2023年に中堅・中小企業の社長が押さえておくべき「グリーン地政学」とは?
今年に入り、様々な生産財業界の経営者の方の話を聞いていますと、やはり先行き不透明な話が多いといえます。特に自動車関連については、ここのところずっと設備投資の抑制が行われています。
そしてロシアのウクライナ進攻だけでなく、色々な意味で世界の方向はある種の「ブロック経済」に向けて動いている様にみえます。例えば、今世間をにぎわせているEVシフトです。
今やEVシフトは、
・脱炭素を実現するための手段
というよりも、
・ハイブリッド車技術で日本を超すことができない欧米・中国によるゲームチェンジ
であるという話が公然とされています。
トヨタが初のハイブリッド車、プリウスを発売したのは1997年のことです。
そして2000年に入るとハイブリッド車は世界的ブームとなり、映画のアカデミー賞授賞式でスターがプリウスを使って注目を浴びました。
また、アメリカの高速道路には「バスレーン」といわれる優遇車線があります。アメリカの高速道路も、都市部はとにかく混雑するわけですが、この「バスレーン」は基本的にいつも空いています。
ただし「バスレーン」を走れるのは、1台の車に複数人数が乗っている自動車か、文字通りバスだけです。アメリカは自動車社会なので、普通は1台に1人しか乗っていません(こうした車が違反してバスレーンを走ると、日本円にして100万円を超える罰金を科せられますから違反する人はいません)。
この様なアメリカで、カリフォルニア州などは「プリウスであればバスレーンの通行もOK」といった法律改正を行います。こうしたこともあり、世界一の自動車市場である北米でもプリウスは飛ぶ様に売れる様になりました。
その一方、GMやダイムラー・ベンツなど、欧米の主要自動車メーカーはトヨタの知的財産も含め、ハイブリッド車の技術を徹底的に調べたといわれます。そして結論として「日本のハイブリッド車技術を抜くことは困難」と判断し、EVシフトでゲームチェンジを行うルールづくりを決断したといわれます。
また2015年になると、欧州のフォルクスワーゲンが行っていたディーゼル社の排気ガス不正が大問題になります。それまでEUでは「ディーゼル車はガソリン車よりもクリーン」と売っていたわけですが、この前提が完全にひっくりかえったわけです。この事件もEVシフトを後押ししました。
そしてEVシフトが決定的になるのは2017年です。この年の3月、米国の石油王として有名なデイビッド・ロックフェラー氏が101歳で死去します。
同じ年の7月、英仏両国が「2030年までにエンジン車の新車販売を禁止」と発表。米国カリフォルニア州や中国、ノルウェーも追随します。
このEVシフトに関連する「ブロック経済」を推進する各国の法規制として、大きく次の3つが挙げられます。
1)EU:欧州バッテリー同盟
EU域内で流通するEVのバッテリーは、EU域内で製造されたものでないと、EU域内で再生・流通させることができない。事実上の非関税障壁といえます。
2)米国:インフレ抑制法
米国は今後約8.8兆円以上を投資して、EV充電ステーションの設置や、EVを購入するにあたっての補助金に充てる。ただしEV購入時に補助金が適用されるのは、北米で生産されたEVに限る。またバッテリーについても、その4割以上が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされなければならない。これも事実上の非関税障壁です。
3)EU:国境炭素税
脱炭素への取組みが不十分な国、あるいは企業の製品をEUに輸出する際に、相応の関税をかける。
制度の対象になる可能性が高い中国やロシアが反発、米国や日本も警戒している。
こうした現象を昨今では「グリーン地政学」というそうです。
コロナ前までの“グローバル時代”は、製品の性能の優位性や価格競争力が全てだったわけですが、これからのコロナ後の“ブロック経済時代(=フレンドシェアリング時代)”は、製品の優位性だけでは勝負することができず、国家間の合意形成やルールに大きく影響を受ける、ということなのです。
2023年の経営のキーワードは「分散」と「複合」
こうした中、船井総合研究所が昨年末から注力しているテーマが「地域コングロマリット化」です。
その趣旨としては大きく次の4つです。
1.これまでの主力事業だけに囚われず、次世代に伸びて儲かるビジネスモデルに今から投資をしておくべき。
2.いわゆる〇〇ショック、□□危機、に揺るがないために、単一事業だけでなく、複数の主力事業を抱え、リスク分散をしながらも相乗効果を生む「コングロマリット」に挑戦すべき。
3.新規事業も単体の収益性だけでなく、まとまりのある「事業群」として捉え、より優秀な人財が集まり、成長性と社会性を兼備した、グループ経営を行うべき。
4.これまでの商圏を大切にしながら、地域の雇用・経済効果にこだわり、地方創生を志す地元人気企業を目指すべき。
と、いうことです。
これらは主に、地方(ローカル)の消費者対象ビジネス(BtoCビジネス)を前提に記述されていますが、我々生産財業界についても基本は同じことです。
部品加工業やセットメーカー(装置業)、あるいは生産財商社の場合は、上記の要素に加え、
5.特定顧客、特定業界依存からの脱却
6.自社内の特定キーマン、属人依存からの脱却
といった要素が加わると思います。
いずれにせよ、その根本思想はリスク「分散」であり、リスクを分散するための事業の「複合」化であるといえます。
そう考えると2023年の経営のテーマは「分散」と「複合」ということになるのではないでしょうか。
例えば今、躍進している生産財業界の会社の1つに、日本電産があります。
同社が行っている事業展開は、従来の「多角化」とは異なる「複合化」あるいは「専業化」といわれる事業展開です。
