2025年6月の時流とその対策
なぜ自動車業界は苦境が続いているのか?

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苦境が続く自動車業界の現状とこれから

トランプ・ショックの影響もあり、生産財業界の製造業あるいは商社・販売店もかつてないほどに業績が二極化しています。

特に厳しいのが自動車業界です。

自動車業界といえば、日産がかつてのリバイバルプラン以来の2万人ものリストラを発表、日産グループのサプライヤー筆頭格だった元カルソニックカンセイだったマレリが事実上の破産を申請するなど、新聞紙面を読むだけでも厳しさが伝わってきます。

ところが、中小製造業市況という観点でいえば、日産系列だけでなく、トヨタ系列も含めて生産財市況はかなり厳しいといえます。

特に、「金型」「治工具」「生産設備」といった、“新車(新モデル)”が開発されないことには需要が発生しない様な業種が、かなり苦戦しています。

従来から厳しかったのに、さらに今年に入ってから昨年対比で2割ほども受注・売上が減少している、といった企業も多々あります。

かねてから自動車業界は好況・不況の影響を大きく受けてきた業界でしたが、今回のマイナスの波は「構造的」であるといえます。

その理由は「自動車がコモディティ化した」という点にあります。

コモディティ化には、国内のコモディティと海外のコモディティがあります。

まず日本国内でいくと、昔のように若者が車を買いません。

売れるのは軽自動車ばかりという状況が国内のコモディティであるといえます。

海外のコモディティとは「EVシフト」に起因するものです。

まず、中国のBYDが、欧米のEV販売台数だとテスラを抜きました。

EVの事業規模でBYDがテスラを抜くのも時間の問題だと思われます。

そして、中国で増産されたEVはアジアに流れ込み、タイなどASEAN諸国の日本車シェアを大きく奪っています。

またEVの特徴として、かねてから指摘されているように新規参入が容易にできる点があります。

例えば、ベトナムにはビンファストというEVの同国トップメーカーがありますが、同社の本業は不動産・リゾート開発です。

EV事業は数千億円レベルの赤字ですが、同社の本業は不動産事業であるため、EVはいわば会社の「看板」のようなものです。

同様にインドにはオラという電動二輪メーカーがあり、四輪のEVへの参入も発表していますが、同社の本業は配車サービスです。

このように、必ずしもEVで儲ける必要の無い、本業を別に持つ大手企業(=ゲームチェンジャー)がどんどん自動車市場に参入してきているわけです。

日本のカーメーカーも必ず影響を受けます。

短期・中期的にはトランプ・ショックの影響が目立ちますが、長期的には自動車産業そのものの構造が変わりつつあることを認識しなければなりません。

 

トランプ・ショックはドル・ショックに並ぶ産業構造変化

さて、それでは、中堅・中小企業の経営者はこのトランプ・ショックをどのように捉えるべきなのでしょうか?

新聞やニュースを読んでいると、米国の関税引き上げはトランプ大統領の思いつきのように報道がなされています。

しかし、実際にはそうではなく、これは米国の根本的な構造改革であることがわかります。

米国では所得の二極化が激しく、米国の所得税の半分を富裕層である所得上位3%の人が払っているといわれています。

逆に、米国の所得下位50%の人たちは、所得税全体の3%しか払っていないといわれています。

つまり、米国の所得税を支えているのは富裕層なわけです。

富裕層出身のトランプ大統領は、この構造を変えたいと考えているといわれています。

全国民から広く税金を取ろうとすると、一番手っ取り早いのは消費税です。

ところが消費税を導入する、あるいは税率を上げるとなると、大きな反発をくらうことになります。

そこで関税です。

実は関税を払うのは日本などの輸出国側ではなく、米国の輸入業者です。

米国の輸入業者は関税を払った分、それを商品代金に上乗せして国内に流通させます。

つまり関税アップというのは、事実上の消費税アップと同じなわけです。

ニュースで、あるエコノミストの人が「トランプ大統領は“関税を上げて外国に税金を払わせろ”と言っているが、関税のこともわかっていない」と指摘していましたが、恐らく、トランプ大統領は全てを理解した上で、米国民から反発をくらわないために、“外国に税金を払わせろ”と言っているのではないでしょうか。

つまり今回のトランプ・ショックは、かつてのドルショックと同じく構造的であり、日本の製造業にも大きな影響を与えることは間違いありません。

 

デフレ・低金利時代から、インフレ・高金利時代の経営のポイントとは?

