「値上げ」を実行するための5つのポイント
長らく続いたデフレが終わり、今年からは本格的に「インフレ」いわば「価格上昇」の時代に突入しました。
現在の様な時代になると「適正な値上げができるか、できないか」が、業績面における大きな分かれ目にもなっているといえます。
実際、今、業績が好調な会社の共通点は「インフレによる仕入コスト上昇の価格転嫁」がしっかりと行えているか、否かであり、まさに現在の時代は前述の通り「値上げができるか、できないか」で業績が決まるといっても過言では無いでしょう。
こうした時代の中で、示唆が得られる1冊が小坂裕司氏の新著「「価格上昇」時代のマーケティング~なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか~」(PHP新書)です。
同書によると「値上げ」を行うポイントは大きく次の5つです。
<値上げを行うポイント1>価格を語る前に価値を語る
ある惣菜店が、看板商品として「ビーフシチュー 800円」として陳列したところ、価格が高いからかあまり売れなかったそうです。そこでPOPを「大きなお肉を3日がかりでじっくりと煮込み、余分な脂を取り除いた当店のお奨めのビーフシチュー 800円」と、したところ同じ商品であるにも関わらず売上が2倍になったそうです。
<値上げを行うポイント2>内的参照価格の対象を変える
“内的参照価格”とは、お客がその商品に抱いている相場(=適正と考えている価格)のことです。
ある和菓子屋では、従来1つ180円で売っていたどら焼きを、1つ4980円で売り出したところヒット商品になったそうです。その4980円のどらやきは重さ1.8kg。「自宅で食べる茶菓子」から「驚きを生む贈答用のお菓子」に内的参照価格を変えたことがポイントです。
前回のレポートでお伝えした「パン屋さんの生食パン(=高価な贈答用パン)」と同じです。
<値上げを行うポイント3>パッケージ化を図る
ある老舗おでん屋さんは、自店の会員向けに「5万円コース」を設定してるのだそうです。同店オリジナルの熱燗セット(おちょうし・おちょこ・加熱用器材がセット)や、オリジナルTシャツがついてきます。
本業のしばりにとらわれず、前後の関連商品を売るのがポイント。
<値上げを行うポイント4>マスタービジネス化を図る
マスターとは「師匠」のこと。すなわち「お客様がまだ知らない価値を教えることで対価を取る」ことを指します。例えばある過疎の町の繁盛スーパーはワイン売り場が異常に充実している。過疎の町であるが、なぜかドンペリも置いている。店主が長年かけてワインの価値を周辺の人に伝え、顧客を育てていった結果である。
<値上げを行うポイント5>繰り返し価値を伝えて顧客を育てる
商品を育てるのと同様、顧客に対しても自店の価値を繰り返し伝えて「顧客を育てる(=ファン化する)」ことが必要。顧客を育てるには時間がかかる。その一方、人の脳には「可塑性」とよばれる特徴があり、一度価値を知ってしまうと、元には戻れないといいます。
例えば前述の過疎の町のスーパーの話でいくと、最初はワインに関心すらなかったとしても、いちどワインの味わい、楽しさを知ってしまったら、知らなかった自分に戻ることはできない。また店に通い、さらに新しい世界を知り、「ワイン好き」な自分が強化され、どんどん「価値のわかる客」になっていく。と、いいます。
同書によると、これはBtoCビジネス(=一般消費者相手のビジネス)だけの話ではなく、BtoBビジネス(=法人相手のビジネス)であっても適用される、といいます。
私もその通りだと思います。
なぜ過疎地のスーパーなのに好業績を維持できるのか?
私は20年近く、受託型製造業(=部品加工業・セットメーカー)や生産財商社(=機械工具商社等)の業績向上のコンサルティングを行ってきていますが、BtoCビジネスもBtoBビジネスも商売の根本という意味では多くの共通点があります。
例えば前述の過疎地のスーパーの店主は「1円、2円の安さを求めて買い物をしにくる人はお客様として対象にしていない」と言い切ります。
要は、
a)良いものを、良いものとして捉えてくれる価値観を持っているお客
b)そもそも上記a)の様な価値観がもてるだけの裕福なお客
にターゲットを絞っているわけです。
これは私たちの様なBtoBビジネスでも同じことです。
例えばつい先日、2年ほど前に経営相談に来られた受託型製造業(=部品加工業)の社長様が、「やはりコンサルティングを受けたいので、再度提案してほしい」とご連絡をいただきました。
2年ほど前にその会社から経営相談を受けた際、私はその会社の強みの1つは「設計段階からのVA・VE提案能力」「一貫対応能力」だとお伝えし、VA・VE情報を訴求するソリューションサイトの立上げと、継続的に技術情報を発信するためのマーケティング・オートメーションの導入をご提案しました。
社長ご自身は導入に積極的だったものの、同社の営業部長が「そんなことで業績が上がるわけがない」と反対、現在に至っていました。
ところが、その営業部長は最近、
「自社は価格競争力がなく、見積り段階で競合他社に負けている」
「なので受注が思った様に取れない」
「社内のコストを見直してほしい」
と、言いだしているのだそうです。しかし社長の目からみると、どうみても既存顧客は自社の本当の価値を評価してくれている様に感じられない。もっというと成長産業とおぼしき業界の新規顧客も増えていない。と、いうことで、このままでは事業の先行きが不安なので、自ら陣頭指揮をとってマーケティングを始めることを決意した、のだそうです。
先ほどの過疎地のスーパーの店主のコメント、
a)良いものを、良いものとして捉えてくれる価値観を持っているお客
b)そもそも上記a)の様な価値観がもてるだけの裕福なお客
をターゲットにしなければならない、というのは繰り返しになりますが我々の業界(=生産財業界)においても全く同じことです。
まず、価格に厳しいお客様というのは、得てしてそのお客様ご自身が儲かっていないケースが多いです。
あるいは川下部門を担当しており、仕入やサプライヤーの決定権において主導権を取れていない部署・部門の担当者であるケースが多いです。
あらためて現在の様な「インフレ時代」「価格上昇時代」になると、本当に自社の価値を認めてくれる適正なお客様とお付き合いすることが、今まで以上に求められるといえます。
そして、前述の様な
- 自社の価値を認めてくれるお客様を増やす
- 伸びている成長産業からのお客様を増やす
- 設計・開発部門(生産技術部門)など川上部門キーマンのお客様を増やす
といった取り組みが「営業DX」の導入です。
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