「コロナ後に生き残る会社の条件、今、社長が必ずやっておくべきこと」
先日12月18日金曜日、船井総合研究所 ものづくりGが主催する「ファクトリービジネス研究会 部品加工業/セットメーカー/生産財商社経営部会」の年次総会が開催されました。
以前のレポートでもお伝えした通り、今年の年次総会では「コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方」(東洋経済新報社)の著者であり、世界的コンサルティングファーム、ローランド・ベルガー日本法人の 元代表 遠藤功氏 による特別講演を開催しました。
そのテーマは「コロナ後に生き残る会社の条件、今、社長が必ずやっておくべきこと」。
以下にその講演の内容を私なりにまとめてみます。
<遠藤 功 先生のご講演概要>
・コロナ危機は過去の経済危機と比較にならないインパクトを与え、またそれはこれからも影響が続く。
・具体的に、まず「移動が蒸発」した。次に移動が蒸発した結果、「キャッシュが蒸発」した。
IMFの発表によると1300兆円もの所得がコロナ禍によって失われた。
・「移動の蒸発」次に「キャッシュの蒸発」そして、この次に来るのが「雇用の蒸発」である。
これから本格的な経済危機が来る。
・過去の状態には戻らない。需要が従来の70%になる7割エコノミーを前提に全てを捉えなおす必要がある。
弱肉強食の厳しい時代が来る。
・しかしチャンスもある。具体的に、多くの会社が従来の延長線上で取引を考えていない。
取引先を0ベースで見直している。新規顧客を獲得するチャンスである。
・今こそ社長は動かなければならない。じっとしていてはダメ。
・「オンライン」「リモート」「デジタル」「DX」に力を入れて活動量を増やす。生産性を上げる。
今こそ「両利きの経営」を進め、新規事業にチャレンジすべき。
・日本企業の強みは「現場力」。非凡な「現場力」こそがマネされないビジネスモデルをつくり得る。
さて、この「DX(=デジタル・トランスフォーメーション)」、私は単なる流行り言葉ではないと捉えています。
例えばかつて「インダストリー4.0」という言葉があり、製造業の世界でも大流行しました。ところが、では「インダストリー4.0の成功企業ってどこですか?」と質問されると、即答できる人は少ないでしょう。
なぜなら、実際にインダストリー4.0の成功企業(=実際に業績が上がった会社)というのはハッキリしないからです。
こういうキーワードのことを「バズ・ワード」といいます。バズ・ワードとはいわゆる実態を伴いことも多々ある“流行り言葉”のことを指します。
「AI」や「IoT」もバズ・ワードかもしれません。
これに対して、「DX」の成功企業は現時点で数多く存在します。
こうした実態を伴う地に足の着いた時流キーワードのことを「パワー・ワード」といいます。
「DX」は時流であり、誰もが取組まなければならない「パワー・ワード」であることは間違いありません。
では、「DX」で最も成功した企業はどこでしょうか?
私は米国のウォルマートだと思います。
ウォルマートは米国を代表するスーパーマーケットであり、世界一の小売業でもあります。
DXとは言い換えれば「デジタル」と「リアル」を融合させる取組みです。
ウォルマートでは早い段階からDXに取組んでいます。ウォルマートの顧客は店舗に行く前に、自宅でネットを通して買い物をすませます。そしてレジに並ぶことなく、購入した商品を店舗で受け取るのです。
ウォルマートの店舗に入ると、店舗の中央に「ピックアップタワー」と呼ばれる自動倉庫があります。
お客はピックアップタワーに、自分のスマホに送られてきたQRコードをかざすと自分の受け取る荷物が払い出されてくる、という仕組みになっているのです。
5~10分も歩けば近所にコンビニのある日本と異なり、米国では最寄りのコンビニまで車で20~30分かかるというのはザラです。従って米国では各家庭に大きな冷凍庫つきの冷蔵庫があり、1週間に一度、冷凍食品などを大量に買いだめして自宅で保管しています。こうした買い物はかなりの重労働であり、事前にネットで購入してレジで並ぶことなく荷物をピックアップできる、というのは大きな顧客価値をもたらすのです。
米国ではアマゾンが小売業を駆逐して、多くのショッピングモールやデパートが廃業や倒産に追いやられているといわれていますが、ウォルマートは10年前で約40兆円の売上高でしたが、
・2018年1月度決算 約56.5兆円
・2020年1月度決算 約59.0兆円
