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凋落するサンフランシスコ・急成長を遂げるテキサス・ダラスフォートワースエリア

この9月10日(日曜日)~9月15日(金曜日)の1週間、グレートカンパニー視察セミナーの講師として、100名を超える経営者の皆様と米国・テキサス州を訪れていました。

では、なぜ、今回はテキサス州なのか?

それは明らかに、米国経済の成長の中心が、西海岸のサンフランシスコエリアから、中西部のテキサス州エリア(特にダラス・フォートワースエリア:略してDFW)にシフトしているからです。

シリコンバレーで知られるサンフランシスコエリアは、GAFAMに代表される様なテック企業が集積した結果、サンフランシスコ市の所得の中間値(平均値ではなく)は年収3000万円を超えているといわれます。
その結果、家賃が高騰し、不動産が高騰し、全てのコストが急騰して今や急激にビジネスがしにくい街になりつつあります。同時に貧富の差が大きく広がり、前述の様なテック企業に勤務する高所得者層は高級住宅街で豊かな暮らしを享受する一方、サンフランシスコ市内の中心部は急激な治安の悪化が懸念され、ショッピングモールやかつてのお土産物屋も、現在では空き店舗が目立っています。

それに対して、前述の中西部テキサス・ダラスフォートワースエリアは、こうしたシリコンバレーエリアから続々とテック企業が流入してきています。
具体的には、
・テスラ
・ツイッター
・オラクル
・Zoho(ゾーホー)
といったDXを牽引するテック企業をはじめ、
・トヨタ自動車
・ダイキン工業
・クボタ
といった日系大企業も、米国本社を続々とテキサス州に移しつつあります。

なぜ、今、テキサス・ダラスフォートワースエリアがビジネスで注目を集めているかというと、大きく次の5つの理由があります。

理由1:西海岸と比べると土地代やエネルギーコストなど、物価が各段に安い
理由2:テキサス州は収税が0であり、進出企業への補助が手厚い
理由3:テキサス大学など、優秀な頭脳を供給できる学術的なインフラが整っている
理由4:メキシコが近いこともあり、ヒスパニックなど安価な労働力の確保が容易である
理由5:地理的に米国の中心であり、西海岸でも東海岸でも、米国のあらゆるエリアに日帰りで行ける

中国やインドと変わらない活気、再開発が進むテキサス州の主要都市

実際、今回、テキサス州の各主要都市を訪れて驚いたことは、州都であるオースティン市や、トヨタ自動車の主要工場が位置するサンアトニオ市も、いずれも街中は非常に活気があり、インドや中国と見間違えるかのごとく、街中の至るところが工事中になっています。
古い市街が取り壊されてどんどん高層ビルに変わり、道路も至るところで再開発が行われています。

日本ではほとんど報道されていませんが、明らかに従来の

・ボストンやニューヨークを中心とする東海岸
・シリコンバレーを中心とする西海岸

に加えて、

・ダラス・フォートワースを中心とする中西部・テキサス

という第三極が生成されています。
しかも、シリコンバレーはソフトウェア産業が中心であるのに対して、中西部・テキサスの場合はテキサス大学からの優秀な頭脳に加えて、メキシコからのヒスパニック系移民など、安価な労働力の確保も容易です。
従ってシリコンバレーの様なソフトウェア産業だけでなく、加工や組立を伴うハードウェア産業を行う上でも有望なエリアなのです。

もともとテキサス州は、NASAの主要拠点のあるヒューストンがあること、また石油産業やシェールガス産業といったエネルギー産業が集積していることに加え、世界的な半導体大手企業であるテキサス・インスツルメンツ社が拠点を置くこともあって、一定以上の優秀な人材が集まり、学術インフラとしての供給源があることでも知られていました。

さらにテキサス州に拠点があれば、北米はもとより南米・メキシコにもアプローチが容易であることから、これからさらに日本企業の現地進出も増えるでしょうし、発展を遂げるでしょう。
実際、テキサス州の主要都市は、移民が流入していることもあり人口が増加して経済発展を遂げています。

日本では考えられない規模のオースティン市・テスラのギガ・ファクトリー

今回、視察の中でオースティン市に建設中の、テスラ・ギガファクトリーをバス車中から視察しました。
驚くべきはその工場の大きさです。
時速100kmを超えるスピードでフリーウェイを移動するバスの車中から、建設中のテスラ・ギガファクトリーは1分近く、バス車中からずっと建物が途切れることなく続いていました。

日本であれば土地スペースの関係から、ラインを曲げたり折り返したりするところを、テスラ・ギガファクトリーでは直線でラインを組んでいるのでしょう。

ちなみに建設中のテスラ・ギガファクトリーは一切内部が公開されておらず、そもそもテスラ・米国本社の広報部門そのものが現在では無くなっており、工場内部についてはほぼ開示が行われていません。

トヨタ自動車も含め、フォードなど大半の完成車メーカーが「EVはつくればつくるほど赤字」といわれている状態が続く中、テスラ社では
・100点を超える部品を1点にしてしまうギガ・キャスティング
・総長3km近かったワイヤーハーネスを、100mほどにまで短縮する新たな配線技術
・従来の常識では考えられない超巨大工場
といった、まさに「常識外」の新技術でトヨタを凌駕する様な存在になりかねない、と、オースティンの同社新工場の建設風景を見ながら感じました。

DXが急激に進むアメリカと、大きく二極化する企業業績

今回、米国視察を通じて強く感じたのは米国におけるDXの進展です。

例えば今回、現地空港でのパスポートチェックはありませんでした。
空港に到着した時点で、恐らく顔認証で本人情報とパスポート情報が整合され、入国審査はパスポートの提示無しで行われました。

またウォルマートの全ての店舗では、事前モバイルオーダーの「カーブサイド・ピックアップ」が導入されていました。これは事前に商品の注文と決裁をモバイルで終わらせておくと、店舗では所定の駐車場に車を入れてトランクを開けて待っているだけで、ウォルマートの店員が荷物を持ってきてくれてトランクにまでつみこんでくれるサービスです。
ウォルマートはアマゾンという強敵がいる中、独自路線で業績を上げ続け、世界最大の小売業の地位をずっと維持しています。

さらに今回視察したテキサス州発祥のチック・フィレというチキンサンドイッチチェーンは、DXの活用によりマクドナルドの店舗の2倍以上の生産性を誇っていました。
ファーストフードの店舗の場合、通常の店舗であれば年商1億円を超えたら成功店といわれる中、マクドナルドの平均店舗年商は3億円です。マクドナルドが外食産業の中でもモデル企業といわれるゆえんです。
ところがチック・フィレは何と平均店舗年商6億円という驚くべき生産性を実現しています
しかもチック・フィレは、創業者の強い意向で日曜日は全店舗・全従業員が休みです。なぜなら同社では「日曜日は家族と過ごす日」と決めているからです。
日曜日が休みにも関わらず、同社ではDXを駆使して生産性を上げ、日曜日休まず働いている他社(他店)の5~6倍もの収益を上げているのです。

またオースティン市内では、人が伴わない完全無人の宅配ロボットが街中でも散見されました。チック・フィレも、こうした宅配ロボットを採用していることでも知られています。

日曜日はしっかり休んでいるにも関わらず、しっかりと儲けることができている会社。
かたや日曜日も休みなく働いているにも関わらず、業績不振の会社。

米国で今、起きていることは5~10年後には日本にも入ってくる、といいます。
DXを駆使できているか、どうかで企業業績が大きく二極化する、遠からず日本もその様な時代を迎えるのではないでしょうか。今回の米国視察で強く感じました。

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