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【成功事例あり】デジタル・シフトが必須な3つの理由

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製造業の市況が急減速?5月の受注が全く入らないケースも

4月も半ばに入り、製造業の市況も大きく変わってきました。

具体的に、景況が急速に悪化し、5月の受注が全く入らなくなってしまった受託型製造業も地方を中心に散見される様になりました。やむをえず社員を休ませ、雇用調整助成金の申請を行う、ところが労基署には申請の電話が殺到しており、全くつながらない状態。また商工中金や日本政策金融公庫など、政府系金融機関の緊急融資にも申し込みが殺到しており、全く電話がつながらない状態。そうした話も複数聞かれる様になりました。

かたや、この3月、4月は過去最高の受注で、その状態が9月までは続く、という見通しの会社もあります。同社の場合は3月になって、北米向けの部品の仕事が急増したといいます。図面は全てインチ表記。どうやら従来は中国に出されていた仕事が日本に転注になった様子で、海外工場のロックダウンによる部品の欠品を恐れて数量を増やしての注文が入ってきているといいます。

ひとえに先が読めない、というのが目下の状態であり、この状態は少なくとも非常事態宣言の発令が決まっている5月ゴールデンウィーク明けまでは確実に続くものと思われます。

 

コロナ非常事態宣言はいつまで続くのか?

こうした状態がいつまで続くのか?未来予測はできませんが、過去から何らかの教訓を学ぶことはできます。

ここで1冊の参考になる本があります。それは 速水 融 著「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ 人類とウイルスの第一次世界戦争」という本です。著者は慶応義塾大学の名誉教授で歴史の専門家です。1918年から世界中で流行したスペイン・インフルエンザ(通称スペイン風邪)は世界で第一次世界大戦の4倍(4000万人)もの死者を出し、日本国内においても当時の人口の1%近くである45万人もの人命を奪ったウイルスです。同書はスペイン・インフルエンザが日本に与えた影響を克明に記述した、ほぼ唯一の専門書です。

同書によると、スペイン風邪はスペインといいながら、最初の患者はアメリカ・カンザス州の米軍駐屯地で確認されています。1918年3月のことです。

その後、米軍の第一次世界大戦参戦と同時にスペイン風邪は欧州にも伝播。西部戦線の兵士も多数がスペイン風邪に罹患して戦場は大混乱に陥ったそうです。

そして7月になると中立国であったスペインで大流行。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカは第一次世界大戦の当事国だったのでインフルエンザが大きく報道されることはなく、はじめて大きく報道されたのがスペインでの流行からであったことから、このインフルエンザは「スペイン風邪」とよばれる様になりました。

そして1918年の秋には日本国内にも感染。当時は軍隊と学校が主なクラスターとなり国内に感染が拡大。現在と同様のパニックに見舞われます。日本国内でも猛威を振るったスペイン風邪ですが、翌年1919年の5月ごろには一旦収束したかの様になったそうです。これが「前流行」と言われた最初の波です。

ところがその年の秋、1919年秋ごろに再び変異したインフルエンザが日本を襲い、2020年春先まで感染拡大が続きます。これが「後流行」といわれた段階です。

ちなみに、今回の新型コロナウイルスは、米海軍の原子力空母内でも5000人の乗組員のうち100名以上が感染するなど海軍の運用にも大きな影響を及ぼしました。興味深いことにスペイン風邪の時も全く同じで、当時は日本海軍の巡洋艦「矢矧」の艦内で集団感染が発生し、約500人いた乗組員のうち大半が罹患して、約1割の乗組員が亡くなられたそうです。

なお、海外都市のロックアウトや、外出禁止令など一連の対応はこの時の教訓によるものだといいます。

 

 

100年前のスペイン・インフルエンザと、今回の新型コロナ・ウイルスの共通点

同書を読んだ上でのあくまでも推察にすぎませんが、今回の新型コロナ・ウイルスと100年前のスペイン風邪が同じ挙動を取るとするならば、5~6月いっぱいで1つの区切りがくるのでしょう。ただしスペイン風邪の時の教訓を踏まえると、やはり秋くらいには変異したウイルスによる第二波がくる可能性が高く、引き続き予断を許すことはできない、油断することができない、ということがよくわかります。

