2021年3月末時点の製造業の市況
前回のレポートでもお伝えしましたが、今年に入り製造業は全般的に活況です。
私の感覚では現時点(2021年3月末時点)で、
・全体の1~2割・・・過去最高のレベルで売上が伸びている
・全体の6割くらい・・・コロナ前に戻ったレベルで売上が伸びている
・全体の2割・・・相変わらず業績的には厳しい
と、いったところではないでしょうか。
そしてかねてから申し上げている通り、現在伸びている市場、あるいはこれからも確実に伸びる市場は次の5市場です。
- CASE(次世代自動車)マーケット
- 半導体・5G関連マーケット
- 自動化マーケット
- 中食・巣ごもりマーケット
- 脱炭素(GX:グリーン・トランスフォーメーション)マーケット
そして、特に現在動きが著しく顕著なのが上記1.CASEマーケットです。
EVで塗り替わる勢力図:150兆円の新たな市場が生まれる
英国やフランスをはじめとする多くの国で2035年を目途に、ガソリン車やハイブリッド車などエンジンを搭載した自動車が販売禁止になります。間違いなく近い将来にハイブリッド車も含むガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが現実のものになるわけです。
そしてガソリン車がEVになると、部品点数が半分になります。
「部品点数が半分になる」と聞くと、自動車の市場規模は縮小する様に感じますが、実際には逆です。
米国の技術系コンサルティング会社、アーサー・D・リトルによると、現在の自動車産業の付加価値は209兆円。これがEVになると、なんと付加価値は360兆円になるといわれています。
部品点数は半分になりますが、自動車の市場規模(付加価値)そのものは増えるのです。
<アーサー・D・リトルによる全世界の自動車産業の付加価値比較>
・現在のガソリン車の場合 ・・・209兆円
・全てがEVになると ・・・360兆円
なぜならガソリン車よりもEVの方がコストは高いからです。
ガソリン車全体のコストを100とした時、ガソリンエンジンに関わるコストは45くらいだそうですが、EVになるとここのコストが119と2倍以上に跳ね上がるそうです。
ガソリン部分コスト45の内訳
・エンジン 20
・吸気系 1
・排気系 1
・燃料タンク・配管 2
・トランスミッション 13
・冷却・空調 6
EV専用部分コスト119の内訳
・バッテリー 90
・モーター 5
・インバーター・充電器他 12
・高電圧ハーネス 3
・減速機 2
・冷却・空調 7
つまりガソリン車からEVへのシフトによって、製造業においては実は新たなビジネスチャンスが目の前に大きく広がっているのです。
CASEで儲かる会社、衰退していく会社
もちろんEV化によって需要が衰退するマーケットも多々あります。
例えばベアリング。ガソリン車がEVに切り替わると、主に変速機向けのべアリングが3割減少するそうです。ただし車載モーター向けの需要が増えるため、金額全体でみると15%減になるといわれています。
つまりCASEによって、
・自動車マーケットはさらに拡大する
・ただしプレイヤーの多くが入れ替わる
と、いうことなのです。
こうした動きを受け、某大手空圧メーカーでは営業担当者を一斉に転勤させ「内燃機関以外のマーケットを攻めろ」と大号令がかかっているそうです。
従来のボリュームゾーンはエンジンですから、空圧機器を使用する自動機も多くがエンジンに関わっています。
この時、営業担当者をそのままにしておくと、従来からの惰性でやはり同じ客先に通い続ける。気が付いた時には手遅れ、ということになりかねない。そこで営業担当者を転勤させて「新しい顧客」に行かざるを得ない状態をつくりだせば、おのずと新規開拓が促進される、と、こうした話の様です。
これはCASE/自動車産業の話だけではありません。
例えば前述のこれからの伸びる5大マーケットの1つ「脱炭素マーケット」の場合でも、
・水素製造プラント
・アンモニア製造プラント
・風力発電/それに伴うインフラ
・太陽光発電/それに伴うインフラ
・その他
など、従来になかった技術分野が急拡大することは間違いありません。
