JIMTOF2022にみる、コロナで変化した展示会の役割
4年ぶりのリアル開催となったJIMTOF(日本国際工作機械見本市)2022が閉幕しました。
今回2022年の来場者数は11万4158人だったそうで、コロナ前の直近に開催された2018年が15万3103人で、前回と比較すると来場者は25%マイナス、となります。
事実上、アフターコロナとなった現在、それでも新幹線の乗車数がコロナ前の7~8割だそうですから、アフターコロナにおけるリアルイベントは、今後2~3割マイナスを想定して進める必要があります。
つまりビフォーコロナのリアル施策だけでなく、アフターコロナはあわせてデジタル施策の実施が求められる、ということです。
ちなみに私は10月に幕張メッセで開催された世界的なITの展示会であるシーテック2022に足を運びました。メタバースやクラウドコンピューティングの最新技術が展示されており、メディアでも広く取り上げられた展示会でしたが、実際には会場はやや閑散としており、来場者数はコロナ前の約6割とのことでした。
シーテックで展示されている商品の大半はソフトウェアですから、わざわざブースに足を運ばなくても、手元のパソコンで検索すればいくらでも情報がでてきます。その結果が約6割の来場者数。
JIMTOFの場合は工作機械というリアルな展示物を見に行く企画なので、ネット上の情報よりも展示会の方がはるかに多くの情報を質的に得られることができます。それでも来場者は8割弱。
これはコロナ前から明確になっていたことではありますが、インターネットがインフラとなった今日、いまや展示会場で新たなサプライヤーを現地で探す、といった行動を取るバイヤーは皆無といって良いでしょう。
バイヤーは展示会に行く前に、展示会サイトに掲載されている出展企業をチェックして、さらにその出展企業のWebサイトをチェックした上で、「どの会社のブースに何時ごろに行くか」まで予定を立てた上で展示会場に来場します。そして、自らがたてた予定通りに展示会のブースをまわり、帰っていきます。
従って、従来の様な
・展示会場内での大きなブース
・展示会場内での目立った出展物
といったコストのかかる行為がほとんど無意味であり、展示会に出展するのは3m×3mといった最低限のブースでよいので、それよりも事前の情報発信の方が大切、という時代に完全になったといえます。
逆に言えば、展示会というのは従来の「見込み客を集める場」というよりも、「従来からの見込客とリアル接点を持つための営業の場」として捉えなおすべきでしょう、
この様に、コロナ前から何となく起きていたことが、コロナ禍によって決定的になった、という事象が様々なシーンで見受けられる様になっています。
JIMTOF2022にみる、現在の工作機械技術におけるトレンド
さてJIMTOF2022に話を戻すと、私の多くのコンサルティング先、部品加工業の経営者にはじまり、その道のプロともいえる機械商社の経営者の方など、多くの業界のプロがJIMTOF2022を視察しました。
そうした生産財業界のプロの目からみたJIMTOF2022のポイントは次の通りです。
(1)ダウンサイジング
複数の私のコンサルティグ先の社長がいわれていたのが、
「ブラザー工業のタッピングセンタは良い」
とのコメントでした。
「あれがあれば、40番のマシニングセンタはいらないのでは?」あるいは
「ブラザー工業の5軸タッピングセンタがあれば、相当の仕事が行えるのでは?」
といった話をされていました。
タッピングセンタというのは、いわゆる主軸テーパー30番の小型マシニングセンタのことです。
ちなみに、一般的な工作機械メーカーは、タッピングセンタ(小型マシニングセンタ)を手掛けようと思っても、手掛けることは困難です。
なぜならタッピングセンタはどうしても性質上、価格を安くせざるをえず、ファナックにしてもブラザーにしても30番のタッピングセンタは600~800万円前後の価格設定となっています。
これに対して、40番の一般的なマシニングセンタの価格帯は1300~1500万円。
タッピングセンタはマシニングセンタの約半値です。
ここで工作機械の原価に占める割合が最も高いのは、制御装置回り(制御装置・ACサーボモーター他)であり、要はファナックの費用です。工作機械原価の25%がファナックの制御装置回り、ともいわれています。
そうすると、タッピングセンタだと全体の費用が安いので、原価に占めるファナック比率が上がるため、工作機械メーカーはタッピングセンタをつくっても儲からない、という現象が起きます。
つまりタッピングセンタをつくろうとすると、制御装置を内製していなければつくれない、ということになります。実際、タッピングセンタ(小型マシニングセンタ)のメーカーであるファナックもブラザー工業も、両社とも制御装置を内製しています。
一見、自社製の制御装置を打ち出している様にみえても、実は中身はメルダス(三菱電機)だったり、パナソニックだったりするケースが大半で、本当の意味で制御装置を内製できるのはファナックとブラザー工業だけです。ですから、この2社しかタッピングセンタをつくっていないのです。
逆にいえば、マシニングセンタで生計をたてている工作機械メーカーからすると、タッピングセンタが横行するのは自社の死活問題になります。
ここ30年ほど、工作機械技術でいえば、メカ系についてはほとんど変化がありませんが、電気系については著しく技術革新がありました。その結果、「ダウンサイジング」「複合化」といった技術が実現されているといえます。
(2)複合化
