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7割経済に対処する中小製造業の為の新規事業:部品加工調達代行事業

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これから3年続く?求められる7割経済への対処

 

2020年7月に入り、トヨタ自動車の日当たり生産台数は従来の前年比3割減の状態から、前年比1割減程度の水準に戻る、との報道がされています。

この4月から5月、そして6月と市況は厳しさを増しましたが、6月で底をうって7月の売上見通しは前年対比2割前後くらいの会社の多いのではないか。私の周りをみているとその様な感じです。

 

しかし前回のコラムでも述べた通り、根本的に「7割経済」が3年は続く、そうしたシミュレーションで経営を考えていく必要があります。

 

ちなみに、現在の経済情勢はある種異常です。

例えばインバウンドに関して言えば、この5月は海外からの来訪者が前年比99%減。つまりほぼ0になったというわけです。航空機の利用は壊滅的、新幹線も通常の半分以下の利用状況という明らかに縮小した経済の中で、なぜか株だけは高値を付けています。

この6月末時点での日経平均株価は2万2500円。明らかに実態と乖離した数字です。私が実ビジネスを行っていた期間に限定すると、日経平均株価が最低をつけたのは2003年で、この時の日経平均株価は何と7000円台。

 

これは現在のFRBを始め、日銀など中央銀行が膨大な資金を投じて株の買いオペレーションをかけているからであり、いわゆる経済恐慌を回避するための金融緩和です。

今や日本の上場会社の株式の半分を間接的な形も含めて日銀が保有していると言われています。

歴史的にこれだけの規模の金融緩和がなされたことがありませんから、こうした施策がどの様な副作用を生み出すのかは誰もわかりません。つまりコロナ不況のサバイバルのその先には、過去に経験したことのない経済危機に対してのサバイバルが待ち構えている可能性が高い、ということです。

 

こうしたことも視野に入れて、「7割経済」への対処を行っていく必要がある、ということです。

 

 

7割経済に対処する為の新規事業:部品加工調達代行事業

 

そして今、検討していくべきことは7割経済に対応する為の「新規事業」です。既存事業だけで売上2~3割ダウンに対応するのは極めて困難だからです。

 

その中で具体的に、私がご提案したい今取組むべき「新規事業」は、「部品加工調達代行事業」です。

これは端的に言えば「部品加工」を外注先を活用してこなすビジネス、ということです。そして外注先はできるだけ海外、特に中国に代表される海外が理想的です。

 

ではなぜ今「部品加工調達代行」ビジネスなのか?その理由は次の5つです。

 

理由1)部品加工は必需品である

不況期のビジネスの鉄則は「必需品」を扱う、とういうことです。部品加工は必需品であり、どんなに景気が悪くなったとしても0になることはありません。

しかし例えば工作機械等の装置ビジネスは、売れない時には本当に売れませんし、売れない時の対処法がありません。不況期には厳しくなるビジネスです。

 

理由2)市場規模が大きい

製造業の国内の市場規模は約180兆円です。うち120兆円が部品調達コストによって占められていると言われています。その中でも1/3を占める多品種少量生産業界(主に装置業)の部品調達においては不安定な受発注、発注や見積りにかかる手間、調達コストや生産側の赤字比率の高さが社会課題になっていると言われます。

つまり40兆円が装置業の部品調達の市場規模。一般的に部品加工の比率は装置全部品の1/4と言われますから装置がらみの部品加工の市場規模は約10兆円ということになります。これはかなりの巨大マーケットと言えます。

 

理由3)これからも国内に残るビジネスである

部品加工ビジネスというと「国内の製造業は衰退しているから、もう伸びないでしょう」と思われがちです。

これは「部品加工」という言葉をひとくくりで捉えてしまうことの誤解です。

「部品加工」には次の4種類があることを留意しなければなりません。

1)量産品(=自動車や家電など)の部品加工

2)型式が決まった繰り返し生産の装置(=工作機械など)の部品加工

3)型式が決まていない一品生産の装置(=社内設備など)の部品加工

4)現場の補修品、治具等の部品加工

このうち、1)についてはとっくに生産が海外移転してしまっており、国内だけで仕事をこなすのは厳しいものがあります。

また2)は価格競争が厳しく、また4)はスポット的な取引になりがちで、まとまった金額のリピート受注が困難です。

従って狙うべきは上記3)です。つまり大手優良企業の社内設備を製作している部門から部品加工の仕事を受託する、ということです。

例えば電子部品で世界トップクラスの村田製作所やロームといった優良企業は、社内設備を外から買ってきたりしません。社内設備は社内で設計し、社内で組立てているのです。

ただし部品加工だけは外注しています。そしてこうした社内設備は一品生産が多く、従ってお客の側も部品加工の見積を新たに取らなければならないケースが多く、価格競争になりにくいのです。村田製作所やロームというのは1つの例です。従業員数百名規模のメーカーであったとしても、本当に優良な会社は社内設備を内製しています。

実はそうした会社が国内には数多く存在するのです。

 

理由4)為替リスクのヘッジになる

日本円は国際的に非常に強い通貨です。実際、東日本大震災の時もなぜか日本円は円高となり、輸出企業は苦しめられました。

また日本は政府債務の多い国ではありますが、その債務者の大半は日本国民であり、海外からお金を借りている訳ではありません。それに対して対外債務が高い国は実は米国であり、ドルは今のところ国際基軸通貨ですが、その信頼性については私はクエスチョンだと思っています。

つまり、前述の経済恐慌が起こった時に、円安よりも円高に振れる可能性が高いと私は思います。

その時、例えば中国の加工会社から部品加工を海外調達しておけば、この「円高」がいわばプラスの方向に働きます。

逆に、仮に円安になったとするならば、製造業にとっては輸出が有利になりますから実は何らマイナス要素はありません。製造業あるいは生産財業界が考えておかなければならない為替対策は「円高」への対策です。海外調達はこうした為替リスクのヘッジになる、ということなのです。

 

理由5)実際、部品加工調達代行ビジネスは伸びている

船井総合研究所 ものづくりGが主宰するファクトリービジネス研究会の会員企業の中で、この4月・5月・6月と前年対比でプラスをつけている会員企業があります。

その会社も新規事業として数年前から部品加工調達代行ビジネスを手掛けており、現在は中国を始めとする海外調達を行っています。

他にも、

・3年間で売上10億円が30億円に

・6年間で売上4億円が16億円に

・ここ8年間、毎年1~2拠点ずつ営業所を出店し続ける

といった、信じられない様な事例も実際に存在します。

この背景にはここ数年の、大手企業を中心に進められている「働き方改革」があります。前述の通り、装置部品の調達は数百枚もの膨大は図面を最適なサプライヤーに割り振り、その納期管理や品質管理を行わなければならない、という大変骨の折れる仕事です。そして、こうした骨の折れる仕事を全て外部に委託してしまいたい、そういうニーズが非常に増えてきているのです。この流れはコロナでも変わることはありません。

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