東海エリアで設備投資に動きが?あらゆる業界で進む“まだら景気”
4月に入り多くの大企業において新しい期がスタートしますが、ここにきて東海エリアを中心に自動車関連のプレス金型が動き始めたといいます。ただし全ての車種、あるいは全ての部位にそれが及んでいるわけではなく、同じ自動車業界の中でも“まだら模様”の景気であるといえます。
ただし生産財業界のバロメーターである工作機械受注については、2023年度の実績が1兆4865億円。
今年の見通しが1兆5000億円とのことで、単月ベースでは前年対比マイナスとはいえ1000億円をきっておらず、もともと1兆円産業といわれてきた工作機械産業としては好調ということができるでしょう。
かつての工作機械産業は好調な時で1兆円であり、市況が厳しくなると年間で8000億円をきることは多々ありましたから、現在の水準は悪くない水準です。
しかしそれが全体の実感として感じられない理由は、前述の通り同じ業界であったとしても会社によって、取引先によって市況が大きく異なる“まだら景気”であることが定着したからだと思います。
「EVが輸出できない?」先行き不透明なEVシフトの実際
前回のこのレポートでは、「エフェクチュエーション」という書籍について紹介しました。
現在の様な「先が見えない時代」には、うってつけの経営理論だと思います。
そして現在の生産財業界における不透明感の一つの要因は「EVシフト」だといえるでしょう。
「EVシフト」が一気に進むと思いきや、ここのところの報道をみていると、中国でも米国でもEVシフトにブレーキがかかっているといいます。
その理由の1つが、EVの海上輸送リスクです。
2023年7月25日、川崎汽船がチャーターしたパナマ船籍の自動車輸送船が大規模な火災を起こしました。この船は新車3783台を積載していましたが、うち498台がEVで、出火の原因はEVのリチウムイオン電池だといいます。
さらにその1年前の2022年2月、やはり日本の船会社である商船三井の子会社が保有する自動車輸送船が、ポルトガル沖で3000mの深海に沈没しました。この時の出火原因はポルシェのEVが原因とされ、先月、商船三井がポルシェを提訴しました。
詳細は私もわかりませんから推察になりますが、一般に海上輸送では荷物に大きな熱が加わるといいます。
例えばワイン。リーファー(定温)コンテナで輸送しないと、赤道直下の海ではワインも沸騰するくらいの温度になり、味が大きく落ちるという話をよくききます。
仮に100%でないにしても、ある一定以上の確率でリチウムイオン電池が出火する可能性があるのであれば、船会社としては大きなリスクだといえます。特にリチウムイオン電池の出火に対して、充分でない量の水をかけると逆に火の勢いが増すそうです。安全に消化するには消化器が最善の方法といわれますが、モバイルバッテリーくらいの大きさならともかく、自動車のバッテリーかつ複数台のEVが海上で燃えている、となると消化の手立てもかなり限定されるのでしょう。
こうした事故が相次ぎ、今は多くの船会社がEVの輸送を断っている、という話もききます。
実際、中国のEV世界大手のBYDは、この事故以降14隻もの自動車運搬船を発注したといいます。
また上海汽車集団も、12隻もの自動車運搬船を発注。中国のEVメーカーは自前で海上輸送が行える体制を整えつつあります。
この様にEVシフトが減速している背景には、中国や北米といった主要市場の景気後退に加えて、前述の様な海上輸送面の問題、すなわち「EVが輸出できない」といった問題が考えられます。
ハイブリッド車も電動車?トヨタの戦略は本当に正しかったのか?