特に機械加工業で利益をだそうとすると、いかに複合機を活用するか、ということがポイントになります。
複合機の代表格はヤマザキマザックのインテグレックスで、いわゆる旋盤機能を中心として、そこにミーリング(フライス)機能が付加された機械です。
あるいは前述のブラザー工業の5軸タッピングセンタの様に、マシニングセンタ機能に対して、付加軸が追加された機械も挙げられます。
見積り上は、
・第1工程:旋盤
・第2工程:フライス加工1
・第3工程:フライス加工2
と、例えば3工程だった加工が、複合機を活用することによって1工程に短縮することが可能になります。
これを「工程短縮」といいます。
つまり見積り上は“3工程での価格提示”を行うわけですが、実際には複合機で1工程で加工が行えているので、その分、コストダウンになり自社の利益に貢献する、ということです。
(3)自動化
さらに部品加工業で儲けるセオリーのど真ん中は、自動化です。
つまり人がついていなくても、機械だけで仕事をしてくれる「多台持ち」はもちろん、夜間の人がいない時でも機械が稼働して生産を続けてくれる「夜間無人運転」が代表的なコンセプトであるといえます。
最近、私のあるコンサルティング先の機械加工業(従業員30名)は、ここ数年で利益率が2倍以上になり、営業利益率で10%をはるかに超えています。同社の場合も「複合化」「自動化」に力をいれており、先代の時に主流だった汎用機をできるだけ外にだし、社内では複合機、あるいは自動化対応の機械を主体に設備投資を進めてきました。
また、今回、船井総合研究所主催の板金加工業経営セミナーで特別ゲスト講師をつとめていただく、群馬県伊勢崎市に本社工場をおく島田工業様も、ここ数年で利益率が倍増しているそうです。同社の場合もレーザータレパンという「複合機」に加えて、ストッカー付き仕様といった「自動化」に注力しており、そこにマーケティング施策の好循環が合わさって、大きな成果を上げているといえます。
今回のJIMTOF2022でも、工作機械だけの出展ではなく、ロボットI/Fを全面に出し、ロボット+ストッカーをセットに出展しているブースも目立っており、これも自動化対応を訴求したコンセプトであるといえます。
そして、今、業績を大きく伸ばす部品加工業の共通点
先に述べた
1)ダウンサイジング(=工法転換)
2)複合化
3)自動化
といったキーワード以外に、今、業績を大きく伸ばす部品加工業の共通点とは、
・受注する仕事を選別している
と、いうことです。
例えば私のコンサルティング先で、従業員35名のプレス加工業があります。
この会社はいわゆる二次下請けであるにも関わらず、この人数で年商10億円近くをつけ、かつ営業利益率は20%近くでています。
先日、この会社に月額1000万円を超える可能性のある案件が持ち込まれましたが、この会社の社長はその仕事を断りました。理由は、「どこの会社でもできる仕事」だったから、だといいます。
プレス加工業の場合は、仕事をいちど受けると、長い期間そのプレス加工機を占有することになります。従って「どこの会社でもできる仕事」を安易に受けてしまって、その仕事に依存する構造になってから“コストダウン要請”をされると、値下げに応じざるを得なくなります。
そもそも「どこの会社でもできる仕事」を受けてしまうと、値下げに応じなかった結果、その仕事をひきあげられてしまうと経営の根幹を揺るがしかねません。
また、別の私のコンサルティング先の大型製缶を手掛けている会社の場合は、2m×4mを下回る製缶の仕事は原則請けない様にしています。なぜならこのサイズを超えるワークを加工できる大型工作機械を所有している製缶業者が少ないこと、また、このサイズを超えるワークをのせられる“定盤”そのものを持っていない製缶業者が多いからです。
この様に、今、業績を大きく伸ばしている部品加工業、言い換えれば「受注する仕事を選別」することができている部品加工業には次の2つの共通点があります。
それは、
共通点1:新規案件が自動的に入ってくる仕組みをつくっている
共通点2:自社の真の強みを理解している
と、いうことです。
まず「受注する仕事を選別」するためには、特定顧客に依存していては、それはできません。
デジタルマーケティング(営業DX)を駆使するなどして、ある一定の新規有望商談が集まってくるビジネスモデルを構築する必要があります。
これが前述の共通点1です。
さらに自社の真の強みを理解していなければ、どんな仕事を選別すれば良いのかがそもそもわかりません。
これが前述の共通点2です。
そして今回、下記の通り、板金加工業向け、また機械加工業向けに、経営セミナーを企画いたしました。
こうした経営セミナーにご参加いただくと、上記「共通点1」については容易にご理解いただけると思います。仕事の内容は異なったとしても、おおよそどこの会社もデジタルマーケティング(営業DX)の進め方は大きく変わらないからです。
しかし共通点2で述べた“自社の真の強み”という話になると、これは会社によって全く異なります。
ですが、下記、板金加工業向け、また機械加工業向けの経営セミナーにご参加いただくと、セミナーご参加者の皆様については「無料」での個別経営相談もございます。ZOOM等での個別経営相談により、あらためて自社の真の強みについて、ご理解いただくことも可能です。
本経営セミナーの詳細は下記の通りです。ぜひご参加いただければと思います。
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