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SDGsなどの世界的潮流の中で中堅・中小製造業が抑えるべき「経営の鉄則」とは

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生産財バブルが始まった?

先日、私の関係先の某部品加工会社が、取引先の某大手工作機械の調達部門から呼び出されました。
なんでも、「想定を超える」受注が入っているそうで、この秋以降の生産高が2倍近くになるそうです。納期がタイトになるので、納期遅延を起こしそうな場合は1分1秒でも早く連絡をしてほしい、という調達部門からの要請でした。

実際、工作機械受注は今年1~6月の累計で前年対比170%を超えており、既にコロナ前の水準を超えています。ここで、ポイントは、

・今までの工作機械受注は中国向けが大半であった
・ところが、この秋以降の受注見込みは従来の中国に加えて、米国・欧州からの受注がのってくる

と、いうことです。

 

 

動き始めたトヨタグループの設備投資

また、前回のレポートではトヨタグループの設備投資がゴールデンウィーク明けから停滞している、という話題をだしましたが、この7月前後から活発な引合いが入ってくる様になりました。

具体的に、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に伴う設備更新であり、愛知・九州エリアや北米での設備投資がきかれます。

TNGAは2015年にスタートしていますが、現時点で当初計画の半分程度しか進んでいないとの話もあります。例えば車体をより軽量化して剛性を高める取組みとして、超ハイテン部品を短時間でつくる「ホットスタンプ」技術や、新型エンジン、新型トランスミッション、新型ハイブリッドシステムを搭載するという取組みですが、こうした新たな部品・ユニットに伴う設備投資がTNGAプロジェクトにより発生しています。

我々、生産財業界というのは基本的に工作機械受注と景況が連動します。その様に考えると、このTNGAの話もそうですが前述の工作機械の受注見通しからすると、いわゆる「バブル」的な様相を呈してきているとの見方をすることができます。

 

 

コロナ・パンデミックで巨額の富を築いた人物の予想

過去にもご紹介した多くの関連書籍で、「コロナ後に大型バブルが来る」との分析がでていますが、実際、その様になってきている様に感じます。

例えば「物言う株主」で知られる米国の投資ファンド、パーシング・スクエア創業者のビル・アックマン氏は「コロナ後に巨大バブルが到来する」と分析しています。
ビル・アックマン氏はコロナ初期に、「デフォルトする企業が増える」と分析してCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれるデリバティブに投資し、そこから26億ドル(約2700億円)もの巨額の利益を上げた人物です。

実際、既に米国では航空機のパイロットが足りない、あるいは外食産業の従業員が全く足りない、といったレベルのバブルになりつつあり、アックマン氏の予想を裏付ける結果になりつつあります。

 

 

その“設備投資”は本物か?世界的潮流の中で発生している“ひずみ”バブル

しかし、こうした時期だからこそ経営者はアンテナを高くして本質を見極める必要があります。

例えば、ある部品加工の会社が十数億円を超える設備投資を行う予定だ、と聞きました。その会社が何を作っている会社かといえば発電タービンの部品だといいます。

この分野は、
・GE
・シーメンス
・三菱日立パワーシステム
の3社が世界3強といわれていますが、ESGという世界的潮流の中で、どちらかといえばこれから市場が縮小していく分野とされています。

実際、GEはこの分野で当初の目論見が外れて大赤字。シーメンスは火力事業そのものを別会社として切り離し、本体の事業からは分離しています。

あくまでも私の推察にすぎませんが、世界的にはESGの潮流の中でグローバルプレイヤーが発電タービンの分野に見切りをつけて「手を引く」中で、真面目な日本企業は「お客様の要求にお応えして受注を積み増している」可能性もあります。

つまりこれは、“世界的潮流”の中で発生した“ひずみ”バブルと呼ぶことができるかもしれません。

 

例えば世界の流れは内燃機関からEVです。

「すぐにはEVにはならない」
「膨大なインフラ投資が必要で、先進国はともかく途上国には普及しない」
「そもそも、暑い夏にエアコンをつけて運転したらEVで長距離は無理」
「実際、北欧でも中国でもEVは街乗り用の小型車しか売れていない」

