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中小製造業・生産財商社のための業績を上げる方程式

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大手でも二極化が進む企業業績

先日の日経新聞に、来年2023年のトヨタ自動車の業績予想として、最終利益を従来見通しから1000億円増やして、2兆3600億円にするとの発表が掲載されていました。
過去最高の営業利益にはとどかないものの、半導体不足による減産や資材コスト高の影響を受けながら2兆円を超える利益を確定させているあたりは、企業努力に加えて円安効果が追い風とのことです。

こうした輸出企業を中心とした業績の好調もあり、この夏の賞与(=上場会社)は10.47%増の平均85万3748円と日経新聞では報道されていました。ちなみに賞与の首位は半導体製造装置をてがけるディスコで366万円。次が同じく半導体製造装置をてがける東京エレクトロンの289万円でした。

この様にトヨタやディスコ、東京エレクトロンといった円安が追い風になる輸出企業が好業績をだしている一方、同じトヨタグループでも部品メーカー(ティア1)の主要8社は、この第一四半期は2社が赤字、5社が減益という散々な業績となっています。
完成車メーカーはコスト高を価格に転嫁できますが、部品メーカーはそれが思う様にできない。あるいは完成車メーカーは市場の情報をいちはやく自社の生産体制に反映できますが、親会社の意向を受ける部品メーカーは打つ手が遅れがちになる、といったことが業績の差となっている様です。

今年の設備投資は16%の増加:過去最高の増加率

実際、特に東海エリアにおいては、自動車の減産の影響が大きくでています。自動車産業に直接関わっている会社だけでなく、間接的に関わっている会社にも影響がでてきています。
しかし前述の通り、同じ自動車産業であったとしても企業間で業績の差がついており、異なる業界でも同じ傾向がみられます

財務省と内閣府が6月に発表した法人企業景気予測調査によると、今年度の設備投資は昨年と比べて16%増加するとのことです。これは調査が始まった2004年以降では増加率が最高の水準だそうで、自動車や関連部品メーカーでも、電気自動車向けの投資などで29.8%増えるそうで、コロナ禍で押さえられていた設備投資の動きが、ここにきて出てきていることがその要因とのことです。

成功事例:コロナ禍で前年対比7割減からの逆転劇

繰り返しになりますが、同じ業界であっても「業績が良い会社」「悪い会社」との差が激しい。
さらに業界が異なると、業界によってその差はさらに開くものと思います。

例えば航空機業界。

かつては成長産業として注目を集めましたが、コロナ禍で航空機需要そのものが消滅し、業界としてはかなり厳しい状態におかれました。特にジェットエンジンのタービンブレード等は定期的な交換部品(消耗品)であり、エンジンのメンテナンスビジネスは非常に手堅いビジネスと見られていましたが、こうした需要そのものが一夜にして無くなってしまったのです。

神戸市に本社をおく生産財商社 吉岡興業株式会社様も、コロナ前のメイン取引先はこうした航空機産業だったそうです。同社の売上の4~6割を切削工具が占め、航空機業界向けの特注工具が大きな割合を占めていたそうです。
ところがコロナ禍の結果、従来主力であった航空機関連の顧客への売上は、何と前年対比で7割も激減してしまったのです。

これは、同社にとっても大ピンチでした。

そこで吉岡興業様はこの難局を乗り越えるためにも、従来から取組んできていた営業DXを加速させる決断をします。その結果、既存顧客からの新たな案件の発掘に加え、新規顧客からの1億円を超える新たな受注の創出に成功し、同社はこの難局を乗り切ることに成功します

同社が行った営業DXについて、同社の営業部長様のインタビューと、
同社のトップセールスへのインタビュー動画が下記にあります。
こちらの動画から、同社の取組みをご覧いただくことができます。

<動画A>
吉岡興業様の営業部長が語る、営業DXへの取組み(動画2分45秒)

<動画B>
吉岡興業様のトップセールスが語る、営業DXへの取組み(動画5分23秒)

