
という5つのレーンで、24の戦略を提言する、という内容です。

↓↓↓「年商100億を実現するための経営戦略サミット」の詳細・お申込みはこちらから!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/109378

本セミナーには、私も「CRM経営戦略(デジタル融合計画)」という講座を担当しており、登壇いたします。

繰り返しにはなりますが、本セミナーは「100億円企業化を目指す」をテーマに、24講座の中から、ご自身が関心のあるテーマを選択いただく、というものです。
本セミナーの講座からは、必ずや自社を成長させるための示唆が得られるのではないかと思います。

前半に申し上げた「部品加工業「脱」自動車マーケット戦略セミナー」と、ともに、
「年商100億を実現するための経営戦略サミット」につきましても、ぜひ自社の今のテーマに合わせて、これらセミナーへのご参加をご検討いただければと思います。

<2024年2月22日(木曜日)東京会場 開催>
↓↓↓「年商100億を実現するための経営戦略サミット」の詳細・お申込みはこちらから!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/109378

年商100億を実現するための経営戦略サミット

<2024年2月19日(月曜日)東京会場 開催>
↓↓↓「部品加工業「脱」自動車マーケット戦略セミナー」の詳細・お申込みはこちら!!
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