こうしたことも背景にあってか、特に北米ではトヨタ自動車のハイブリッド車が人気だといいます。
実際、国内外の設備投資の中味をみてみると、ハイブリッド車の「内燃機関」に関わる設備投資も多々みられます。こうしたことも受けて、「トヨタの戦略は正しかった」「やはり一足飛びにEVになるのではなく、ハイブリッド車が本命」といった声もあります。
また、そもそも電力が足りないという問題や、冬の極寒地ではEVは不利だとか、いろいろな話があります。
未来のことは私もわかりませんが、構造的にみるとEVシフトの動きは止まらないと思います。
具体的にESG投資というスキームがあります。
今、先進国の金融機関やあらゆるファンドはESG投資が基本です。
ESGとは、
・Environment(環境)
・Social(社会)
・Governance(ガバナンス)の頭文字をつなげたものです。
例えば今、石炭火力を推進する会社が融資を受けることが世界的に厳しくなっています。ESG投資の“E(環境)”のところに、ひっかかるからです。
技術的には、日本の石炭火力はコンバインドサイクルという技術で、実際には欧米の石油火力よりもエネルギー効率が高い、すなわち省エネなわけですが、こうした技術的な話は無視され「石炭をつかっている」という理由だけで、必要な資金が集まらなくなります。
技術的な議論の前に、まずは資金の流れを決めてしまうという欧米流のやり方です。
ESG投資だけでなく、欧州バッテリー連盟や米国インフレ法など、こうした「構造」をみていると長いスパンでEVシフトが進む様に私は感じます。もちろんハイブリッド車はEVには含まれません。
生成AIが引っ張る半導体市場、ChatGPTが本質的に革命的である理由
一方で、半導体市場は現在は低調といわれるものの、中期的には大きな拡大が期待されています。
特にChatGPTに代表される生成AIや量子コンピューティングが起爆剤となり、世界のデータ通信量は2040年には現在の100倍を超えるといいます。
その結果、世界の半導体市場は2030年には現在の7割増の150兆円に達するといいます。
自動車産業に次ぐ、巨大産業の誕生です。
では、半導体マーケットの成長を牽引するChatGPTは本質的に何が凄いのか?
それは「データベース無し」でAIを駆動させることができる点にあります。
具体的に、例えば今まで、社内のデータがエクセルやワードで様々な形で保存されていたとします。
従来、こうしたデータをもとにAIを駆動させようとすると、AIが読み込める形にデータをきれいに整える(=データベース化する)必要がありました。この点でAIの一般化はハードルが高かったわけです。
ところがChatGPTの様な生成AIは、本質的にAI用のデータベースが無かったにしても、過去につくったワードやエクセルの資料を生成AIそのものが読みにいきます。
従ってAI導入のハードルが一気に下がるわけです。
例えば、ある化学品会社が、過去に何万件という化学品の調合をしてきたとします。
新たな化学品の引合いが入ると、この会社の場合は過去何万件というレシピにあたり、似た様なレシピをつくることになります。そして、この過去何万件のレシピが頭に入っている開発部門の“主(ぬし)”みたいな人がいて、従来はこの主の人に聞いて似た様なレシピを探していたわけです。
ところが生成AIを活用すると、特に新たにデータベースをつくることなく、100%とはいかないまでも95%前後の精度で、この“主”の代わりに応えてくれるAIが誕生するわけです。
95%の精度だったとしても、開発工数は大幅に削減できます。
さらに、市販されているChatGPTの場合は、あらかじめインターネット上の膨大な情報をあらかじめ学習しています。従ってプロンプト(=生成AIへの問いかける質問)さえ正しく入力できれば、これまで数時間かけていた文章の作成作業が、わずか数分で完了する、といった効果が得られます。
文章だけでなく、画像データも同様です。
例えばここに、建築物のパース図があったとします。パース図は3次元CAD等で作成することができます。
さらにこのパース図を、画像生成AIソフトに読み込ませると、パース図があたかも実物の写真の様に瞬時に変わります。つまり完成物ができる前の段階で、写真をつくることができるわけです。
あるいは完成したばかりの、家具も何も入っていない部屋があったとします。
この部屋の写真を撮り、画像生成AIに「ソファーをおいて、カーテンの色は白、・・・」といった様に指示をだすと、あたかもモデルルームの様な部屋の写真が完成します。
従来は、こうした画像処理でAIを使おうとすると、やはり膨大なデータベースが必要でした。
ところが生成AIはその特性上、あらかじめインターネット内で自ら学習をしているため、データベースが不要ですぐに使える、ということなのです。
これがChatGPTを始めとする、生成AIが本質的に革命的である理由です。
優秀な中小企業経営者が、このチャンスをものにする方法
中小企業経営者が、この100年に一度ともいえるチャンスをものにする方法は2つあると思います。
1つは、自らChatGPTをはじめとする生成AIを使ってみることです。
