注目を集めるIP企業
今、世界で高収益型企業として注目を集めている業態としてIP企業というのがあります。IPとはインテレクチュアル・プロパティ(Intellectual Property)の略であり、一言で言えば「知的財産企業」ということです。
例えばドイツにMANという会社があります。造船技術においては日本が世界一と誰もが思っていますが、大型舶用ディーゼルエンジンの分野では、このMANが世界シェア81.1%と、圧倒的なシェアを持っています。そして驚くべきことにMANは量産を手がけていません。開発と知的財産の管理のみに特化し、実際の量産は日本企業や中国、韓国企業が行っています。こうしたMANの様な会社のことをIP企業といいます。
同社がこうしたやり方を取る最大の理由は、造船業が景気の波に左右される不安定な業界だからです。景気が良いときに設備投資をして人を雇用しても、景気が悪くなるとそれを支えきれなくなることが、事業永続へのリスクだと考えているのです。
ちなみに、ソフトバンクが3.3兆円で買収したイギリスのARMも代表的なIP企業です。
脱・規模の経営で大手企業と互角に渡り合う町工場
こうしたIP企業は海外の大手企業の話ばかりではありません。最近では日本の町工場の中にも、先進的なモデル企業は自社のIP化に取り組んでいます。
例えばファクトリービジネス研究会 会員企業でもある埼玉県草加市に本社工場をおく株式会社エムアイ精巧(従業員32名)は、大手自動車メーカーとライセンス契約を交わし、ある部品の加工に関わる共同開発を行っています。この部品の加工方法が確立されたら、この部品の生産1個につき、ライセンス料をもらうという形式をとっているのです。
自動車部品の量産ともなると、最低でも従業員を100人以上は雇わなければいけません。もちろん多大な設備投資も伴います。今のご時勢、これだけの工場を新たにつくろうとすると海外生産が前提となるでしょう。しかし「永続」という観点でみた時、それは経営的に極めてリスクが高いことです。
エムアイ精巧の場合、自動車部品の生産に欠かせないプレス加工技術の中でも、特に異形状深絞り加工に独自技術を持ちます。こうした独自技術に絞り込めば、IP企業化により大手自動車メーカーとも互角に渡り合うことができるのです。こうした新たなビジネスモデルで脱・規模の経営を行う同社は、まさに日本が世界に誇りたい製造業の1社であるといえるでしょう。
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