この9月、業績が厳しい会社と健闘している会社を分ける2つのポイント
前回のレポートでも述べた通り、先月8月は稼働日が少なかったこともあり低調な結果に終わった会社が多かったといえます。
この8月は前年対比でいくと△30~△40%、業種によっては半分、といったところではないでしょうか。
その反面、この9月以降は手持ちの受注が増えてきており、9~10月は盛り返すことができそう、といった様な会社も散見されます。
経営コンサルタントとして様々な会社を見ていて、同じコロナ禍の中でも、そして同じ業種の中でも、
a)おしなべて苦戦している会社
b)まわりは苦戦しているけども比較的健闘している会社
との間には大きな差が生まれています。
上記a)とb)を分けるものは何なのでしょうか?
私は2つあると思います。
1つ目は「社員の意識」の問題です。
上記a)の会社に見られる傾向として、売上は3割減っていて仕事はヒマなはずなのに、総じて社員が忙しそうにしているということです。
つまり、よくあるマズいパターンなのですが、いわゆる減った仕事に合わせて仕事をしているというやつで、仕事が3割減ってかかる時間も3割減るはずなのに、今までと同じ時間をかけて3割減の仕事をこなしているというパターンです。
特にこの傾向が強いのが営業部門です。仕事が3割減っているはずなのだから、その3割を新規開拓なりあるいは既存顧客への新商品提案に充ててほしいのですが、それができていない。もともと営業担当者の動きというのは経営者の目からはわかりづらいわけですが、それがより見えなくなっている、そういう状態です。
この問題を解決するためには、前回のレポートでも述べましたがSFA(セールス・フォース・オートメーション)を導入して、KGI(=売上・粗利)だけでなく、KPI(=受注率・商談件数・平均単価)を見える様にしてやる必要性があります。つまり「結果」だけでなく「プロセス」が見える様にしてやる必要性がある、ということです。
”プロセス”が変わらなければ結果は変わらない
営業部門の場合、不必要に管理を強化するとモチベーションが低下して逆効果になります。
つまりSFAの導入目的は管理ではありません。管理ではなくプロセスを見える化することにより、営業担当者の意識をプロセスに向かわせることが必要なのです。
具体的にプロセスを見える化するためには、従来の「KGI」という概念に加えて「KPI」を見える化してやる必要があります。
KGIとはKey Goal Indicatorの略で、「重要目標達成指標」のことです。具体的には「売上」あるいは「粗利」がこれにあたります。
今の時代、多くの会社が販売管理システムは導入していますから、多くの会社は営業担当者別の売上管理、あるいは粗利管理はできているはずです。
今までは、このKGIの管理だけで十分でした。しかし現在の様に「7割経済」となり、プロセスに目を向けていかなければならない、となるとKGIを構成するKPIに目を向ける必要があるのです。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、「重要業績指標」のことです。具体的には前回のレポートでも述べた「商談件数」「平均単価」「受注率」が挙げられます。
KGI=KPI①×KPI②×KPI③ で計算され、前回のレポートでも述べた通り、
売上 =商談件数 × 平均単価 × 受注率
と、なります。
どこの会社でも、営業会議の際には営業担当者ごとの「売上」と「粗利」が目の前の資料に展開され、そこに意識が向かいます。
その時に、売上・粗利だけでなく「商談件数」「平均単価」「受注率」までが目の前に出されたらどうでしょうか。
誰もがこの3つのKPIを意識しはじめます。そうするとプロセスが変わり、結果が変わってきます。エクセル管理あるいはグループウェアではこうしたKPIの管理が行えません。
ですからSFAの導入が必要なのです。
今や導入は必須の「オンライン営業」
2つ目は「オンライン営業」の導入です。
例えば船井総合研究所ファクトリービジネス研究会 生産財商社経営部会の会員企業様であり、京都市に本社を置くK・マシン株式会社(従業員37名)は地域密着型の機械工具商社ですが、リーマンショック後に年商14.7億円から年商29億円に大きく業績を伸ばされたモデル企業です。同社は「オンライン営業」の中核ツールであるマーケティング・オートメーションを既に数年前から導入しており、いわゆる完全に使いこなす領域に入っています。
具体的に、同社がマーケティング・オートメーションで配信しているメールマガジンは下記のイメージです。
一般的なメールマガジンのイメージは文字だけのものですが、ハイエンドのマーケティング・オートメーションの場合、この様に写真を本文に埋め込む、あるいは動画を本文に埋め込むといった作業が容易に行えます。
また同社の主力商品は「機械工具」ですが、機械工具よりも単価の高い「工事」の実績を積極的にPRすることによって前述の「平均単価」のアップを狙います。
そして、このメールマガジンのバナーをクリックすると、同社のソリューションサイトである「京都滋賀工場工事メンテナンスセンター.COM」(https://kmcn-koji.com/)にとびます。そこには様々な工事の事例がアップされていますから、もしこのメールマガジンを閲覧しているお客様が具体的に工事を検討しているとするならば、自身が抱えているテーマの該当工事を探してクリックすることでしょう。マーケティング・オートメーションでは、こうしたお客様のWebサイト内での閲覧履歴も全て把握することができます。
その結果、営業担当者は本当にニーズのある顧客に対して効果的なアプローチをかけることができるのです。
「オンライン営業」の成功の可否も管理職の本気度で決まる
またK・マシン株式会社の場合は、いわゆる「ツール頼り」というよりもトップ以下、管理職の本気度で成果を上げているといえます。