また伸びる5大マーケットの代表格である「自動化マーケット」。
例えば最近、私の関係先の板金加工業では「デジタルサイネージ」に関わる板金の仕事が急増しています。
つまり従来は手書きの値札やポスターを貼っていたショッピングセンター等が、こうした紙による広告をやめてデジタルサイネージに切り替えているのです。これもいわば「自動化」です。従来は人が貼り換え作業を行っていたのをデジタルに切り替えるわけです。
これからの営業の中心媒体はインターネット
そして新しいサプライヤーを探すバイヤーの多くがインターネットを活用しています。
実際、前述のCASEや自動化に関わる特定キーワードの検索ボリュームは、この1年ほどで2倍近くに増えています。つまり、それだけインターネットで新技術・新サプライヤーを探す検索が増えている、ということなのです。
新しいサプライヤーを探すにあたって、バイヤーがインターネットを活用している理由は次の5つです。
1.バイヤーの世代交代。
特に大手企業のバイヤーは30代~40代前半。ガラケーしか使えない世代は引退しており、限りなくデジタルネイティブな世代がサプライヤー選定に関わっており、おのずとネットが中心になっている。
2.従来の人脈が役に立たない
抜本的に技術の中身が異なるので、従来の取引先に相談しても対応できない。つまり「従来の人脈」が役に立たなくなってきており、新たな取引先をつくらざるを得ない状態になっている。
3.コロナで展示会に行けない
先般、関西で機械要素系の大型展示会がありましたが、従来であれば10万人の来場者が来るところ、今回はわずか9000人しか来場しなかったそうです。リアル展示会インターネットへのシフトが進んでいる。
4.大手企業を中心に在宅勤務が増えた
大手企業ほど在宅勤務にシフトしています。その結果、おのずとインターネットに向き合い、インターネットで情報収集をする機会が増えている。富士通をはじめ大手企業は在宅勤務を今後も継続する意向を示している。
5.インターネット技術が飛躍的に高くなった
今や動画の閲覧など、昔と比べるとインターネット環境が飛躍的によくなっている。リアルで確認をしなくても、インターネット上で大部分の確認が行える様になっている。
こうしたトレンドの変化の結果、こうした世の中の動きに対応した「デジタルマーケティング(=営業DX)」に早い段階から取組めている製造業は大きな成果につなげています。
例えば千葉県に本社をおく株式会社カネコ(従業員30名:冷間鍛造二次加工)の場合、従来は内燃機関向けの仕事が大半であった中、デジタルマーケティング(営業DX)による新規開拓も功を奏し、コロナ禍の2020年12月は過去最高の売上を達成しています。
↓↓↓ 8分の動画でわかる!株式会社カネコの営業DXの取組み
また、群馬県に本社をおく岡部工業株式会社(従業員142名:板金加工業)の場合、従来はATMの筐体を中心とした板金加工の仕事を行っていましたが、今後のキャッシュレスの流れを受けてATMの仕事が激減すると判断。早い段階からデジタルマーケティング(営業DX)に取組み、5G関連の成長市場から新規取引を獲得するなど、大きな成果をあげています。
↓↓↓ 8分の動画でわかる!岡部工業株式会社の営業DXの取組み
この様に、冒頭に述べた通り、あらゆる業界の「勢力図が変わる」あるいは「プレイヤーが変わる」以上、製造業としては従来の生産現場の改善、あるいは生産現場のDXから、
マーケティング活動への本格着手、デジタルマーケティングの導入や営業DXへの取組みを最優先に行っていくべき時代になったといえます。
この時、生産現場の改善、あるいは生産現場のDXというのは世の中に事例も数多くあり、進め方のセオリーがおおよそ決まっています。
ところが営業まわりの改善や、営業まわりのDXというのは1社1社中身が異なる上、まだまだ世の中に事例も少ないのが現実です。
それでは、まだ、営業DXに未着手の製造業は何から取り組めばよいのか?
次のレポートで具体的にお伝えしたいと思います。
~次回に続く~
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