営業DXで「提案営業」をさらに強化!“0番情報”の活用が最大のポイント

特に、上記の動画Bをご覧いただくと、営業DXの効果がよくわかると思います。

従来から営業活動の基本は「提案営業」です。
「提案営業」とは、顧客のニーズに対して仮説を持ち、顧客の問題解決になる可能性のある商材について情報発信を行います。ここで、この情報発信の目的は顧客ニーズの把握です。
そして潜在的な顧客ニーズを顕在化させることができれば、価格競争の回避がしやすくなります。
これが「提案営業」の原理です。

営業DXでは、この情報発信をメールマガジンで活用して行います。
なぜなら法人営業の世界において、必ず誰もがメールアドレスは持っており、必ず毎日数回はメールを開いてメールチェックを行っています。法人営業において有効な顧客接点の1つがメールなのです。

メールマガジンからは自社のWebサイトにリンクをはり、自社のWebサイト内には幅広く商品や事例を掲載しています。そしてZoho(ゾーホー)というマーケティング・オートメーションを導入することにより、どの客様がどのメールマガジンを開封し、その後自社Webサイトのどのページをどれだけ閲覧したか、といったことが手に取る様にわかります

上記<動画B>の中で、「0番情報作戦」というコメントがありましたが、吉岡興業様ではお客様から獲得できたニーズ情報のことを「1番情報」と呼んでいます。
これに対して「0番情報」とは、お客様からニーズを聞く前に、Webサイトの閲覧履歴等で獲得できた顧客ニーズのことを、こう呼んでいるのです。
同社の会社案内サイト(https://www.yoshioka-kogyo.co.jp/)の一番下をみるとわかりますが、同社は9つものソリューションサイトを運営しています。
9つものソリューションサイトがあれば、顧客ニーズのほぼ全てに対応できている、ともいえます。

コロナ前であれば紙あるいはチラシで行っていた情報発信を、アフターコロナの今の時代はそれをデジタルに蓄積していくことが大きなポイントだと思います。

同社の場合は「コロナによる主要取引先の売上の急減」という緊急事態の中で、営業DXを急加速して乗り切ったという素晴らしい成功事例だと思います。

そして冒頭にも述べた通り、今は同じ業種・業界であっても大きく業績に格差ができている時代です。
その中で営業活動の生産性を上げて、本当の意味で顧客ニーズを収集するという観点で、また、根本的には不透明で先々を見通すことが難しい中、余裕がある今のうちに営業DXへの取組みを検討するべきではないでしょうか。

ぜひ前述の動画につきまして、経営者の方はもちろんですが営業幹部の方もご一緒に視聴されることをお奨めしたいと思います。

また、船井総合研究所ものづくり支援室では、時流に適した最新情報を中堅・中小製造業の経営者様向けに発信するためにオンラインセミナーを開催しております。

是非、ご参加をご検討いただければと思います。

最悪の経済環境「スタグフレーション」に、いかに備えるのか?

さて、前回のレポートでもお伝えした次の2つの動画、

<動画A>
吉岡興業様の営業部長が語る、営業DXへの取組み(動画2分45秒)

<動画B>
吉岡興業様のトップセールスが語る、営業DXへの取組み(動画5分23秒)

この動画には、これから全ての会社が備えておかなければならない、「最悪の経済環境」ともいわれる“スタグフレーション対策”へのヒントがあります。

スタグフレーションとは何か?

スタグフレーションとは「景気後退」と「物価高(インフレ)」が同時に起きる経済現象のことです。
ではなぜ、スタグフレーションが「最悪の経済環境」といわれているかというと、「景気後退」で売上が下がる中で、普通の不景気であれば物価も下がる(=モノが売れないので)ことでコストも多少は下がりますが、
スタグフレーションは前述の通り「景気後退」の中で「物価高(インフレ)」が発生しますから、売上が下がるだけでなく、コストも上昇して利益を急激に圧迫します。
繰り返しになりますが、普通は景気が後退すると物価は下がります。ところが現在の様に「半導体不足」「コロナによるロックダウン」「ウクライナ紛争など地政学的要因」等の国際市況の影響で物価高(インフレ)が発生すると、前述の様なスタグフレーションが引き起こされます。

その結果、通常の不景気と比較にならないレベルで経営環境が悪化します。

その点、前回のレポートでも述べましたがトヨタ自動車の様に、これだけ半導体不足で減産を重ねていても、円安を武器に海外での売上を伸ばして、コスト高を製品価格に転嫁できる優良完成車メーカーであれば、来年2023年の営業利益も2兆円を超える利益を想定しています。ところが同じトヨタグループでも、この第1四半期で主要部品メーカー8社のうち2社は赤字、5社は減収という同じグループ内でもこれだけの差がつくわけです。

では、色々な意味で経営資源が限られている中小企業はどの様な手を打つべきなのでしょうか?