例えば同社の場合、営業部長・課長といった現場の管理職が「メールマガジンを徹底的に活用する」という強い意識を持っています。従ってメールマガジンが配信されると営業担当者が「今回のメールマガジンは配管工事の事例をご紹介させていただきましたが、ご覧いただけましたか?」と営業活動の中で必ずアピールする様にしています。そうするとお客様から「ああ、見たけど、ウチは配管工事は出入りの業者さんに頼んでいるからね・・・。ところで、おたくは移設工事はできるの?」といった具合に、「そういう実績があるなら、こういうことはできないの?」といった具合にニーズを掴むことができるのです。
あるいは、自社の重要顧客であるはずなのに過去何回もメールマガジンを送付しているにも関わらず開封してくれていないお客様があったとします。
そうすると営業担当者が「先週ご送付したメールマガジンはご覧いただけましたか?」とヒアリングします。お客が「いやー、来ていないな・・・」と言われたら、「もしかすると、迷惑フォルダに振り分けられているのかもしれませんね」「セミナーや割引セールの情報も流すことがありますから、ぜひご確認いただけませんか」と確認すると、「なぜか迷惑メールフォルダにきてたよ!迷惑メールじゃない指定かけたから今後は読めますよ!」というご回答をいただくこともあります。近年は大企業を中心にセキュリティーレベルが高い会社が増えているため、万全を期していても確率論で迷惑メールフォルダに振り分けられることがあるのです。
この様に、例えばK・マシン様の場合は「デジタル」と「リアル」がきちんと連携・融合することにより成果につなげることができています。
同社はこの4~6月、さらに7月、8月と同業他社と比較してもかなり善戦されています。
繰り返しになりますが、「デジタル」での施策(=マーケティング)と「リアル」(=営業活動)がかみ合えば、大きな成果につながるのです。
製造業はYoutubeを活用して「バーチャル工場見学」ができる状態をつくろう
また、製造業の場合は、Youtubeを活用して自社の「Youtubeチャンネル」を立上げ、バーチャル工場見学ができる様にすると新規引合いにつながりやすくなります。
例えば船井総研ファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会の会員企業様であり、千葉県浦安市に本社・工場をおく株式会社カネコ(従業員30名)の場合、自社のYoutubeチャンネルとメールマガジンを連動させて効果を上げています。
同社は冷間鍛造部品の2次加工を主力事業としていますが、下記の様なYoutubeチャンネルを立ち上げています。
↓↓↓株式会社カネコのYoutubeチャンネル
https://m.youtube.com/channel/UCgv171WP8uRY6kRLHhA1hXg/featured
同社のビジネスモデルは、100台を超えるカム式旋盤を保有し、加工そのものは高い価格競争力でこなすことができます。なぜならNC旋盤と比較してカム式旋盤は圧倒的な価格競争力を持つからです。その上で無人の画像処理設備による全数検査を実施。ISOに基づく品質管理体制によりローコストな加工を行いながらも高い品質を保証するというユニークなものです。そうした解説をメールマガジン上で、こうした動画を活用しながら行っているのです。
さらに社長ご自身がYoutubeチャンネルに出演し、どの様な加工方法を取ればローコストに部品加工が行えるのかを解説しています。
こうした動画を見た見込み客は、同社に対して高い親近感を抱くと同時に、「ここなら仕事をお願いしても大丈夫だな」と思うことでしょう。
実際、同社は現在でも新しい仕事が増えて同業他社の中でもかなり善戦しています。
製造業の場合は、実取引になることが前提であれば必ず「工場見学」にお客がきます。ところが現在はコロナの影響もあって、以前の様に気軽に工場見学に出向くことも難しくなっています。Youtube上でこうしたバーチャル工場見学ができる様に整備しておくことは、ある種必須ともいえるのではないでしょうか。
「オンライン営業」を3ヶ月で導入する方法
ちなみに、こうしたYoutube上のバーチャル工場見学から自社サイトに訪れたお客は、普通のネット検索から自社サイトに訪れるお客と比較して、「直帰率」が1/2以下になることがわかっています。「直帰率」とは、自社サイトに訪れたものの「うーん、このサイトはイメージしていた会社と違うな・・・」と、トップページだけ閲覧して離脱するお客の割合を示す数値です。一般的なWebサイトの直帰率は約70%前後ですが、Youtube経由で訪れたお客の直帰率は40%を切ります。
つまり、それだけ自社に共感してくれた状態で訪れる、あるいは自社を理解した状態で訪れると考えてよいでしょう。
前述のメールマガジンに話を戻しますが、一般に「文字だけ」の情報と比較して「写真などの画像」は7倍の説得力があるといわれています。さらに「動画」は「写真などの画像」と比較して7倍の説得力があると言われており、つまり文字だけで説明するのに対して動画で説明を行えば、いわば7×7で約50倍も説得力が向上するわけです。
また前述のカネコ様の動画は、決してプロが撮影したものではありません。同社の社員がスマートフォンのカメラで撮影したものです。さらにYoutubeチャンネルは無料で立ち上げることができます。つまり今の時代、やる気とノウハウさえあれば、かなりのレベルで効果的な「オンライン営業」を行うことができるのです。
上記に述べた話も含む「オンライン営業」導入のための具体的手法について、過去のセミナーでお伝えさせていただきました。
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