「不要不急」の会社にならない
1月も後半に差し掛かり、製造業あるいは生産財商社の業界も少し動きがみられる様になってきました。
例えば、
・某専用機メーカーにおいて、1月に入り急に商談が増えた。大手自動車部品メーカーがコロナの様子見で設備投資を止めていたが、いよいよ止め切れず設備投資を再開した。
・大手工作機械メーカーが北米向け大型ラインを受注した。それに伴い発注が増える。
・半導体関連の動きがかなり好調であり、関連設備向け部品加工の仕事が外注を使っても対応しきれないくらいに入ってきている。フル稼働の状態である。
・巣ごもり消費の影響か、マットレスの需要が伸びている。省人化に対応した新ラインをひくために、億単位の引合いが入ってきている。
・従来はパートや派遣社員に作業をさせていた工程を自動化することにした。その結果、製函機・封函機によるライン受注が増えており、前年対比を大きく上回る勢いである。
と、いった具合です。
実際の売上にはまだつながらないが、かねてから色々な仕掛けをしてきた会社には具体的な商談が増え始めている、といった感じではないでしょうか。
ここにきて大都市圏では緊急事態宣言が出され、普通の動き方をしているだけだと「コロナなので訪問を控えてほしい」となるのがオチです。
「不要不急」という言葉があります。今やらなければならないことは「不要不急の会社」と見られるのではなく、「必要であり、今来てほしい会社」と見られることです。
その為には、今、動いているマーケットに対して効果的な情報発信を行い、お客様の側から「ちょっと相談したいことがある」と言ってもらえる動きをかけることです。
今、好調な4つのマーケット
では、今、好調なマーケットとはどの様なマーケットか?
それは前回のレポートでもお伝えした次の4業種です。
- CASE(次世代自動車)市場
- 5G・クラウドにからむ半導体・電子部品市場
- GX市場
- 自動化・省人化市場
実際、ここにきて新聞誌上では「半導体が足りず、自動車の生産ができない」現状が大きく取り上げられています。ちなみに内燃機関からEVへのシフトが懸念される自動車業界。自動車業界の全世界の市場規模は約400兆円といわれていますが、自動車の進化系であるMaas(モビリティ・アズ・ア・サービス)の2050年の全世界の市場規模は900兆円にも拡大するといわれています。
EVに必要なスタンドの整備や電力システムの整備、また必要なソフトウェアをIoTあるいはクラウドで対応させるための通信施設やデータセンターの費用など、エンジンが無くなる分その他の周辺産業が広がるという構図が明確に見えています。
大事なことは、これら「これからのマーケット」から、いかに仕事を取るか?ということです。
徹底したデジタル分析で成果につなげるK社の取組み
営業マンや人脈を持たない中小製造業にとって、こうした「これからのマーケット」にアプローチする最も有効な手段はデジタルマーケティングです。
例えば京都市に本社工場を置く部品加工業、木村製作所(従業員30名)様はデジタルを活用して非常に興味深い取組みを行い、大きな成果につなげています。
まず同社では、もともと旋盤加工+マシニング加工+研削加工のワンストップ対応を売りとして、主にスピンドル部品に代表される精密加工をメイン事業として手掛けていました。
<従来のメイン事業>
その中で、同社の主要な加工ノウハウである研削加工技術を発展させた、ナノ加工(超精密加工技術)を新規事業として数年前に立ち上げました。
同社のナノ加工技術とは、従来は手作業で行っていたレンズ金型の磨き工程を、超高精密マシニングセンタや超高精密CNC旋盤によりナノ加工に置き換えるという技術です。
<数年前に立ち上げた新規事業:ナノ加工技術>
そして、こうしたナノ加工(超精密加工)の仕事を獲得するために立ち上げたソリューションサイトが、
同社の「超精密・ナノ加工センター.COM」です。
このサイトは寸法公差でいうと0.5μmクラスの仕事を狙って立ち上げたサイトでしたが、実際に引合いとして多い仕事の中身は、従来手掛けている精密機械加工の寸法公差3μmレベルの仕事と、この0.5μmクラスの仕事の、ちょうど中間領域の仕事が多いことがわかってきました。
また、この領域の仕事であれば既存事業の工作機械と、新規事業の超高精密工作機械とを連動して使用することができ、ひいては両事業の稼働率を上げることができることもわかりました。
つまり同社として狙うべき領域が明確になってきたのです。
<明確になった狙うべき領域>
そして、この狭間マーケットこそ、まさに現在動いている半導体関連、5G関連のマーケットでもあるのです。
さらに、現在のデジタルマーケティングの技術の進展は日進月歩の勢いです。
例えば今、自社のホームページにどの様な会社の人がアクセスしているのか、無料のツールで把握することができます。例えば自社が半導体業界から仕事が取りたいのだとします。このツールを使って自社のホームページを診断すると、例えば過去1ヶ月間にどの様な会社が自社のホームページに訪れていたかがわかるのです。
(一昔前は、こうしたツールは高価な月額費用が必要でしたが、現在は無料のツールがあります)
木村製作所でも同ツールを使用して自社のホームページを診断したところ、「超精密・ナノ加工センター.COM」に対しては、光学系のメーカーなど、ナノ加工として狙いたい会社の人がアクセスしていたことが確認できましたが、従来事業を告知する従来のホームページには、狙いたい5G・半導体関連の会社からのアクセスがほとんど見られないことがわかりました。
そこで同社では、こうした今動いている半導体・5G関連の会社をターゲットとする新たなソリューションサイトを立ち上げることを決断。それが下記の「研削・切削加工コストダウンセンター.COM」です。
両サイトが立ち上がった結果、相乗効果でアクセス数が増え、特に新サイトの方は昨年7月に立ち上がってからわずか1ヶ月で1000アクセス/月を突破。約1年間で両サイトからの累計問合せ数は150件を突破しています。
さらにその結果として、
- 一部上場 非鉄金属メーカー
- 一部上場 コネクタメーカー
- 一部上場 産業機械メーカー
- 一部上場 光源メーカー
との直接取引に至っています。この様に木村製作所様の取組みは、デジタルを徹底活用して自社の技術へのニーズを分析し、かつ成長市場から仕事を取ることに成功した事例であるといえます。
前述の通り、我々もコロナ非常事態宣言の結果、リアル営業活動が行えませんが、逆に言えばお客の側もリアル展示会に行くこともできず、リアルの場でサプライヤーを探すことがしにくくなっているわけです。
しかし前述の通り、開発を進めなければならない半導体・5G関連のエンジニアからすれば待った無しの状態であり、その中で従来にも増してインターネットを活用している、というのが今という時代の時流です。
繰り返しになりますが、お客の側もデジタル(=インターネット)の場を活用している。そこに前述の様な様々なデジタル分析ツールを活用して、自社が打つべき施策につなげていくということが、コロナ禍だからこそ有効である、ということがよくご理解いただけるのではないでしょうか。
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