従来の「多角化」というのは、例えば製造業が本業とはシナジーがほとんど見られない飲食店やトレーニングジム等を手掛ける、といったケースです。
これに対して「複合化」というのは、前述の日本電産であれば、
・パソコン用のモーターだけでなく、車載用モーターも手掛ける
・車載用でも、ミラー駆動など自動車部品だけでなく、eアクスルといった本体駆動源も手掛ける
・さらにはモーター、あるいは減速機を生産するための工作機械事業も手掛ける
といった流れです。
日本電産は日本を代表する様な大企業ではありますが、我々、中堅・中小企業においても、自社なりに上記1.~6.に取組み、さらにリスクに揺るがない、さらに高収益の会社を目指していくべきでしょう。
特別企画!セットメーカー向け「部品加工事業」講座(無料お試しご参加あり)のお知らせ
こうした中、私たち 船井総合研究所 ものづくり経営研究会 では、セットメーカー(装置業、自動機・省力化設備製造業、エンジニアリング会社)の経営者の皆様を対象として、
・セットメーカーの為の「部品加工事業」の進め方
についての特別講演の場を企画いたしました(無料お試しご参加あり)。
特別講演のゲスト講師は、徳島県阿南市に本社・工場を置くセットメーカー、株式会社岡部機械工業 代表取締役 星場 俊之 様 です。
同社は従来からの事業である自動省力化機械 設計・製作・据付に加え、新規事業として「部品加工調達代行」事業をスタートします。
同社の部品加工調達代行事業について
https://okabekikai.co.jp/buhin-kakou/
さらに2021年5月には部品加工会社のM&Aを行い、さらに同社の部品加工事業を強化しています。
セットメーカーにおける部品加工事業のメリットは次の通りです。
1)設計者のキャパに依存せず、売上をつくることができる。
2)自社設備だけでなく、外注メインでの事業が可能である。
3)従って、設備投資を行わなくても売上を伸ばすことができる。
4)本業の装置業とのシナジー効果が高い。
5)手離れが良い。
6)半導体・スイッチ・アンプ・リレー・モーター等の部品不足の影響を受けない。
7)不況の際のリスクヘッジになる。
かたや、課題としては次の様なことがあります。
課題1:本業の装置業より単価が安いので、いかに売上を大きくするのか?
課題2:いかに価格競争に巻き込まれない様な事業展開を行うのか?
課題3:いかに社員をその気にさせるのか?
と、いったことです。
そして今回、実際にセットメーカー経営者として「部品加工事業」を手掛ける、株式会社岡部機械工業 代表取締役 星場 俊之 様 より、こうしたセットメーカーの「部品加工事業」のポイントをお聴きするまたとない機会です。
なお、下記 ものづくり経営研究会 2023年2月度 定例会総会 につきましては、1社1回限りにつきまして、無料でのご参加(無料お試しご参加)が可能です。
<無料お試しご参加可能:ものづくり経営研究会 セットメーカー経営部会 2023年2月度 の概要>
日時:2023年 2月10日 金曜日 12時30分~16時30分
場所:船井総合研究所 東京・丸の内本社
メインテーマ:
我が社は何故、”装置業デジタルマーケティング”と、
”部品加工ビジネス(M&Aも含む)”に、今、取組むのか?
特別講師:株式会社岡部機械工業 代表取締役 星場 俊之 様
<講師プロフィール>
同社は徳島県阿南市に本社・工場を置く、従業員95名の自動機・省力化機械メーカー。
“僻地(へきち)”ともいえる地方都市に所在しているが故に、特定顧客・特定業界に依存しがちな収益構造となることに経営的な危機感を感じ、営業DXを導入して「会わずに売れる仕組み」の構築を開始。毎回70人前後の新規集客を実現しているオンライン技術セミナーの開催、自社新商品戦略で遠隔地の新規顧客から4700万円もの装置受注を実現するなど、成果を上げている。また「設計者の手をわずらわせない」新規事業(部品加工調達事業)を手掛けるなど、コロナ禍の中でも業績を落とさずに推移している。
「第9回 四国でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞するなど、同社の取組みは広く注目を集めている。
開催形態:今回の定例会(講演会)は、船井総合研究所 東京・丸の内本社での
リアル開催となります(オンライン開催ではございません)。
↓↓↓ 本定例会(上記特別講座含む)の 無料お試しご参加 のお申込みはこちら
https://seizougyou-koujoukeiei.funaisoken.co.jp/event/subcommittee/10611/
↓↓↓ 本件へのお問合せは、下記メールアドレスまでどうぞ
kazuya_katayama@funaisoken.co.jp
繰り返しにはなりますが、今回の特別講座は、弊社 東京・丸の内本社でのリアル開催となります。
従いまして、株式会社岡部機械工業 代表取締役 星場 俊之 様のお話を生で聞いていただき、また、質疑応答等で直接、お話いただける機会もございます。
何より、今回の ものづくり経営研究会 2月度 定例会総会 では、全国から100社前後もの 部品加工業、セットメーカー、生産財商社 の経営者の皆様がお集まりになられ、全国の同業の経営者の方と人脈形成をいただくことはもちろん、業績アップモデル事例を、その場でお聴きいただくチャンスでもございます。
本特別講座を含む、定例会総会への無料お試しご参加は、下記からお気軽にお申込みください。
また、本件についてのあらゆるお問合せ、ご質問も、下記メールアドレスからお気軽にお願いいたします。
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