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セールステック導入による、物が売れる仕組みとその秘密とは?

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コロナ対策で注目を集める最新テクノロジー「セールステック(Sales Tech)」とは何か?

今年2月に入ってから、急速にインターネット内で検索数が増えたキーワードがあります。

それは「セールステック」です。セールステックとは、「セールス(営業)」と「テクノロジー(主にデジタル技術)」を掛け合わせた造語であり、似た様な言葉に「フィンテック」や「エドテック」あるいは「アグリテック」といったものがあります。

すなわちセールステックとは、既存の営業に最新のIT技術を組み合わせた新しいテクノロジーであり、その目的は営業生産性を飛躍的に高めることにあります。

このセールステックという言葉自体は1年ほど前から提唱される様になり、インターネット内でもずっと一定の検索数で推移してきましたが、昨年12月くらいから「セールステック」の検索が増え始め、今年1月には昨年秋の2倍程度に増加。さらに今年2月には4倍程度も検索数が増えており、「セールステック」は急速に注目を集めるキーワードとなりました。

その背景には、間違いなく新型コロナウイルスの影響があるものと思われます。

 

そもそもその営業訪問は本当に必要なのか?

セールステックは主に次の4つのデジタルツールから構成されます。

①遠隔商談システム
②MA(マーケティング・オートメーション)
③SFA(セールス・フォース・オートメーション)
④CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)

特に今、注目を集めているのが ①遠隔商談システム です。なぜなら新型コロナウイルスの影響で、「不要不急の訪問はやめてください」というお客様の声が増えてきているからです。今までは遠隔商談システムを使うとなると、お客様から「なんだ、ウチに足を運ばないのか!」と言われかねない雰囲気があったことは事実です。訪問せずにリモート商談だなんて、なんとなく手抜き感があると、ベテラン営業ほどそうした意識が強かったのではないでしょうか。

しかしそれもコロナで全てが変わりました。今や大企業の大半はリモート勤務を推奨しており、自宅からWeb会議を介して仕事を行うのが完全に当たり前になりました。

今は、「お伺いしてもよいのですが、それよりも遠隔商談システムの方がよろしいですよね?」と投げかけることが容易になっているのです。

もっというと、この流れはコロナの一件が収束してからも変わらないことでしょう。なぜなら訪問して商談を行うのも、遠隔商談システムで商談を行うのも、実は何ら変わりがないことに誰もが気が付くからです。そう考えると、遠隔商談システムを始めとして、一連のセールステックを使いこなせるかどうかという問題は、間違いなくコロナの一件が収束後には死活問題になるでしょう。

 

なぜセールステックを使いこなせるか否かが死活問題になるのか?

セールステックを導入すると、営業の生産性が飛躍的に高まります。

例えば遠隔商談システムは、客先に訪問することなく商談を行うことが可能になります。

またマーケティング・オートメーション(以降MA)を導入することにより、膨大な見込み客リストの中から、自社の商品あるいはサービスに興味関心を持っていると思われる顧客を特定することが可能になります。一般に、自社が保有する見込み客リストのうち、実際の商談に至る可能性のある有望先は1~2%程度しかない、と言われています。言い換えれば、この1~2%を特定するために人力で営業活動を行う、というのは非効率極まりない活動、ということになります。

セールステックを活用して、デジタルがやるべきところ、人がやるべきところをきちんと分業することが、会社の生産性を高める上で最も重要なポイントになるわけです。

そして遠隔商談システム1つをとっても、導入してスグに使いこなせるものでもありません。最初は「相手の声が聞こえない」「相手の顔が映らない」「画面の共有ができない」など、デジタルリテラシーが低い方にとっては、遠隔商談システムは苦痛以外の何物でもないかもしれません。しかし大企業の管理職クラスになると、今やWeb会議システムを使いこなすのは必須のスキルになっており、自分が話をしない時にはミュート(消音処理)を行うなど、いまやWeb会議の作法とも言えるマナーも明確になりつつあります。

顧客のインフラが遠隔会議システムになっているのに、その顧客を相手にする営業マンが遠隔商談システムすら満足に使いこなせないとなると、ハッキリ言って致命的なマイナスになることは間違いありません。従ってセールステックをきちんと使いこなせるかどうかは、これから半年も経つと確実に死活問題になるのです。

 