また一連の話はあくまでも日本国内だけの話であり、同書を読むとスペイン風邪が世界の津々浦々まで広がったことがよくわかり、その点は今回の新型コロナ・ウイルスと同じです。世界レベルでの混乱は、スペイン風邪の時と同様に日本国内のそれよりもさらに長く続くものと推察されます。

ちなみに100年前のスペイン風邪の時には、世界の産業構造を大きく変えるゲーム・チェンジが起きました。

それはエネルギーの「石炭」から「石油」への転換です。ちなみに前述の日本海軍の巡洋艦、矢矧は当時日本では最新鋭の軍艦だったそうですが、燃料は石炭でした。従って機関室は熱い中で石炭を人力で供給するという過酷な環境。それに対してイギリス海軍は燃料を「石油」に転換し終わっており、性能は日本の軍艦と比較して格段に上。この時点で日本は英米から大きく引き離されていたのです。

ちなみに1900年当時のニューヨーク5番街は馬車しかありませんでいたが、これが1913年になると自動車しか写真に写っていません。これも「石炭」から「石油」に産業構造がゲーム・チェンジした結果です。1900年の馬車しか写っていないニューヨーク市街の写真と、そのわずか13年後の自動車しか写っていない写真の対比は、テクノロジーの進化が短期間のうちに起きるという教訓でよく使用されていますが、まさにそれはこの頃の時代の話なのです。いずれにせよ、この時には気が付くと世界中の石油はアメリカのスタンダード・オイル(現在のエクソン・モービル)とイギリスのロイヤル・ダッチ・シェル等が全てを押さえており、日本は石油の確保と利活用という点で大きく遅れをとってしまいました。これがその後の、日本が太平洋戦争に突き進んでしまった遠因となってしまったわけです。

 

あらゆる会社で、デジタル・シフトが必須になる3つの理由

そういった意味で、いままさに目の前で起きているゲーム・チェンジとは、デジタルシフトであり、近年ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)と言われていてる現象です。

いま、デジタル・シフトが必須である理由は次の3つです。

1)コロナ対策:リアル訪問ができない、あるいは、するべきではない

2)不況対策:詳しくは後述しますが、不況対策の要である高収益化を、最も効率的に行えるのがデジタル化なので

3)時代背景:大企業はどんどんDX化しており、これについてこられない中小企業はどんどんふるい落とされていく

1つ確実に言えることは、コロナは前述の通りいつかは収束し、そして間違いなく大不況がきます。

不況対策の鉄則は「高収益化」であり利益率のアップです。なぜなら不況になると売上が下がります。売上が下がった時に利益率が低いと簡単に赤字になってしまいます。

また同時に不況対策の鉄則は単価アップでもあります。なぜなら不況になると商談の数が減るからです。「不況で単価を上げるなんてできないだろ」と思われるかもしれませんが、こちらからみると高単価でも、お客の側からみると低単価な商品やサービスというのは数多くあります。そうした新しいマーケットに自社の市場を広げることによって、大きな売上ダウンを防ぐ、ということです。

そして、こうした施策を最も効果的に進めることができるのがデジタル化なのです。

 

 

デジタル・シフトに取組む具体例:神戸の生産財商社 吉岡興業 様の取組み

では、そうした事例を具体的にご紹介したいと思います。

例えば神戸市に本社を置く生産財商社、吉岡興業 様の場合は、下記ホームページをみたらわかるとおり、コーポレートサイトのトップに「オンライン商談対応」である旨を明記しています。

https://www.yoshioka-kogyo.co.jp/

同社の場合は「Zoom」と「ベルフェイス」両方に対応しています。「ベルフェイス」とは国産のリモート商談システムであり、Zoomよりも簡便なシステムです。

具体的に、ベルフェイスの場合はまずお客様に電話をかけます。電話をかけた上で、「お手元にパソコンはありますか?」「インターネットを立ち上げて、ベルフェイス と入力して検索していただけませんか?」と、お客様にベルフェイスのホームページを確認してもらいます。すると、お客様のパソコン画面に数桁の番号が表示されるので、その番号を聞いてこちらのパソコンの管理画面に入力をします。そうすると、お客様のパソコン画面と、こちらのパソコン画面が共有される状態となり、電話で話ながらパソコン画面をつかってお客様と商談が行えるシステムなのです。

