SDGsというキーワードがあります。
これは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称で、元来は貧困撲滅のための発展途上国を主な対象とした国際社会の共通目標(MDGs)でした。
MDGsはビル・ゲイツやU2といった著名人も参加していたので、聞き覚えのある方も多いかと思います。
SDGsは発展途上国のみならず、先進国まで対象とした国際社会の共通目標で、気候変動や資源・エネルギー問題、文化継承やジェンダー問題、雇用など幅広い範囲に及びます。
17の目標と169個のテーマ、232の指標が設定され、2030年までに世界全体でより持続可能な世界・社会を作る、という合意がなされています。
いまなぜSDGsの話を取り上げたかと言うと、「なんとなくトレンドだから」ではなく、ここ1ヶ月で3回、それぞれ別の会社でこのキーワードがテーマとして会議の中で挙がったからです。
ひとつは商品
ひとつは企業姿勢(コーポレートサイトへ記載すべきか)
ひとつはSEO(検索エンジン上で自社ホームページを上位表示させるための取組)
の文脈の中ででした。
前提として、SDGsの17の目標を、長いですが以下に記載します。
目標 1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標 2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標 4 . すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標 5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標 6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標 7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標 8 . 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標 9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標 10. 各国内及び各国間の不平等を是正する
目標 11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標 12. 持続可能な生産消費形態を確保する
目標 13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標 14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標 15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標 16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標 17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
ざっと見て頂くと、「自分たちの普段の仕事とはだいぶ遠そうだな」という感想の方も多いかもしれません。
しかし欧米系企業、特にグローバル企業はここ数年で明確にSDGs重視の方向へ動いていますし、トヨタは今年SDGs対策専門の部署を新設するなど注力化が明白です。
そのような超大企業に限らず、上場企業のIR情報等を見れば、2〜3年前から「持続的」「持続可能な」といったキーワードが頻出するようになりました。
具体的に何か変わるのか?、というと例えばアップルやインテルはこのSDGsおよびCSRの観点から、強制労働と見なされる形態を取っているサプライヤーからは物資を調達する際は、対価を労働者に払うようサプライヤー側に要求しています。
実はこれは何も日本から遠く離れた国のことではなく、海外から日本へ働きに来た技能実習生も該当しているのです。
「技能実習生はお金を払って、日本での働き口を斡旋してもらっているケースがある。これは不当であり、強制労働に近い」とアップルは認識しているということです。
他にもここ数年ではユニクロやナイキの東南アジア・アフリカの外注先が問題視されてニュースになるなど、ここ10年でこういった話は大きく取り上げられることが増えてきました。
今後このような事例はグローバルで活動する日本企業以外でも増えてくると考えられます。
日本企業の性質と合う、合わない等の次元ではなく、世界的な潮流がSDGsに沿っているからです。
最も分かりやすい例は、冒頭に挙げたSEOです。
先日あるSEOコンサルティング会社の社長さまから教えて頂いたのですが、現在のGoogleのアルゴリズムは明らかにSDGsに関して優先的に表示するように変わっていると。
つまり自社のWEBサイト上にSDGsに関する内容が含まれていれば、サイト全体として検索結果の上位表示されやすくなっているとういうことです。
SDGsに取組んでいればGoogleに認められる、ということは裏を返せば取り組んでいなければWEBサイト・企業として評価が悪くなるということです。
もちろんSDGsは検索結果の上位だ、下位だ、という文脈で取り組むようなテーマではないわけですが、Googleが上記のように判断した結果、我々のビジネスやマーケティングにも影響が出てくるということは事実です。
また建築業界に関わる企業では、デザインのトレンドの中にSDGsは間違いなく含まれるようになっています。
使用する材料や工法が、環境や人体に悪影響がないか、適正な製造方法で調達されたものか、といった点は2010年以前よりも明白に重要視されています。
また採用においても、感度の高い学生などは企業を見る一つのチェックポイントに入れるようになると思います。
製造業に関わる我々は、上記目標を自社に関係のあるものとして捉える視点が必要です。
先に挙げた項目は壮大すぎるものも多いですが、職場のダイバーシティを推進する、女性の働きやすい職場環境を作る(キャリアアップを応援する)、地域社会の伝統工業を守る、地域の雇用拡大や平均年収向上に寄与する、といった視点で捉えると、それらはSDGsに含まれます。
地域の活性化という視点で捉えると、製造業こそSDGsを積極的に標榜すべきと個人的に思います。
一過性や当たりはずれのある観光業や街おこしに留まらず、具体的な仕事(世界の需要)をベースに成り立っている製造業企業だからこそ、ぜひ自社のSDGsの視点を考えてみて頂けるといいかと思います。