「2030半導体の地政学」戦略物資を支配するのは誰か
今、ビジネス書でベストセラーとなっている本に「2030半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か」
(太田泰彦 著 日本経済新聞出版)が、あります。
同書によると、2021年4月12日午後、ホワイトハウスで半導体CEOサミットが開催されたそうです。
この半導体CEOサミットには、バイデン大統領以下、政権中枢メンバーに加え、グーグル、GM、フォード、インテル、マイクロン・テクノロジーといったビッグテック企業に加え半導体メーカー、さらに全ての自動車メーカーCEOが参加したそうです。
なぜ、半導体CEOサミットにGMやフォードなど、自動車メーカーのCEOも参加しているのか?
それは、自動車産業が半導体産業における最も大口のユーザーだからです。
半導体の全世界での市場規模は約5兆円。これに対して自動車の市場規模は約300兆円。
いかに自動車産業が巨大産業であるかが、わかります。
さらに現在の内燃機関からEVになると、自動車の市場規模は2030年には約800兆円にもなるといわれています。EVは今や誰もが注目している成長市場なのです。
ソニーのEVをつくった、オーストリアの知られざる巨大企業
EVはソニーが市場に参入したことで、あらためて成長産業として注目されています。
では、実際にソニーのEVを製造したした会社はどこか?
それは、オーストリアに本社を置く、マグナ・シュタイアーという自動車を専門とする受託メーカーです。
マグナ・シュタイアーはもともと、フォルクスワーゲンなど、ドイツの完成車メーカーの部品を手掛ける下請け企業だったといわれています。ところがその後、M&Aを繰り返して成長。近年では完成車まるごと受託することができる能力を誇ります。トヨタのスープラをはじめ、ベンツやBMWの高級車もOEM生産していることでも知られています。
そしてこの、マグナ・シュタイアー社。2005年には従業員1万人そこそこの会社でしたが、現在では全世界になんと15万人もの従業員を擁する巨大企業に成長しています。
そんな会社が、ソニーのEVを製造しているのです。
かつて携帯電話(スマートフォン)の市場でフォックスコンが登場した時もそうでしたが、産業構造が変わる時には突然こうした巨大企業が現れ、市場の主導権を取っていきました。
自動車産業もそうなりつつある、という視点とこれからの時流の先取りは必須だと思います。
半導体産業のサプライチェーンを押さえる米国のシナリオ
さて、同書に話を戻すと、いまや「戦略物資」となった半導体のサプライチェーンを押さえるため、米国は国策として半導体産業の主導権を取るために全精力を傾けています。
同書によると、半導体主要技術における米国のシェアは次の通りです。
・半導体チップ 51%
・設計ソフト 96%
・要素回路ライセンス 52%
・半導体製造装置 46%
・ファウンドリー 10%
・製造後工程 29%
・ウエハー -
一般論としてシェアが30%を超えると、その市場の主導権、価格決定権を持てる様になる、といわれています。
上記の中で、いわゆる実際に半導体を製造するプロセスを担うのがファウンドリーで、この分野は台湾のTSMCという会社が圧倒的世界トップです。なぜTSMCが世界トップといえるのかというと、世界で最も微細な半導体をつくることができるからです。
「ムーアの法則」というのをご存じの方は多いと思いますが、ムーアの法則とは、
・半導体は実装密度が2年間で2倍、価格が1/2になる
という経験則です。つまり半導体の性能が上がれば上がるほど実装密度が上がるわけです。
現在、台湾のTSMCは、回路の線幅が4ナノ(1ナノは1/1000ミクロン、1ミクロンは1/1000)の半導体を製造することができます。ちなみに、インフルエンザウイルスの直径がだいたい100ナノですから、この、4ナノというのがいかに微細な技術か、ということがわかると思います。
アメリカのインテルですら6~7ナノ、中国のファンドリーだと10ナノクラスの半導体しかつくれないそうですから、TSMCの技術力の高さがうかがえます。
米国は、このファウンドリーの部分をテコ入れすべく、
・TSMCをアリゾナ州に誘致
・インテルもチップ事業だけでなくファウンドリー事業に参入
と、いう施策をとっています。
米国は「半導体を制する者が世界を制する」という考え方のもと、半導体の全てのサプライチェーンを米国、あるいはその同盟国に集約して、安全保障を確保する戦略を国家ぐるみで進めているのです。
サプライチェーンの再編は大きなビジネスチャンス!
この様に自動車産業も半導体産業も、産業構造の変革に伴い新たなサプライチェーンが構築されようとしています。興味深い動きは自動車産業も半導体産業も、「完成品メーカー」ではなく、「下請け企業」あるいは「部品メーカー」が主導権をとりつつある、ということです。
自動車産業でいえば、前述のマグナ・シュタイアー社はいわば下請け企業です。
また自動運転で主導権を取るドイツのボッシュやコンチネンタルは部品メーカーであり、EVのキーコンポーネントであるeアクスルで攻勢をかける日本電産も、部品メーカーです。
また半導体産業でもTSMCはファウンドリーで、いわば下請け専門の会社です。インテルもCPU完成品事業だけでなく、ファウンドリー事業に乗り出します。つまり完成品メーカーがわざわざ下請け企業になろうとしているのです。
船井総合研究所 ものづくり支援部では、「ものづくり経営研究会」という部品加工業・セットメーカーを対象とした経営の勉強会を15年以上継続し、会員企業様も全国に150社を超えていますが、数多くの会員企業様が営業利益率10%を突破し、なかには営業利益率20%に肉薄している会員様もおられます。
受託型製造業(下請け)であっても、そのコンセプトやビジネスモデル次第では十分に儲けることができるのです。
特に昨今では、前述の通り「サプライチェーン再編」の動きもあってか、
- EV用バッテリー製造装置メーカーから、月次1000万円を超える製缶品の新規受注に成功した部品加工会社
- 従来の金属部品の樹脂化に伴い、数百万円の新規金型と月次数百万円の成形品の新規受注に成功した部品加工会社
- 車載用電子部品の省力化設備を、新規開拓オンラインセミナーをきっかけに受注できた自動機・省力化機械メーカー
などEVがらみ、あるいは車載用も含めた半導体がらみで、新規受注に成功している事例が数多くでてきています。こうした各社は3ヶ月ほどで構築することができる、デジタルマーケティングを活用したビジネスモデルを構築することで、上記の様な成果に結びつけています。
こうした成功事例を中心に、いかにEV・半導体・脱炭素マーケットなど、サプライチェーンが再編されつつある成長市場から仕事を取っていくのか、そうした具体的な手法・ノウハウをお伝えするのが下記の経営セミナーです。ぜひ下記URLから詳細をご覧いただき、ご参加をご検討いただければと思います。
自動車部品メーカー向け:内燃機関からEVシフトに備える新規開拓・新規顧客開拓セミナー
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/081781
部品加工業向け:EV・半導体・脱炭素マーケット攻略セミナー
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/082260
自動機・省力化機械メーカー向け:EV・半導体・脱炭素マーケット攻略セミナー
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/083685
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