ベルフェイスの優れている点は、お客様のパソコンがカメラ・マイク対応でなくても商談が行える、ということです。

 

さらに同社の本業は、あくまでも工作機械・切削工具といった機械工具の商社ですが、同社のホームページの下の方をみると、多数のソリューションサイトがあることがわかります。

・中古機械サイト
・工場工事サイト
・部品加工サイト
・塗床工事サイト
・配管工事サイト
・メンテナンスサイト

各サイトをみると、同社がいかにこれら各分野に対して専門的知見を有しているかがよくわかります。

例えばお客様の立場で、こうしたソリューションサイトのリンクが、メールマガジン等で送られてきたら、お客様はどう思うでしょうか?

私なら、「あっ、機械工具の商社とばかり思っていたけど、工事もやってくれるんだ!」「中古機械も扱っているんだ!」

と、おのずと吉岡興業様のマーケットが広がる展開になることは間違いありません。

こうした、お客様の視点でビジネスモデルを考えることをCX(カスタマー エクスペリエンス:顧客体験)とよび、デジタルを活用してCXを実現することをDX(デジタル トランスフォーメーション)といいます。

ちなみに、同社の工事サイトで訴求されている工事の大半は、営繕工事といわれる半日~数日で終わるレベルの工事ばかりです。

通常、大手エンドユーザーには、構内外注といわれる出入りの工事業者がいます。ところが、こうした工事業者は短くても数週間、できれば数ヶ月スパンの期間のまとまった工事でなければ、自社が抱える職人の稼働を確保することができず、こうした数日でおわる営繕工事というのは敬遠しがちです。その結果、得てして高い見積りを出すケースが多いのです。

従って、例えば機械工具商社が営繕工事に取組む、というのは、こちらの目からみると高単価ですが、お客様の目からみると実は低単価なのです。

この様に、自社の主要マーケットのお隣の、自社の扱い商品よりも高単価なマーケットのはざまを攻める戦略のことを、「狭間(はざま)戦略」といいます。

そして「狭間戦略」を一目でお客様にお伝えする手段がデジタルです。

 

遠隔地から年間1億円を超える新規商談を受注!

また、吉岡興業様の6つのソリューションサイトは、既存顧客だけでなく、インターネットを通じて新規顧客も開拓しています。

同社の場合はリモート商談システムを導入していますので、遠隔地からの引合いに対しても対応が可能です。同社の場合、こうした一連のソリューションサイトを通じて、昨年1年間だけで年間1億円を超える新規受注に成功しています。

特に今、大手企業の管理部門の多くが自宅勤務(リモートワーク)になっているので、インターネットで情報収集を行っているケースが非常に増えています。

実際、インターネットで検索されているキーワードの検索数は簡単に調べることができますが、例えば「板金加工 依頼」というキーワードは昨年3月に比較して今年3月は何と検索数が7倍。「フレーム 製作」というキーワードも2倍です。

また東証一部上場企業で、CASEなど自動車産業に関する情報提供を行うマークラインズ社によると、同社のポータルサイトもコロナ・ショックの3月以降はアクセス数が1.4~1.5倍に増加しているといいます。

実際、在宅ワークとまではいかないまでも、今、社長さんも含めて会社に電話をかけるとキーマンはまず在社しています。なぜなら時節柄、多くのキーマンが出張や移動を控えているからです。出張や移動を控えた結果、多くの人は在社か在宅。従って連絡がつきやすい上に、もっといえばインターネットでの情報収集の時間もおのずと増えることになります。

この傾向が長期化することは間違いないと私は思います。

 

 

 

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