私はデジタル(DX)を駆使して、現在の御社が有するリソース(経営資源)を最大化することによって、この難局を乗り切ることを提案したいと思います。

具体的に、次に述べる「業績アップの方程式」の各要素を引き上げていく取組みを行うべきです。

業績アップの方程式:まずは「平均単価」をいかに上げるかを考えよう!

業績アップの方程式とは次の公式です。

売上 = 案件数 × 受注率 × 平均単価

景気が悪くなると「案件数(商談数)」が減ります。
さらに競争環境が厳しくなり、あるいは客先の稟議も通りにくくなり「受注率」が下がります。
(「受注率」とは、提出した見積り件数を、受注できた見積り件数で割り算した数値です)

この中で、最も経営(売上)にインパクトを与えることができるのは「平均単価」です。例えば射出成型を手掛けている会社であれば、部品だけでなく金型込みで仕事を受けると平均単価は上がります。機械加工を手掛けている会社であれば、フライス加工や旋盤加工でおわる仕事ではなく、熱処理+研削加工までの一貫対応の仕事を請けるべきですし、機械工具商社であれば「工事」あるいは「工作機械(中古含む)」といった受注を狙うべきです。

私は、不況期というのは意識して自社の平均単価を上げる動きを取るべきだと思っています。
あるいは意識して利益率の高い仕事を狙っていくべきだと思っています。

まったく別の業界になりますが、「街のパン屋が生食パンを扱う」というのは、前述の「平均単価」を上げる取組みになります。街のパン屋さんが売っている普通のパンの平均単価は100~200円といったところでしょう。ところが生食パンであれば1000円前後で売ることができます。
そして、生食パンを買うお客の用途は“手土産”です。それになりに見栄えのする(=箱が大きな)手土産を買おうとすると、2000~3000円くらいはかかります。ところが生食パンだと1000円くらい。
パンと比較すると平均単価は高いけども、手土産と比較すると安い。
これが生食パンビジネスの当たった要因の様です。

例えば機械工具商社にとっての“生食パン”は、「工場工事」です。もっと具体的にいうと、「工場工事」の中でも“営繕工事”といわれている、1~2日で終わる様な工事をターゲットにすると良いです。
通常、大手製造業には“構内外注”あるいは“出入りのお抱え工事会社”が存在します。ところがこうした工事専門の会社というのは、職人を稼働させる必要があるので2~3週間以上の工期を要する本格的な工事を欲しがっています。ところが実際によく発生するのは、前述の工期1~2日の簡易な営繕工事。
そして、こうした専門の工事会社というのは工期が1~2日の簡単な営繕工事になると、意外と高い見積りを出していたりします。お客の側も今までは何となくそれがわかっていたけども、養生などにも慣れた出入りの会社(あるいは構内外注)を使っていた方が楽なので既存の業者を使ってきましたが、コスト意識が厳しくなっている昨今、営繕工事でも他の会社からも見積りを取るケースが増えています。
その結果、外注を活用する機械工具商社の見積りの方が安い、というケースが多々発生するわけです。

部品加工のケースでも同じです。
例えば私の関係先で、1~2mを超える様な長尺部品の加工に強みを有する機械加工の会社があります。同社の場合はロングストロークのフライス盤で加工を行った後、手作業で歪み取りを行うことによって、2m前後の長尺プレ―トでも、平面度2/100くらいの高い幾何公差で加工を行うことができます。
同業他社の場合は、チャージの高い門型マシニングセンタで加工を行った上で、やはりチャージの高い平面研磨機で精度を出そうとするため、同じ平面度を出そうとするとおのずとコストが上がります。