と、一貫して業績を伸ばしています。
DX成功企業といえば、ネットフリックスやアマゾンなど、デジタル系の新興企業が注目されます。ところがウォルマートは創業後50年以上経過する伝統的企業であると同時に、スーパーマーケットという完全な成熟産業の企業です。こうした成熟産業の企業であったとしても取組めば業績アップに成功するという「DX」は、まさにパワー・ワードであり、必ず取組むべき「時流」であると私は思うわけです。
DX取組み2年弱で新規商談創出10億円、新規受注1.2億円を実現した部品加工業(従業員130名)
これは製造業であっても同じことです。
例えば東京都に本社工場を置き、全国8拠点に工場を展開する株式会社関東製作所は、ブロー金型及び射出成形金型・部品を製造する製造業です。
同社が手掛ける製品と主な設備
同社が手掛ける様な射出成形の部品は、試作を重ねた上で「金型」というイニシャルコストのかかるプロセスをふむため、一般的に「新規開拓」が非常に難しい分野といわれています。
実際、同社でも「営業DX」に取組むまでは20年間で2~3社ほどの新規開拓しかできなかった、といいます。
ところが同社では「営業DX」に取組んだ結果、導入後わずか2年弱ほどで100社を超える企業から新規引合いの獲得に成功し、うち数十社との新規取引に成功。
なんとDX取組み2年弱で新規商談創出10億円、新規受注1.2億円を実現する、という成果につながりました。同社の「営業DX」の概要を下図に示します。
コロナ危機を乗り切る絶対条件は「社長が営業に関与する」こと!
さて、前述の遠藤功先生は「今こそ現場力を高める」と言われていますが、コロナ禍において最も注力しなければならない現場とは「営業の現場」です。
そして現在の様な非常時は、社長自らが営業現場に直接関与する必要があります。船井総合研究所の創業者である舩井幸雄は、「社長とNo2との差は、No2と新入社員の差よりも大きい」と言っています。
いかにやり手のNo2であったとしても、営業現場を社員に任せているのであれば社長は再度営業の見直しを行う必要があります。
なぜなら、今、営業現場を社員に任せていると、「コロナなので訪問するなと言われました」「不要不急の時以外は来るなと言われました」「リモート商談をしようにもお客にその環境が無いからできません」など、いわゆる“普通の対応”しかできないから間違いなく活動量が7割になって業績も7割になります。
また、前述の遠藤先生のコメントの通り、コロナの前と後とでは顧客の要求内容や要求水準が明らかに変わっています。社員では判断できない要求、あるいは感じ取ることができない変化が起きている可能性が高いのです。
繰り返しになりますが、今日日、“普通の対応”しかできなければ間違いなく売上は下がります。顧客が要求していることの先の先をよみ、顧客が求めている以上の価値を提供するにはどうすればよいのか?それを考えることができるのは社長ただ1人です。
特に、従業員300名未満の会社の場合、必ず社長が営業現場の陣頭指揮を取るべきでしょう。
実際、私の関係先で従業員300名の自動車部品関連を扱う商社があります。この会社もコロナ禍の中で今年4~6月は売上が激減し、今年の12月末決算はあわや赤字、となりかけました。しかしこの会社の場合は4月頃から社長が営業本部長を兼務して陣頭指揮を取り、あわせてかねてから進めていた営業DXを急加速させました。
その結果、この9月からの自動車部品生産の回復の波に大きく乗ることができ、なんとかこの12月末決算は黒字で着地できることが確定しました。
前回のレポートでご紹介した「営業DX」に取組む深江特殊鋼様にせよ、前述の関東製作所様にせよ、いずれも社長自らが「営業現場」に直接関与されることで成果につなげているのです。
もちろん、DXのあり方は、各社各社異なります。その会社のDXについて参考として取り入れるべきところは多々ありますが、しかし自社のDXは自社なりの姿を考えていかなければいけません。
ただし業績を上げるためのDXを進めるにあたって、それを進めるための方法論・DX進めるために必要なツールというのは明確に存在します。
船井総合研究所ものづくり支援室では、このような情報を中堅・中小製造業の経営者様向けに発信するためにオンラインセミナーを開催しております。
是非、ご参加をご検討いただければと思います。
製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る