セールステックを導入した結果、人は増やさず売上は1.5倍に増えたF社の事例

セールステックは顧客のニーズを把握するだけでなく、こちらの取扱い商品あるいは訴求したい商品・サービスをより正確に顧客に届けることができます。

例えば昨年2019年6月の経営セミナーでご講演いただいた大阪府岸和田市に本社を置く株式会社藤浪様の場合、社員数はそのままで売上1.5倍という成果を上げることができました。同社の生産性が上がった理由は極めてシンプルです。それは従来よりも高単価な商品が売れる様になったからです。

生産性を上げる鉄則は高単価商品を売ることですが、従来よりも単価の高い商品を売るためには、従来には無い「信用・信頼」を補完する何かが必要です。そしてその「信用・信頼」を補完する強力なツールこそがソリューションサイトと言われる、顧客価値を訴求するWebサイトのことです。

そして詳しくは今後の連載の中で述べていきますが、MA(マーケティング・オートメーション)を運用するためにはソリューションサイトが必ず必要になります。

そしてセールステックを導入している会社は、いくつものソリューションサイトを有しています。

 

何と40以上ものソリューションサイトを保有する、超高収益企業キーエンスの秘密

例えば超高収益企業として知られるキーエンスの場合、2011年の売上が1848億円なのに対し、2019年の売上は5871億円と、何と8年間で売上が3倍以上に伸びています。この理由は輸出の伸びなど様々な要因が考えられますが、同社の商品単価が上がったことも間違いなく貢献しているものと思われます。

具体的に、10年前のキーエンスといえば筆者のイメージでは主力商品は「センサー」「レーザーマーカー」あるいは「画像処理」です。「センサー」の平均単価は約20万円ほど。「レーザーマーカー」や「画像処理」で200~300万円といったところでしょうか。

しかし現在のキーエンスが力を入れているのは「画像測定器」と言われる分野で、このカテゴリーの商品単価は800~1000万円を超えてきます。

単純に、取扱い商品の平均単価が200~300万円から800~1000万円にアップすれば、顧客数が変わらなかったとしても売上は軽く2~3倍を超えます。

そして同社では、「測定器ナビ」「粗さ入門.COM」「ココが知りたい!形状測定」「測り隊.COM」など、測定関連のソリューションサイトを複数運営しています。この狙いは、見込み客である工場の品質管理担当者の立場に立つと、彼らは必ずしもキーエンスが測定器をつくっているということを知りません。ですから品質管理担当者に価値のある情報提供サイトを入り口にして、最終的に同社製の画像測定器に誘導するという動線を取っているのです。

同社ではこうしたソリューションサイトを何と40以上も運営しています。

 

コロナ騒ぎの中、なぜ某大手半導体装置メーカーのバイヤーは展示会場にやってきたのか?

この様に先進企業を中心にセールステックの導入が図られている背景には、顧客の購買行動の変化が挙げられます。

BtoB企業の購買担当者1400名への調査結果によると、営業担当者の訪問時には既に商談プロセスの約6割が既に終わっていることが判明しています。その理由は、購買担当者は営業担当者の訪問前に、その会社のWebサイトを閲覧しているからです。Webサイトを閲覧した上で、その会社の得意分野を見極め、相談する内容を決めているのです。

同じ傾向が展示会でもいえます。

一昔前、展示会出展のポイントは、ブースを大きく取り目立つ場所に出展し、いかに目を引く装飾を行うか、でした。

しかし今の時代、「展示会に来てから、どこを見るか決める」様な来場者はいません。今の時代の来場者は、来場前にネットで出展者の概要をチェックした上で、どこをどの様に回るか綿密に決めてから展示会場を訪れます。従って、展示会出展前のネットを通したPRの中身で、展示会の成果は99%決まるといって過言ではありません。展示会はスタートした段階で9割が決まっているのです。

実際、この2月の展示会で、私の関係先の部品加工を手掛けている会社にも、大手半導体製造装置メーカーのバイヤーが訪れました。この時は既にコロナ騒ぎの渦中で、大手企業の多くが展示会への来場を控える中、そのバイヤーは図面を片手にやってきました。その背景には5Gをめぐる技術開発が挙げられます。5Gになると、モバイル端末の部品点数が1.5~2倍に増えるといわれています。従って、半導体の露光技術1つをとっても従来よりもかなり微細な技術が求められるわけですが、現在EUVと呼ばれる超微細露光技術については、オランダのASMLという会社の独壇場になっています。当然のことながら日本の同分野のメーカーも追い付け追い越せで技術開発を行っているわけですが、こうした成長分野の会社はコロナがあろうがなかろうが技術課題を常に抱えており、新しいポテンシャルサプライヤーを探しています。ですからコロナ騒ぎのなかでも展示会場を訪れたわけです。

 

コロナ騒ぎの中でも確実に継続される設備投資計画とは?