例えば千葉県舞浜市に本社・工場をおく株式会社カネコでは、従来の会社案内サイトに加えて「特殊ネジ・リベット製造.COM」というソリューションサイトを立上げ、毎月40件前後もの新規引合いを獲得しています。
その新規引合いの中には、毎月継続数十万円~数百万円に至るリピート受注案件も含まれており、同社にとってはかなり有効な営業手段となっています。
そして、このソリューションサイト「特殊ネジ・リベット製造.COM」の精度を高めているのがChatGPTなのです。具体的に、このソリューションサイトには100種類を超える特殊ネジの事例がアップされています。
そしてWeb分析をしてわかったことは、有望な問合せをしてきてくれる見込客は、まず自社がつくりたい製品に近い「事例」を確認してから問合せをしてきているのです。
つまり見込客が求めている仕様に近い「事例」を提示できるかどうかが、このWebサイトの精度を決めるといっても過言ではないわけです。
そこで、このサイトに“お問合せ対応”ができるチャットボットを設置。このチャットボットはChatGPTと連携しています。
つまりチャットボット自身が、この「特殊ネジ・リベット製造.COM」にアップされている100種類を超える事例を学習しています。そしてチャットボットで入力された問合せ情報に対して、適切な事例を提案することによって、問合せ率のアップを実現しているのです。
例えばWEBサイトにアクセスしてきた見込客が、このチャットボットに自由記述で
「ステンレス製の、真空ネジを探している、サイズはインチ」等と入力したとします。
するとチャットボットが、
「ステンレスでインチサイズの真空ネジだと、次の様な事例があります・・・」と、事例ページとリンクされたタイトルをチャットボットに表示するわけです。
これでお目当ての事例にたどりつけた見込客は、その後高い確率で問合せをしてきます。
同社ではこのChatGPTと連動したチャットボットを導入することで、チャットボット経由での問合せがそれまでの4倍にもなっています。
同社の金子社長は「へたをすると、入社3年目の営業社員よりもチャットボットのトークの方が優秀」
と、その精度に驚かれています。
なお、金子社長のChatGPT活用動画は、下記Youtubeからご覧いただくことができます。
↓↓↓無料動画「製造業がChatGPTをフル活用する方法」
https://www.youtube.com/watch?v=gksyG6H8O2k
二つ目の方法は、EVシフトや半導体マーケットの成長に伴う、新たな引合いを獲得していくことです。
例えば東京に本社を置く株式会社関東製作所の場合、もともとは特定顧客への依存度の高い会社でした。そこで同社では“人を増やさずに利益を増やす”仕組みともいえる、「営業DX」の導入を決断します。具体的には、ソリューションサイト「射出成型ラボ」を立上げ、自社のYoutubeチャンネルを立上げ、マーケティング・オートメーションの導入を決めます。
その結果、本件に取り組んだ翌年の2021年には、新規受注2億円超え、2022年には新規受注が3億円を超えました。また同社の場合、もともと自動車業界への依存度が9割を超えていましたが、現在では
・半導体業界
・インフラ関連
・医療関連
・自動化・FA関連
・各種産業機械関連
といった、自動車業界以外の領域にも進出することに成功し、経営の安定化を図っています。
そして来る2024年 5月15日(水曜日)、船井総合研究所 東京新本社(東京ミッドタウン八重洲35F)にて、株式会社 関東製作所 代表取締役 渡邉 章 氏 を特別ゲスト講師として、
「部品加工業「脱」自動車(内燃機関)マーケット戦略セミナー」を開催します。
※特別ゲスト講師様のご講演は、東京会場内における動画でのご講演となります。
本セミナーは、次の様な経営者の方にお奨めのセミナーです。
<次の様な経営者の方にお奨めのセミナーです>
・自動車業界以外のマーケットから仕事を獲得したいと考えている部品加工業経営者の方。
・半導体・5G分野、電池、自動化、中食、脱炭素分野など、今後明らかに成長する市場から仕事を取りたい
部品加工業の社長。
・実際に「成長分野から仕事が取れる仕組み」を導入して成果を上げている同業者の事例を知りたい部品加工業
の社長。
・自社の強みを把握して、もっと業績を伸ばしたいと考えている部品加工業の社長。
・ピンチをチャンスと捉え、これを機に社内の意識を一新したいと考えている部品加工業の社長。
「部品加工業「脱」自動車(内燃機関)マーケット戦略セミナー」
本セミナーの詳細・お申し込みはこちらからどうぞ!
↓↓↓
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/108764
本セミナーは、船井総合研究所の新東京本社にて開催いたします。ぜひ、これを機に、当社の新本社にもお越しいただければと思います。なお、本セミナーは会場の関係から先着25名様までのご参加となります。
せひお早めにお申し込みいただければと存じます。会場で、皆様とお会いできますことを、心から楽しみにしております。
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