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【小が大に勝つ】中小企業の方が有利な時代

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コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画

今、お奨めの1冊の本があります。それは、

「コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画」冨山 和彦 著(IGPI代表取締役CEO) 文芸春秋

という本です。

同書の著者は、JALやカネボウ、りそな銀行の企業再生を成功させてきたターンアラウンド(企業再生)の第一人者です。

本書の論点は、そうした修羅場を潜り抜けてきた著者による、

・これから、コロナ危機はどうなるのか?

・どうすれば、この危機を乗り越えられるのか?

・具体的に地方の中小企業は何をすれば良いのか?

といった内容です。

 

では、これからコロナ危機はどうなるのか?

著者の冨山氏によると、

L(ローカル)→G(グローバル)→F(ファイナンシャル)

の3段階で経済が重篤化していく可能性が高い、と見ています。

 

まず感染拡大防止のため、様々な自粛によって地方の飲食店やサービス業、ホテルや旅館の業績が厳しくなります。これがLの危機。

そしてLの危機により需要が蒸発した結果、次にG(=グローバルを相手にする大手製造業)が危機に陥る。

現在のところはサプライチェーン寸断による混乱であるが、これが早晩、需要蒸発による危機に転化する。

現在の危機は主に「資金繰り問題」であるが、これが「弁済可能性問題」に転化する可能性が高い、というのである。

そうすると今度は金融機関のバランスシートが痛み出し、F(=金融機関)の危機に陥り、金融恐慌になる可能性がある、というのである。

 

では、どうすればこの危機を乗り越えられるのか?

 

未曽有の危機は「歴史に学べ」

著者の冨山氏は「歴史に学べ」と言います。

 

そして過去の大恐慌の際、生き残る可能性が高かった企業の共通点は

次の2つだといいます。

1.手元の現預金を潤沢にしておくこと

借りれるだけ借りておく

2.利益率が高いこと(高収益であること)

 

さらに著者は現在の危機に対処する8つの「経営者の心得」を説いています。

心得1 最悪の場合を想定し、準備しておく。

心得2 悪い情報を恐れるな。

一時的に大きな赤字になっても処理すべき損失は透明性を持ってきっちりと処理をする。

心得3 現金残高が全て。

自社が本当の危機に陥った場合は「日繰り」での資金繰りを行う。

心得4 捨てる覚悟。

聖域を設けず、何を本当に残すか、を決める。

心得5 独断即決。真のプロを集めて即断即決。

今の時期は朝令暮改が必要。

心得6 タフであること。

心得7 必要に応じて2種類の「お金」を準備する。

「融資」と「出資」。

心得8 「社員の感情」に流されず、投資や買収に打って出る。

 

例えば「心得4」と「心得8」は一見相反しています。

つまり場合によっては給与カットなど固定費に手を付けざるをえないこともある。

しかし、固定費に手を付けたからといって、攻めの投資や買収に打って出ないことには、アフターコロナを生き抜いていけませんよ、と、著者は主張しているのです。

実際、世の中を牛耳る様な寡占勢力が生まれるのは常に大不況の時です。

全米の製油所を牛耳ったロックフェラーのスタンダードオイル社は、1800年代末の大不況の際に、全米の製油所を買収しまくって現在の富を築きました。

また1920年代の大恐慌の際には全米に200を超える自動車メーカーがあったそうですが、これを買収しまくって財を成したのがGM社です。

さらに現在のGAFAと言われるプラットフォーマーが本当に勢力を伸ばしたのは、ITバブルが崩壊した2000年以降です。

つまり、今は実は新たなビジネスチャンスであると。

それを国民感情や社員の感情に流されて見誤るなと、著者は述べているのです。

 

経営トップが決してやってはいけないこと

そして著者は、現在の様な修羅場において、経営トップが決してやってはいけないことを次の様に述べています。

それは、現場主義の意味を取り違えて、いちいち社員の声を聞くことです。

著者は次の様な比喩を使っています。

例えば真珠湾攻撃の後でも、戦艦大和を建造中の現場で頑張っている連中は、「もう航空戦の時代なんだからこんな巨大戦艦はいらない」とは言ってくれません。

あるいは撃沈寸前の大和の甲板でも、水兵に「まだ頑張れるか?」と聞けば「頑張れる」と答えるに決まっている。

現場主義とは現場の思いに迎合することではなく、現場で汗をかき血を流す仲間に共感した上で、時には現場に厳しい決断を下す、それが真の現場主義なのです。

 

そして著者は述べます。

現在の危機はパンデミック(=世界的大流行)という言葉通り、一過性のものでいつかは必ず終わる。

また終わらない経済危機も無い。

今の時代をどう捉えてチャンスに変えていくのか。

「今」と「未来」の両方に向けて200%全力投球、200%経営が求められている、と、著者は同書の最後を締めくくっています。

 

中小企業の方が有利な時代がやってきた

私は日々、現場でコンサルティングを行っていて、本当に「小が大に勝つ」時代、大企業が中小企業よりも有利な時代がやってきたな、と、心底感じています。

今、私が、もっといえば私が所属する船井総合研究所 ものづくりGが提供しているコンサルティングの中身はほぼ100%、デジタルマーケティングあるいはセールステックと言われるオンライン営業の導入です。