など、EVに対しては様々な疑念の声があります。

しかし、ここで押さえておくべきことは、

1) 欧米の本気度
2) テクノロジー進歩の未来予測の難しさ

です。

 

まず、1)についていえば、
・米国はコロナ後の公共投資で、ESG・半導体分野に約230兆円を投じる。
(うちEV普及に19兆円を投資)
・EUはコロナ復興基金で約230兆円を準備しており、うち3割を気候変動対策にあてる
(EV普及には)

これに対して日本は脱炭素に投じる資金は10年間で約2兆円、EV普及に向けた補助金も2021年度で155億円と、欧米と比較して桁違いに少ないことがわかります。

欧米は日本の10倍以上にもおよぶ公的資金をつかって、インフラそのものを刷新する計画が進んでいることは頭に入れておく必要があります。

 

そして2)についていえば、テクノロジーの世界は多くの分野で「指数関数的」な発展を遂げます。

例えば半導体の世界で有名なムーアの法則によれば、「半導体は2年間で実装密度が2倍になり、コストが1/2になる」と、いうものです。

2年間で実装密度が2倍になる、ということは2年間で性能が2倍になる、ということで、4年間で性能が4倍になり、6年間で性能が8倍になる、ということになります。

2倍・4倍・8倍・16倍・・・
と、いった様に、二乗のレベルで増えていく数字のことを「指数関数」といいます。

この、指数関数的変化は、人間の頭では直感的に捉えにくい分野とされています。

例えば手元に、ボール紙があったとします。
このボール紙を何回折ると、月まで届くか?という話があります。
ボール紙を1回折ると厚さは2倍、2回折ると厚さは4倍、3回折ると厚さは8倍、と、
ボール紙の厚さは“指数関数的”に厚くなっていきます。

人間の直感だと、「数百回は折らないと月までは届かないだろう」と考えがちですが、実際にはわずか
46回折ると、ボール紙の厚さは月まで到達するといいます。
実際には約15回くらい折ったところで物理的にボール紙を折ることはできなくなってしまいますが、前述の指数関数的変化が人間の直感に反していることから、予測が難しい、とのたとえ話です。

じっさい、コンピューターを世界に普及させたIBMですら、「パソコンは現在の性能からするとビジネスで使い物にはならない」「将来的にも数十万台しか普及しない」と市場予測を行い、パソコンへの参入を見送りました。その結果、OSの世界はマイクロソフトが一手に握り、IBMは凋落していくわけなのですが、何が言いたいのかというと、これほど“指数関数的変化”というのは未来予測が難しいのです。
現在のiPhoneの性能は、かつてのアポロ計画で使われた全てのコンピューターよりも性能が高いといいます。

この、指数関数の法則が適用される分野として、
・半導体
の性能とコストに加えて、

・太陽光パネル
・バッテリー

も、当てはまるといいます。

つまりEVの性能は、我々の直感に反して劇的に向上する可能性がある、ということは頭に入れておくべき必要があります。

 

 

今、押さえておくべき「経営の鉄則」とは?

経営の鉄則は「時流適応」です。
時流にのったビジネスを手掛けなければ、いくら苦労しても業績は向上しません。

これから伸びる、あるいは現在既に伸びている分野は次の5つのマーケットです。

1.半導体・5G・DX市場
2.CASE(次世代自動車)市場
3.自動化・省人化マーケット
4.中食・巣ごもりマーケット
5.ESG・GX(グリーン・トランス・フォーメーション:脱炭素)マーケット

自社の業績が仮に今、伸びている時、それが本当の成長市場なのか、あるいは前述の“ひずみバブル”に過ぎないのかは、見極めが必要です。

 

また、経営の2つ目の鉄則は特定業界・特定顧客に依存しない、ということです。

特に特定顧客への依存度はどんなに高くても全売上の30%まで、理想は15%まで、とされています。

 

これから特に秋以降、新しい分野に参入するチャンスが増えてくると思います。前述の、

・時流適応:成長分野からの引合い獲得

・特定顧客・特定業界への依存脱却

と、両面で経営を進めていく必要があると思います。
 
 
 
 
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