米国が関税政策を進めると、世界レベルで間違いなくインフレが進みます。

かつ金融緩和がおわった今、かつての低金利から、いわゆる「金利がある世界」すなわち高金利時代にシフトします。

つまり経営的には、ここ30年近く続いた「デフレ・低金利時代」から「インフレ・高金利時代」と、まさに真逆の構造にシフトすることになります。

インフレ・高金利時代に考えなければならない経営のポイントは次の3つです。

1)粗利率の高い商売、LTVの高い商売をする

インフレになると原材料や工賃の費用が上がりますから、粗利率の低いビジネスはたちまち低収益、下手をすると赤字に直結します。

同様に“儲からない顧客”を相手にすると、たちまち低収益に陥ります。

LTVというのはライフ・タイム・バリューという意味で、直訳すると「顧客生涯価値」という意味です。

自社にとって得意のお客様はLTVが高くなります。

逆にそうでないお客様はLTVが低くなります。

自社にとって、どんなお客様がLTVが高くなるのか、それを見極めて付き合っていくことが大事です。

2)過大な設備投資を控える、人を増やさず利益を増やす投資を行う

自社の平均年齢を下げる意味合いでの採用は継続する必要があります。

ただし、投資としては、「人を増やさず利益を増やす投資」を中心に考えるべきです。

つまり「新工場」「新しい建屋」というよりも、「DX」への投資を中心に考えるべきでしょう。

3)特定顧客・特定業界に依存しない

前述の通り、自動車業界は大変厳しい状況に陥っています。

ところが、私の関係先のある機械加工業は業績が絶好調です。

同社の取引先は某大手重電メーカーなのですが、この某大手重電メーカーでは送電設備のインフラを手掛けているのです。

今は生成AIの普及に伴い、世界的に電力不足になっています。

日本も同様です。

したがって今は、世界レベルでこうした送電インフラの関係の設備投資が続いています。

同社はこの恩恵を受け、数年後には現在の数倍の仕事が見込まれています。

同社は補助金も活用して、最低限の投資で新工場の建設を予定しています。

また、私の関係先の別のプレス加工業では、現在でも営業利益率20%をキープしています。

同社は「自動車業界」「医療業界」「FA業界」と3つにポートフォリオをわけ、かつ、自動車業界もEVシフトの影響がほとんど無いブレーキ部品といった領域を意識的に狙っています。

さらに私の関係先の某機械商社では、今期9月決算が売上・利益ともに過去最高の成績になりそうです。

同社がターゲットとしているのは食品業界。

その中でも利幅の大きな“食品原料”と“中食業界(=パックご飯のメーカーなど)”をターゲットにしています。

どんなに不況といえども全ての業界の業績が悪い、ということはあり得ない、ということなのです。

 

データ経営が「高粗利」「特定業種・業界依存脱却」を実現する

そして、前述の3つのポイントを満たすための手段の1つとして「データ経営」を挙げることができます。

「データ経営」といえば、リアルタイムの売上や利益、様々なKPI(重要経営指標)を確認して、意思決定するための手法というイメージが強いと思います。

しかし、本質的な意味での「データ経営」はそうではありません。

データというのは大きく次の2つの種類があります。それは、

a)受注前のデータ

b)受注後のデータ

以前のこのコラムでも述べましたが、大半の会社は b)受注後のデータ の管理しかしていません。

大半の会社には“販売管理システム”“生産管理システム”が導入されていますが、これらは全て 受注後のデータ しか管理ができていません。

ところがこの“受注後のデータ”というのはいわば「結果」です。

「結果」だけを見ていても本質的な改善、具体的には粗利率アップや新規顧客創造への示唆といったアイデアを得ることができないのです。

その中で、セールスフォースドットコムあるいはZohoといった様なCRMプラットフォームを導入することにより、上記で述べた

a)受注前のデータ

b)受注後のデータ

を統合管理することができる様になるのです。

多くの会社が、a)受注前のデータ を無視するか、ないがしろにしています。

このa)b)両方の管理ができてこそ、本当の意味での「データ経営」なのです。

 

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出版記念セミナー「AI時代のデータ経営」

その中で、私たち船井総合研究所では700社を超える中小企業に対して、DXコンサルティングを提供すると同時に、前述のZohoの導入実績があります。

また、船井総合研究所自身も、全社員、1500アカウントのZohoを導入し、自らがZohoを社内システムとして活用しています。

Zohoは前述の a)、b) 両方のデータ経営を実現するためのデジタルツールです。

また「データは21世紀の石油」といわれますが、こうした自社データの蓄積こそが、将来のAI活用の準備にあたるともいえます。

まとめると、今、本当の意味での「データ経営」に舵を切れるかどうかが、この産業構造の変革を乗り切れるか否かだと私は思います。

こうした船井総合研究所の実績をもとに、来月7月に新著「AI導入を実現するデータ経営」を出版することになりました。

さらに、新著の出版を記念して、下記要領にて「出版記念セミナー」を企画しました。

本出版記念セミナーにご参加のお客様には、本書をもれなくプレゼント。

また、本書を読むだけでなく、本書を読む前に出版記念セミナーにご参加いただくことで、より本書への理解を深めることができます。

ぜひ、社長だけでなく、社長の右腕の幹部社員の方とも、ご参加いただければと思います。

さらに本セミナーには、ベストセラー連発の著名マーケッター 神田昌典氏も特別講演!

なお、本セミナーは会場の関係もあり、先着80名様限定となっています。

本セミナーの詳細・お申込みはこちらから

https://www.funaisoken.co.jp/seminar/129887

ぜひお早めに、本セミナーへのお申し込みをご検討いただければと思います。

<このような方におススメのセミナーです>

・自社にAI・データ経営を導入して、短期間に業績を向上させたいと考えている経営者の方
・データ活用、あるいは生成AI活用により、自社の業績を向上させたいと考えている経営者の方
・DXに取組みたいと思っているが、何から手を付けたらいいのか迷っている経営者の方
・同じ中小企業で、DXに取り組んで成功している同業者の成功事例を聞いてみたいと考えている経営者の方
・現在の自社のシステムが老朽化(レガシー化)しており、それを何とかしたい経営者・ご担当者の方

【セミナー概要】
日程◆ 2025/7/22 (火)
時間◆12:30~17:00
会場◆船井総合研究所 東京本社(八重洲)
〒104-0028 東京都中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲

お申込みはこちらから

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