また私の関係先には、なんと前年対比300%アップの射出成型をてがける加工会社もあります。
同社の場合は射出成型部品をただ売るだけではなく、「生産技術代行」というコンセプトで、製品設計から金型製作まで一貫してサポートを行っています。顧客代行を行っているため価格競争になりにくく、金型から一括して受注ができるため平均単価も上がります。

つまり「自社にとっての“生食パン”は何なのか?」を“発見”することが、不況対策の第一歩だと私は考えます。そして“自社のとっての生食パン”を発見するためには、「自社の真の強み」を見つけて深掘りすることが最も大切であるとも考えています。

業績アップの方程式:デジタル(DX)を駆使して業績を上げよう!

再び、先ほどの「業績アップの方程式」を以下に示します。

売上 = 案件数 × 受注率 × 平均単価

前述の考え方で、何を自社の“生食パン”として「平均単価」を上げるか決めたら、それをテーマとしてマーケティング・オートメーションから、メールマガジンを定期的に配信します。
それが、前回のレポートでもご紹介した下記動画での取組みです。

<動画B>
吉岡興業様のトップセールスが語る、営業DXへの取組み(動画5分23秒)

例えば仮に、ある機械工具商社が従来の一般機械工具に加えて、「工事」を客先にPRしたいとします。そこでいかに営業担当者が「工事なら我が社に任せてください!」とPRしても、お客様は「おたくは工事専門じゃないでしょ」と、受け入れてくれません。
ところがメールマガジンで繰り返し工事の事例を配信されると、そのうちお客様も「なるほど、これだけ工事の実績があるなら、今度計画している営繕工事も試しに見積りを取ってみるか」と、なります。
その結果、先ほどの方程式の中の「案件数」が増えることになります。

部品加工業にせよ、セットメーカーにせよ、機械工具商社にせよ、いわゆるBtoBビジネス(法人ビジネス)の場合は、必ずお客様がメールアドレスを持っていて、ビジネスにおける最大のコミュニケーションツールは間違いなくメールです。
特に生産技術や設計、あるいは保全など、技術的な業務を行っている人は情報取集を欠かしませんから、技術情報や事例が掲載されているメールマガジンは消去することなく、フォルダにわけて保存していたりするものです。仮に開封しなかったとしても、それはタイミングが合わなかっただけで、いつか時間がある時に読もうと保存をしているものなのです。

例えば生産技術のエンジニアが、「安全柵の移設をしたいけど、どこに相談しようかな・・・」と思っている時に、メールマガジンで「安全柵の工事なら当社にお任せください」といったタイトルのメールマガジンがくれば、間違いなく開封することでしょうし、本文のURLもクリックすることでしょう。
あるいは安全柵の工事を検討していなくても、設備の移設を検討していたとすれば「安全柵の移設ができるってことは、設備の移設とかもできるのか?」と、メールマガジンを開封して、Webサイトの中にある他の事例を閲覧することでしょう。

マーケティング・オートメーションを導入していれば、こうしたお客様の閲覧履歴も全て把握することができます。その結果、「案件数」が増えるだけでなく、「受注率」も上がることになります。
上記の<動画B>は、そうしたことの解説です。

まずはMAを導入して、次にSFAの導入を検討しよう

結論からいえば、自社における「生食パン」を決めた上で、マーケティング・オートメーション(略称:MA)を導入することで、「案件数」を増やし、「受注率」を高めることができます。
また「生食パン」は1つだけではなく、数が多ければ多いほど、不況対策になり得ると思います。

同じく、「受注率」を見える化して、高めていくことを目的としたデジタルツールとしてSFA(セールス・フォース・オートメーション)があります。
私の経験でいえば、まずMAを導入して営業面での効果が明確になった上で、次のステップとしてSFAの導入を検討するとスムーズに進む様です。

ぜひ来るべき不況対策として、自社の「生食パン」を見究めた上で、「業績アップの方程式」の“案件数”と“受注率”を高めるDXを進めていただきたいと思います。

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