自動車急回復?5G案件が動く?11月に入って変化する市況
10月がおわり11月に入り、市況も大きく変化してきました。
具体的に、自動車関連の業界が急回復をみせ、また半導体・電子部品業界も5Gを睨んで具体的な動きがでてきた様に思います。
具体的な事実を列挙してみると、
- 5G向け半導体前工程製造装置(WFE)の2020年出荷高は、前年比10%超で過去最高。NAND型フラッシュメモリーの需要は前年対比50%増を見込む。
- 東京エレクトロンの河合社長によると「2021年、22年は、2020年をさらに上回るビッグイヤーズの年になる」
- 信越化学工業は今年7-9月期、半導体ウエハー直径300mm品出荷量が四半期として過去最高を記録。
JSRは4-9月期の半導体材料売上高が前年同期比13%増。
三菱ガス化学は半導体パッケージ材料の生産を、同社タイ工場で2022年には現行比数割増強の設備投資を行う。 - 世界最大の半導体受託製造業である台湾TSMCは、今年通期の売上高を前年対比30%増に上方修正。
- 韓国サムスン電子は、今年7-9月期の営業利益が前年同期比82%増。
- CASE(次世代自動車)の伸びを背景に、車載部品の需要が戻ってきている。京セラの谷本社長は「自動車部品の需要は2020年度下期に100%近くまで戻りそうだ」とコメント。
- 日本電産は2020年4-9月期の業績見通し売上7000億円・営業利益550億円に対し、実績(着地)として売上7517億円・営業利益691億円と大きく上振れ。同社永守会長は「今後EV普及が加速し、2030年ごろには市場の5割を超える」「価格は現在の1/5に下がる」とコメント。
その結果、上記で述べた様な大企業だけでなく、いわゆる中小企業においても業績の変化がみられています。
例えば京都市に本社をおく生産財商社K・マシン(従業員37名)の場合、この10月の売上は前年対比プラスで着地。下期全体では前年対比横ばいからプラスを狙って、営業戦略を練っています。同社の場合は京都エリアという土地柄、電子部品や半導体業界の需要が追い風になっています。
また私の関係先で従業員120名の射出成形を手がける某社も、ここ数週間で大型受注が決まり、デジタルマーケティングに取組んで2年弱ほどで新規顧客からの受注1億2000万円、さらに新規商談に至っては約10億円もの商談を創出することに成功しています。
さらに自動車部品・建材部品を手掛ける従業員200名の某社も、4~8月の売上が大きく落ち込み年末の決算が危ぶまれましたが、この10月以降の受注が好調で黒字決算で着地することは間違いありません。
これら3社は、前回のレポートでご説明した「営業DX」に取組み、取り入れることで成果を上げています。「DX」とは「デジタルによりビジネスプロセス(=仕事の進め方)を変え、業績上げるための取組み」のことです。
繰り返しになりますが、DXの最大のポイントは“ビジネスプロセスを変える”ところにあります。
従来の仕事の進め方を変えずに、ただデジタルを取り入れるだけの“デジタル化”と、仕事の進め方そのものを見直す「DX」とは発想や進め方が根本的に異なります。
実際、ではこのまま景気が回復基調に続くのかというと先行きは基本的に全く不透明であるといえます。
例えばアメリカの大統領選挙。
バイデン氏が正式に当選すると、トランプ氏が離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰する意向であり、自動車の環境規制はより厳しくなり、EVへの流れはさらに加速するでしょう。バイデン氏は今後10年間で環境投資を1000兆円以上積み上げるとしており、その規模はかつてのニューディール政策以来の大規模なものになるとされています。
ただし、アメリカの大統領選挙はまだ正式な結論がでていません。先週号のニューズウィーク日本語版によると、中国がアメリカ大統領選挙に介入し、影響を及ぼしている可能性についてトップニュースとして報じていました。同誌によるとバイデン氏の息子が経営する会社が、中国のエネルギ―企業と不透明な関係にあることが言及されています。トランプ氏はこうした事実を盾に最後まで法廷闘争を行う構えとみられ、世界経済の不安定要因の大きな要素となることは間違いないでしょう。
全ての経営者が読むべき1冊「グレート・リセット」
こうした先々を見通す上で、全ての経営者が読むべき1冊だと私が思うのは、この10月26日緊急出版された「グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界」クラウス・シュワブ 著 日経ナショナルジオグラフィック社 です。
同書は“ダボス会議”を主催する世界経済フォーラムの代表、クラウス・シュワブ教授による著書です。
“ダボス会議”は日本でも有名ですし、全てのビジネスマンが注目する会議ですが、この会議を主催している“世界経済フォーラム”が現在のコロナ禍を予測していたという事実はあまり知られていません。
コロナが世界的な流行をみせる直前の2019年10月18日、この世界経済フォーラムとビル&メリンダ・ゲイツ財団、そして国連やルフトハンザ航空が主催して「イベント201」という企画がニューヨークで開催されました。「イベント201」とはシミュレーション演習の企画であり、世界的なパンデミックが発生して18カ月間で6500万人の死者が発生、世界経済が大暴落に追い込まれていくことを前提としたものです。