もっとも、現在はさらにコロナの影響が深刻化しているため、展示会そのものの開催が見合されています。

その分、インターネットを使ったサプライヤー探しが盛んになっている様で、報道では不況が伝えられますが、部品加工業におけるネットからの引合いは減っておらず、むしろ増えている勢いです。
例えば前述の5G。実は今回のコロナ騒ぎで、あらためて5Gの必要性を感じる出来事がありました。
現在、船井総研は全てのセミナーをリアル開催からWebオンライン開催に切り替えています。当初はお客様の満足度が懸念されましたが、実際実施してみると「リアルセミナーと変わらない」「これなら今後もWebオンラインで構わない」といった声が多数でるなど、結果は大好評でした。

ただし、お客様へのWebオンライン配信は失敗が許されないため、情報システム部門から支給された専用PCで、専用LAN回線を利用して行っています。船井総研内のPCは基本、全て無線LANでつながっていますが、無線LANだと大容量の動画を送信する際、どうしても途中で切れるリスクや音声と動画がずれるリスクが生じます。

これが5Gが必要とされる理由です。5GになればLANケーブルでつながなければならない様な大容量通信も、問題なく無線に移行することができます。現在のデジタル革命の本質はAIにあります。AIの性能があがった理由はクラウドです。クラウドで無尽蔵にビッグデータを供給することができる様になった結果、AIの性能が飛躍的に向上したわけです。ところが前述の通り、実は大半のトラフィックは光ケーブル経由であり、これが5Gによって無線化されることで初めて、本当のデジタル革命が成立するわけです。従って5Gに関する技術開発や設備投資は必ず実行されます。

 

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これはかつての英国が、どんな犠牲を払っても世界中の海に海底ケーブルを敷設したのと同じ。かつてのソ連と米国が通信衛星をきそって打ち上げたのと同じで、今回の5Gもそれらの再来であると考えればよいでしょう。

さらにCASE。CASEとはコネクテッド・自動運転・シェアリング・EVといった次世代自動車技術の総称ですが、例えばソニーがEVを開発して世界中から注目を集めた通り、自動車メーカーだけでない他業界のプレーヤーが自動車業界に参入してくることが確実、ということでさらに自動車産業の裾野が広がる取組みであるといえます。
現在のコロナ騒ぎの影響で、今、まさに現在流通している車種をつくる工場などは稼働がSTOPしていますが、工場の稼働とCASEの開発計画は全く別物です。

例えば京都府長岡京市に本社をおく、部品加工業のモデル企業である株式会社木村製作所様が今年2月に立ち上げた新ソリューションサイトには、こうした5GやCASEがらみの引合いが多数集まっています。
同社では今年から本格的にスタートする5G、あるいはCASEがらみの需要に対応するため、本社工場の近くにナノ加工工場(研究所)を竣工し、新しいニーズに対応しています。

そして同社の一連の取組み、また5GやCASEマーケットの仕事をいかに取り込むのか、といったテーマで下記概要にてWebオンラインセミナーを開催します。

日時:4月27日(月)13時~16時30分(受付開始12時45分~)

↓↓↓本オンラインWebセミナーの詳細・お申し込みはこちら!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/058090

5G、CASEマーケットの需要は裾野が広く、いわゆる「凄い技術」を持っている会社だけが必ずしも有利ではありません。
実際、前述の展示会で大手半導体装置メーカーとの取引に至った某部品加工会社の場合は、最近スタートした外注主体による部品加工事業の成果です。「凄い技術」というのは得てしてニッチであり、実は市場規模がそれほど大きくないケースが大半です。

「凄い技術」よりも「顧客価値の訴求」がいかに大切か、このテーマについても本セミナーでは数多くの事例とともにお伝えしたいと思います。

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