実は、こうしたデジタルマーケティングやセールステック(オンライン営業)を大企業で推進しようとしてもなかなかうまく導入できません。

なぜなら、大半の会社がデジタルマーケティングやセールステック(オンライン営業)などやったことがなく、いわゆるサラリーマンの目からみると、これはリスクの塊でしかないからです。

また大企業の場合、こうしたデジタル関係、Webサイト関係の責任部門が多くの場合、情報システム部門です。大変失礼ながら、この情報システム部門というのは非常に保守的な方が多く、デジタルマーケティングやオンライン営業を進めるとなると、彼らを説得する作業が必要です。

例えばリモート会議システムのZoom。世界で3億人が利用しており、動作もスムーズで動きもはやい。しかもローコストで会って話をするのと何ら遜色のない優れたリモート会議システムです。ところ一時期、Zoomのセキュリティの脆弱性を指摘する報道がなされると、「これは危険だ!」「何かあったらどうするんだ!」と、リモート会議システム1つとっても話が中々前に進みません。このZoomの脆弱性の問題も、よく調べればパスワード設定を行うことで大半の問題がクリアされます。

しかしそこはサラリーマン、積極的に工数をかけて「こうすればできますよ!」と前向きに動いてくれる人というのは大変失礼ながら稀です。ちなみに、Zoomは5月末に大幅バージョンアップがされ、指摘されていたセキュリティの脆弱性に対しては改善がなされています。

 

システムダウンが許されない情報システム部門が保守的になるのは仕方がないとして、彼らを説得する営業企画部門やマーケティング部門もリスクがあります。

「そこまでいって、本当にうまくいくんでしょうね?」こういう言葉を関係部門から突き付けられて、そこを乗り切れる人というのは相当な野武士で、何が言いたいのかというと、実はデジタルマーケティングやセールステックというのは、経営トップのトップダウンがなければ、実は推進することができないプロジェクトなのです。

 

その結果、デジタルマーケティングやセールステックの成功事例は、圧倒的に零細企業あるいは中小企業が多い。

あるいは大企業でも経営トップがカリスマで、トップダウンがきく会社でなければデジタルマーケティングもセールステック(オンライン営業)も導入・成功していません。

 

会社を6回倒産させてわかったこと

まず、今、恐らく日本で一番デジタルマーケティングとセールステック(オンライン営業)に力を入れている会社は、キーエンスでしょう。

キーエンスといえば社員の給与平均が年収2000万円を超えて話題になった超高収益企業。今回のコロナ不況の中でも逆に評価があがり、今や同社の時価総額はNTTドコモを抜き、トヨタ自動車に次いで国内2位となっています。

キーエンスはソリューションサイトを40以上保有、資料ダウンロード件数は数万件を超え、マーケティングオートメーションを早期に導入。

まさにデジタルマーケティング、現在ではセールステック(オンライン営業)のモデル企業となっていますが、キーエンスの創業者は会社を6回も倒産させた経験を持つと言われています。

会社を6回も倒産させる中で、「特定顧客に依存してはならない」「エンドユーザーのニーズを直接把握しなければならない」「川上部門を押さえなければならない」「結局のところ営業力が全て」といった教訓を学び、現在のビジネスモデルに至っています。

 

また、キーエンスと同等にデジタルマーケティングとセールステックに注力しているのが、電子部品メーカーのロームです。

ロームはリーマンショックの際、多くの社員をリストラすることになりました。その理由は、当時の同社が任天堂など特定顧客に依存しており、また当時の同社の営業体質は御用聞き体質で、開発設計部門などの川上部門をしっかりと押さえることができていなかったそうです。

生まれて初めてリストラを経験したロームの創業者は、「二度とこんなつらいことはしたくない」と一念発起。デジタルマーケティングの導入を決意します。

現在、ロームはマーケティングの専門誌が絶賛するほどのデジタルマーケティングのモデル企業です。

 

何が言いたいのかというと、大企業の場合はこの様に、トップが強烈な個性を持ち、トップダウンでデジタルマーケティングやセールステックを導入できる体質の会社でなければ、なかなか導入が前に進まないのです。

これは見方を変えれば中小企業にとっては大チャンスです。

 

人を増やさず利益を増やすビジネスモデル/訪問せずに営業ができるセールステック

しかも今の時代は、実はデジタルの導入コストは大幅に下がっています。

例えばリモート会議システムのZoomは有料版でもわずか月額2000円。無料版でも40分まで使えます。

一昔前のテレビ会議システムだと1セット100万円を軽く超えていました。

 

デジタルマーケティング、あるいはセールステック(オンライン営業)で中心的な役割を果たすマーケティングオートメーションも、一昔前は月額60万円をこえていましたが、現在はわずか月額1万円ほどでハイエンドのシステムが導入可能です。

例えば導入するにあたり、仮にプロのコンサルティング会社を使ったとしても、正社員を1名1年間雇用する費用を考えれば十分にお釣りがくるレベルの投資で、デジタルマーケティングもセールステックも導入が可能です。

つまり経営者目線で見れば、セールステックの導入というのは実はそれほどのリスクではありません。

 

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