そして「イベント201」開催のわずか6週間後に新型コロナウイルスが発生しており、まさに現在のコロナ禍を予測していたともいえる人物の著書が、この「グレート・リセット」なのです。
同書では主に次の様なことが述べられています。
1)少なくとも今後18カ月から24カ月は新型コロナウイルスの活発な活動期が続き、
その間に世界の様々な地域でホットスポットが周期的に発生することを想定して準備するべきである。
2)コロナがおわっても、コロナ前のノーマルな生活は戻らない。元通りにはならない。
世界を1度リセット(=グレート・リセット)して、新しい常態をつくる必要がある。
3)従来の「資源の投入、生産、廃棄」モデルから、「復元可能、再生可能」モデルに切り替えが図られる。
自然を優先する経済(ネイチャーポジティブ)が図られ、ESGがさらに重視される。
4)アフターコロナは、グローバリゼーションではなく脱グローバリゼーションでもなく、その中間の解決策、
地域化(リージョナリズム)の実現性が高い。例えばEU、NAFTA、TPP。
アフターコロナの時代には保護主義的な姿勢がいよいよ顕在化する。外国資本による企業買収の防止、
外国への直接投資の規制など。
5)世界を主導するリーダーがいない世界。「Gゼロ」の時代か、あるいは「Gマイナス2」(2は米国と中国)
の時代に入る。
6)コロナを契機にあらゆる業界でオートメーション化が進む。レストランの仕事の86%、小売りの仕事の
75%、エンターテイメントの仕事の59%が自動化される。
また産業用ロボットやRPAが、従来以上の加速度で急速に普及する。
7)デジタル化が加速する。オンラインとオフライン両方を備えることが必須になる。
O2O(オンラインからオフラインへ)がビジネスを牽引する。
ロックダウン中に拡大したリモートワークや遠隔医療がパンデミック前の状態に戻ることは無い。
8)今後増えることと減ること
<増えること>
テレワーク、内食、テイクアウト、宅配サービス、食品配達、電子決済、ストリーミング、書籍、
ゲーム、ソフトウェア、近距離観光
<減ること>
商業不動産、外食、ライブ、出張、個人旅行、通勤、航空旅行、公共交通、長距離観光
同書では最後の方で次の様に述べています。
「グレート・リセットをやるのか、やらないのか?リセットは野心的な挑戦だ。野心的過ぎるかもしれない。
それでもやらないという選択肢はない。」
何を、グレート・リセットしなければならないのか?
では、我々中小企業経営者は何をグレート・リセットしなければならないのか?
それは「仕事の進め方」だと思います。
例えばMonotaRO創業者の瀬戸欣也氏が社長を務めるLIXILグループ。
同社は40歳以上で勤続10年以上の正社員、1200名の希望退職を募集する、と発表しました。
ちなみに同社は業績が悪いから、赤字に転落するから希望退職を募るわけではありません。同社はコロナ禍の影響は受けているもののV字回復を果たしており、今期末も黒字決算が確定しています。
では、なぜ中堅社員・幹部社員の希望退職を募るのか?
瀬戸社長は日経ビジネスからのインタビューで「商談をオンラインにシフトすることで生産性が上がっており、それが第2四半期の決算を下支えした」「一部の卸・販売店からは“LIXILは来なくなった”との声もあるが、エンドユーザーは当社の取組みを評価している」そして、
「経営者の仕事は、長期的に見たときに会社が持続的に成長できるように、会社の仕組みを変えていくこと、
変えなければいけない、と分かっているのに、先延ばしにする正当性は一切ない」と応えています。
つまり、過去の仕事の進め方とらわれている、さらに踏み込んだ言い方をすれば変化できない、あるいは成長できないベテランあるいは幹部がネックになりつつある、と遠回しに語っている様に私には感じられました。
瀬戸社長はMonotaRO時代から面識がありましたが、LIXILに転じてからはオーナーに一度解任されながら、独力でLIXILに戻り、社長に返り咲くという極めてサバイバル能力の高い、経営能力の高い人物です。瀬戸社長の率いる同社は間違いなくアフターコロナでも成長を続けることでしょう。
では、中小製造業においてはどの様なグレート・リセットを行わなければならないのでしょうか?
中小企業のそれは、大企業が行うDXとは全く異なるものになると思います。
もちろん、DXのあり方は、各社各社異なります。その会社のDXについて参考として取り入れるべきところは多々ありますが、しかし自社のDXは自社なりの姿を考えていかなければいけません。
ただし業績を上げるためのDXを進めるにあたって、それを進めるための方法論・DX進めるために必要なツールというのは明確に存在します。
船井総合研究所ものづくり支援室では、このような情報を中堅・中小製造業の経営者様向けに発信するためにオンラインセミナーを開催しております。
是非、ご参加をご検討いただければと思います。
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