特集 事例研究-変化に対応する 部品加工業【東洋ステンレス研磨工業株式会社】
地域依存のビジネスを日本全国、グローバルへ展開!
加工技術を商品力へと昇華するものづくりの取組み
地域の研磨加工会社が、なぜ国内外トップクラスのデザイナーに支持されるメーカーになったのか?
東洋ステンレス研磨工業株式会社
同社は昭和41年に、現社長の祖父にあたる門谷 博 氏が創業されました。もともとステンレスメーカーに勤務されていた創業者が、「これまで取り扱ってきたステンレス素材をもっと世の中の多くの方々に使っていただきたい。磨くとこんなに綺麗になり、シャープで清潔感のあるエレガントなステンレスをもっと街の中で目にする機会を増やしたい。そのためには、研磨技術を深く研究し、ステンレス素材の可能性を無限大に広げる事が当社の使命であり、存在価値である(※同社コーポレートサイトより引用)」との思いで創業された会社です。
同社の特徴は地域内で用いられるステンレスの研磨加工を材料卸に対して提供するという事業と、主に建築物向けに用いられるデザイン性に優れた金属素材の製作(同社では「意匠金属」と呼称します)を行っています。
このデザイン性に優れた金属素材は「MAKO」というブランド名を定義し、自社の研磨加工技術を注ぎ込んで製作されています。20年前には売上の数パーセントを占めるだけだった意匠金属は、今では会社の売上の3割を作るひとつの事業の柱となりました。
ローカルビジネスからグローバルビジネスへの挑戦
創業から現在まで、同社の主力事業の1つとなっているのは、ローカルエリア(九州北部)内での消費される鋼材の研磨事業です。ローカルビジネスとは端的に言えば“地域密着型ビジネス”で、理髪店やスーパー、歯科医院等、所謂「町の」等の形容詞が付き、域内で完結するビジネス形態を指します。同社の場合は製造業に位置しますが、一般のステンレス研磨加工の販売先は鋼材卸がほとんどであり、必然鋼材卸の商圏内の需要および景況に業績が凡そ比例することになります。従って差別化の図り難い商品を扱いながら、ローカルビジネスの構造下で業績を伸ばすためには、シェアを伸ばすしか方策が無くなるわけで、かつその方法は価格競争の繰り返しという、中小企業が取るべきではないある種の袋小路です。
そこで同社はより高付加価値の商品開発に舵を切りました。1990年代半ばから、創業の精神にあるように研磨技術を研究し、これまでにないステンレスの表面加工を実現。地域性に依存しない、日本全国、海外を相手にできるグローバルビジネスへと挑戦を始めたのです。
ユーザーから支持されるものづくり
同社は建築向けの意匠性の高い金属研磨加工は、1990年代より少量を手掛けていましたが、本格化したのは現社長の門谷 豊氏が本格的に陣頭指揮を執るようになってからになります。
デザイナーや建築家と深く付き合うようになり、自社の商品を使ってほしい人々がどのような感性や言葉を持ち、どういった建築物を実現したいのか、求める商品は自社の技術を用いてどう実現するのか、という点で本格的に研究を進めて行ったことが同社の転機になりました。加工機を内製し、さらに職人に依存しないように複雑なデザインパターンをNCプログラムでどう表現するかといったことに工夫を凝らします。取り組みを始めて15年ほどになり、「現在は他社がコストと品質で追随が困難な領域まで達した。より研鑽を加えて日本一の研磨加工技術を構築したい」と門谷社長は自信を見せます。
同社の意匠金属は一般のステンレスと比較すると3倍近くの価格がしますが、建築界の巨匠フランク・ゲーリーが設計したディズニー コンサートホール(ロサンゼルス)や八代の龍王神社など著名建築物にも同社の商品が使用されています。また昨年竣工した福岡県弁護士会館は東洋ステンレス研磨工業の名前でステンレス協会賞優秀賞を受賞するなど、知名度・採用が漸進的に拡大し、現在は意匠金属事業が会社全体の売上の3割を超えるようになりました。
自社ショールームやデジタル化にも積極的に取り組み、時流に適応
同社では数年前から「デザイン経営」を志向。芯の通った経営計画に基づき事業を前に進めています。
2019年1月には工場近くの空きスペースにショールームを開設。同社のショールームには頻繁に東京をはじめとして有名デザイン事務所、設計事務所から見学、打合せに来場があります。またメールマガジンやWEBサイトを活用した情報発信も継続的に実施。仕入先にあたる日本製鉄も参考のためにヒアリングに来るほどとなっています。
九州・大宰府から世界へ研磨加工技術で勝負し続ける
まずローカルビジネスに依存せず事業を永続させるために、グルーバルビジネスとなる「意匠金属」の売上比率を50%まで上げることを目標として掲げられています。その次に同社が目指す先は“本当のグローバル”です。
「海外は日本とはマーケットの構造が異なる。パートナー選びや展示会出展も工夫を凝らさないといけない。デジタル面での取り組みも強化しないと」と門谷社長は次の目標を語ります。「現在立地のある太宰府市は残念ながら人口減少エリア。しかしグローバルの世界で戦える技術力、商品を我々は持っていると思っている。大宰府に在りながら、我々は世界へ展開したい」
今後も同社の展開からは目が離せません
会社名 | 東洋ステンレス研磨工業株式会社 |
事業内容 | ・薄膜コーティングの受託事業
・高耐食金属製品の製造・販売 ・意匠性金属製品の製造・販売 ・機能性金属製品の製造・販売 ・各種金属加工・設計 ・薄膜堆積装置の設計・製造・販売 ・半導体・液晶製造装置用部品の製造・販売 ・前各号に付随関連する一切の事業 |
従業員数 | 35名 |
創業 | 昭和41年5月 |
代表者 | 門谷 豊 |
住所 | 福岡県太宰府市水城6丁目31-1 |
電話番号 | 092-928-3733 |
URL | https://www.toyo-kenma.co.jp |